著者
牛田 貴子 藤巻 尚美 流石 ゆり子
出版者
山梨県立大学
雑誌
山梨県立大学看護学部紀要 (ISSN:18806783)
巻号頁・発行日
vol.9, pp.1-12, 2007-03-01
被引用文献数
1

本研究の目的は、終の棲家として指定介護老人福祉施設で暮らす後期高齢者が、日常的に表現する「お迎えを待つ」とは何かを探ることである。75才以上の高齢者で研究の同意が得られた13名に、面接を実施した。逐語録から死を示す言葉を中心にしたまとまり部分45カ所を選び出し、意味上の要約と関連により質的に分析した。これにより、「お迎えを待つという日常の心境」「お迎えを待つ心境に至る基盤」「家族に期待する」「自分を大切にする」「人を気遣う」「自尊心の喪失」「生活史の一部に位置づけなおす」7つの中グループを抽出し、施設で最期を迎える意思決定をした後期高齢者の「お迎えを待つ」というストーリーラインを描いた。現状をどのように意味づけて生活していくのかという点が、お迎えの待ち方に影響を及ぼすことが示唆された。
著者
小田切 陽一 内田 博之 市川 敏美 近藤 直司
出版者
山梨県立大学
雑誌
山梨県立大学看護学部紀要 (ISSN:18806783)
巻号頁・発行日
vol.12, pp.1-8, 2010

山梨県の自殺率と既存統計を用いた生態学的分析から自殺との関連が示唆される人口学的、社会学的要因の抽出をおこなった。その結果、人口世帯要因では、老年人口割合、単身高齢者割合、死別高齢者割合が正の相関、平均世帯人員が負の相関を示した。産業・経済要因では、管理的職業従事者割合、生活保護率と正の相関、課税対象所得と負の相関を認めた。医療・福祉要因では、腎不全死亡率、老人クラブ加入率と正の相関、精神作用物質による精神・行動の障害による受療率と負の相関を認めた。また神経症障害、ストレス関連障害および身体表現性障害の受療率と正の相関傾向、気分障害 (躁うつ病を含む)、その他の精神および行動の障害による受療率、精神保健福祉相談 (心の健康づくり相談) 件数と負の相関傾向を認めた。本研究の結果、山梨県の自殺率に関連する要因として、人口の高齢化や脆弱な経済基盤、精神障害に関わる相談や受療行動が低いことなどが示唆された。
著者
渡邊 裕子 小山 尚美 流石 ゆり子 河野 由乃 萩原 理恵子 森本 清 水口 哲
出版者
山梨県立大学
雑誌
山梨県立大学看護学部紀要 (ISSN:18806783)
巻号頁・発行日
vol.12, pp.9-18, 2010-03-01

「活力に満ちた地域づくりの指導者養成を目指す」が目的の高齢者のための生涯学習大学校に在学し,看護学生との交流事業に参加した24 名を対象に,若者イメージと事業に対する期待感について調査を実施した.対象の地域リーダー高齢者は「世間一般の今どきの20 歳代の若者」イメージとして,「話やすいが何を考えているかわからない」という傾向を持っていた.また「若者との交流」への期待度は95.8%と高く,分かり合いたい思いがある一方,自分から知恵を伝授するという意識を持って参加した人は少なかった.交流では,高齢者が老年期の意味を理解し,歳を重ねたからこそ備えている知恵を若い世代に伝授するという意識を持って参加できるような導入と,若者に対する理解し難い感情を払拭し,若者から求められているという実感を持って,自発的,積極的かつ自然に交流を求める姿勢が持てるような企画・調整が必要である.
著者
牛田 貴子 流石 ゆり子 亀山 直子 鶴田 ゆかり 秋山 小枝子 藤原 三千代 植松 春美 須田 久美 西山 かおる 飯島 文子
出版者
山梨県立大学
雑誌
山梨県立大学看護学部紀要 (ISSN:18806783)
巻号頁・発行日
vol.8, pp.9-15, 2006
被引用文献数
3

県内の介護療養型医療施設、介護老人保健施設、介護老人福祉施設で生括する高齢者の終末期における意思決定について、看護職の視点からその現状を明らかにする目的で、これら施設に勤務する看護職への郵送質問紙調査を実施した。その結果、以下が明らかになった。(1)回答者は全国の介護保険施設に勤務する看護職の属性と同様の傾向であった。(2)高齢者本人への終末期に関する希望確認を実施しているのは16.5%で、施設種類別に大差がなかった。(3)終末期の生活の場所の決定権は、高齢者本人が10.8%であった。(4)8割弱の看護職が意識的に話し合いに参加していたが、介護療養型医療施設では積極的に同席しない傾向にあった。これらから、高齢者の終末期における意思決定と権利擁護の判断や判断を支える科学的、倫理的な根拠に関して、介護保険施設の特殊性を考慮した継続教育が必要となることが示唆された。
著者
小山 尚美 流石 ゆり子 河野 由乃 村松 照美 郷 洋子 林正 健二 小野 興子 横山 貴美子 伊藤 健次 城戸 裕子 波木井 昇
出版者
山梨県立大学
雑誌
山梨県立大学看護学部紀要 (ISSN:18806783)
巻号頁・発行日
vol.11, pp.27-37, 2009-02-27
被引用文献数
1

過疎農山村地域の独居後期高齢者の現在・今後の生活への思いを明らかにすることを目的にA町の6名に半構成的面接を行った。【猿や猪が農作物を喰い荒らして困る】【欲を言えばもう少し交通の便を良くして欲しい】と山間部特有の問題【年々歳をとってこのまま元気でいられるかどうか先のことはわからず不安だ】【みんな歳をとり昔のようにいかなくなり悔しい】【災害や跡継ぎがないことが心配だ】等の加齢変化の実感と不安を抱えていた。これらに【みんなとの交流は楽しみだ】【みんなが支えてくれてるので安心して生活できる】と田舎ならではの良さが勝り【ここでの今の生活は幸せだ】【子供の所へ行くより住み慣れたここに最期までいたい】と自ら今の生活を選択し【今の生活を維持する為にいろんなことを心掛けている】と日々努力をしていた。鳥獣被害対策、交通サービスの充実、現存の住民支援ネットワークの活用、役割保持の支援の必要性が示唆された。