著者
牛田 貴子 流石 ゆり子 亀山 直子 鶴田 ゆかり 秋山 小枝子 藤原 三千代 植松 春美 須田 久美 西山 かおる 飯島 文子
出版者
山梨県立大学
雑誌
山梨県立大学看護学部紀要 (ISSN:18806783)
巻号頁・発行日
vol.8, pp.9-15, 2006
被引用文献数
3

県内の介護療養型医療施設、介護老人保健施設、介護老人福祉施設で生括する高齢者の終末期における意思決定について、看護職の視点からその現状を明らかにする目的で、これら施設に勤務する看護職への郵送質問紙調査を実施した。その結果、以下が明らかになった。(1)回答者は全国の介護保険施設に勤務する看護職の属性と同様の傾向であった。(2)高齢者本人への終末期に関する希望確認を実施しているのは16.5%で、施設種類別に大差がなかった。(3)終末期の生活の場所の決定権は、高齢者本人が10.8%であった。(4)8割弱の看護職が意識的に話し合いに参加していたが、介護療養型医療施設では積極的に同席しない傾向にあった。これらから、高齢者の終末期における意思決定と権利擁護の判断や判断を支える科学的、倫理的な根拠に関して、介護保険施設の特殊性を考慮した継続教育が必要となることが示唆された。
著者
須田 久美子 宮村 正光 田上 淳 中村 雅彦
出版者
地域安全学会
雑誌
地域安全学会論文報告集
巻号頁・発行日
no.4, pp.89-97, 1994-08

都市における地震被害の低減に関する研究の一環として、北海道南西沖地震がその被災地に及ぼした社会経済的影響を把握するために、復旧プロセスに着目した新聞情報の整理及び地震発生3カ月後の現地調査を実施した。現地調査は、津波及び火災被害の著しかった奥尻町と、液状化被害のあった長万部町を中心に行った。調査の結果を連関図にまとめ、主として地震による間接的な影響(被害)や復旧プロセスの経時的な推移を整理した。また、地震被害の社会的要因を分析し、被害を抑制した要因と拡大した要因に分類し考察した。その結果、地震被害の間接的な影響として、「生活基盤の喪失に伴う産業の衰退及び人口の流失」「長い避難生活や被災による精神的なダメージ」「仮設住宅のスペース不足や設置場所などへの不満」「見舞金分配に絡む各住戸の被災度評価の問題」「復旧速度に与える行政手続きの影響」などが問題になっていることが明らかになった。こうした問題点を踏まえて、今回の調査から得た教訓をまとめると次のとおりである。(a)被災度診断者、特殊技能者などの養成及び派遣システムの確立 被害を受けた家屋の被災度を公平に判断するオーソライズされた被災度診断者の派遣が望まれている。特に、二次災害の防止などの観点から現在一部の自治体で実施されてはいるものの、全国的な規模での展開が早急に必要である。人材の育成については、建築学会などの機関を中心に組織的な体制を整えることも必要と考えられる。また、土砂崩れ現場などでの重機操作技術者や救援物資の仕分け作業の専門家などを被災時に速やかに派遣できるシステムの確立が望まれる。(b)精神コンサルタントの養成 災害の影響が長期化すると、物資面のみでなく、被災住民に対する精神面の援助が重要である。日本では、精神コンサルタントのシステムが確立しておらず、まずは、被災者の心の相談にのれる専門家を数多く養成することが急務である。(c)復旧作業を遅滞させないための法制度の見直し 場所によっては建物の被害申請手続きや査定が終了しないと復旧作業にとりかかれない場合があり、重要度・緊急度に応じた手続きの簡素化と査定方法の見直しが望まれる。(d)伝達する情報を一元化する管理システムの確立 被災地では、地震直後から多くのマスコミ関係者が訪れ、役場の震災担当者はその対応に追われたようである。町村レベルの役場の人数では、生存者の救出・救援に追われる一方で、死傷者の人数や被害状況などに関する正確な情報を把握するのは非常に困難である。伝達する情報を一元化する管理システムが望まれる。情報収集の専門家である報道関係者が横の連携をとりつつ、震災担当者と情報を交換・管理できるシステムができれば、救援活動もよりスムーズに実施できるものと考えられる。