著者
玉田 春昭 中村 匡秀 門田 暁人 松本 健一
出版者
電子情報通信学会
巻号頁・発行日
2007-10-01

名前難読化とは,プログラム中の名前(識別子)を別の名前に付け替えることで,プログラムを理解しづらいものにするソフトウェア保護手法である.従来の名前難読化手法は,各名前を静的に別の文字列で置換するものであり,プログラム中に現れる任意のユーザ定義の名前を隠ぺいできる.しかしながら,従来手法を用いてシステム定義の名前(標準ライブラリやAPIの呼出し等)を難読化することは,プログラムの移植性を著しく低下させるため,現実的に不可能である.そこで本論文では,オブジェクト指向言語を対象に,システム定義の名前をも隠ぺい可能な新たな名前難読化手法を提案する.具体的には,プログラム中の名前使用部分をあらかじめ暗号化しておき,実行時に名前を復号して当該処理を実行する,動的名前解決の仕組みを導入する.提案手法では,オブジェクト指向言語のリフレクション機構を用いて,クラスの参照,メソッド呼出し,フィールドの参照・代入に現れる任意の名前を動的解決する方法を実現している.また,提案手法をJavaプログラム用に実装し評価実験を行った.ある実用プログラムへの適用では,4.11倍の性能劣化でプログラム中のすべてのクラス名,メソッド名,フィールド名(計10,580回出現)を難読化できることが分かった.
著者
中村 潤 玉田 春昭
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.61, no.2, pp.454-473, 2020-02-15

大量のプログラムからソフトウェアの盗用を発見するために,ソフトウェアバースマークが提案されている.バースマークは,プログラム中の特徴を抽出し比較を行い盗用を発見する技術である.従来のバースマークで想定している対象のプログラム数は数百から数千程度であり,それを超えて比較する場合,現実的な時間では比較できない場合もある.そこで本稿では,対象となるプログラムの大幅なスケールアップかつ,盗用検出に要する処理時間の短縮を目的とする.そのために,対象プログラムの比較の前に,精度は高くないが高速に比較できる手法を用いて,無関係なプログラムを除外することを考える.これを絞り込み段階として,従来の抽出段階,比較段階の間に導入する.提案手法に基づき,バースマーク絞り込みシステムMitubaを構築し,実験を行った.評価項目は所要時間,絞り込み率,誤検出,検出漏れ,精度,そして,保存性の6項目である.結果は,盗用か否かを判定するための閾値が0.2のとき,所要時間は従来の40%以下に抑えられ,80%以上のプログラムが無関係と判定された.残ったプログラムのうち,誤検出は90%程度と非常に高いものの,検出漏れは0%であり,精度も70%以上となっている.また保存性評価においても,一番強力な難読化が施された場合であっても80%以上のプログラムを見つけ出せ,良好な結果を示している.これらの結果をもとに最適な閾値を議論した結果,標準的には0.6程度の閾値が最適であるが,ユーザの問題設定によっては,閾値が0.2でも本手法は有効であることを示した.
著者
吉岡智哉 福田収真 玉田春昭
雑誌
平成24年度 情報処理学会関西支部 支部大会 講演論文集
巻号頁・発行日
vol.2012, 2012-09-14

人の短期記憶に基づいたプログラムの読みやすさ評価手法が提案されている。しかし、従来、一般的なプログラムに対して適用されていなかった。そこで、本稿では、一般的なプログラムに対して、本手法を適用し、プログラムの読みやすさの評価を行う。
著者
畑 秀明 玉田 春昭 角田 雅照
出版者
奈良先端科学技術大学院大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2014-04-01

本研究は,ソフトウェア開発者の様々な特性や行動原理を理解するを目的とし次の課題に取り組んだ.1)リスクに対する開発者の特性を明らかにするための行動経済学に基づくアンケート調査,2)オープンソースソフトウェアプロジェクトの開発履歴データに基づく開発者の特性分析,3)クローズドな開発環境のデータ分析による開発者の特性分析,ゲーム理論に基づく開発者の行動原理や動向の分析.
著者
井垣 宏 中村 匡秀 玉田 春昭 松本 健一
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.46, no.2, pp.314-326, 2005-02-15
参考文献数
26
被引用文献数
11

ホームネットワークに接続された家電機器を連携制御しユーザの快適性・利便性を高める,家電機器連携サービスの一実現手法を提案する.既存の機器連携システムでは,ホームサーバが家電機器を中央集権的に制御する方式が一般的である.しかしながら,家電機器の多様化・高性能化により,ホームサーバへの負荷集中や信頼性・相互接続性の低下が問題となる.そこで我々は,サービス指向アーキテクチャ(SOA)に基づいた新たな連携サービス実現方式を提案する.提案手法では,各機器が自己の機能をサービスとしてネットワークに公開し,他の機器が公開するサービスを互いに実行することで連携を行う.これにより,各機器はサービスを介して疎結合され,ホームサーバも不要となる.したがって,より柔軟で障害や負荷に強い連携サービスの実現が可能となる.本稿では,SOAに基づいて連携サービスを設計・実装するための枠組みを示し,Webサービスを用いたプロトタイプ開発を行う.また,連携サービスの評価尺度として,信頼性,負荷,結合度を定義し,従来システムと提案システムの定量的な比較評価を行う.This paper presents a method to implement the integrated services of networked home electric appliances, which provide more convenient and comfortable living for home users. The conventional methods generally employ a home server to achieve the integrated services. The server controls all the networked appliances in a centralized manner. However, as the number of sophisticated appliances increases, the centralized server suffers from the concentration of load, as well as a decline in the reliability and interoperability. To cope with this problem, we adopt the service-oriented architecture (SOA) for the implementation of the integrated services. In the proposed framework, each appliance exports own features as a service. The appliances autonomously execute the exported services one another to achieve the integrated services. Thus, the appliances are loosely coupled via the exported services, without the centralized home server. This enables more flexible, balanced and reliable integrated services. In this paper, we present a framework to design and implement the integrated services based on the SOA, and illustrate a prototype system developed with Web services. We also define three kinds of metrics (i.e., reliability, workload, and coupling) and conduct a comparative evaluation between the proposed and the previous systems.
著者
濱田 美奈子 玉田 春昭 中道 上 武村 泰宏 大平 雅雄 バーカー マイケル
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. ET, 教育工学 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.105, no.298, pp.29-34, 2005-09-10

プログラミング実習において, 教授者は限られた実習期間内で教育効果を上げるために学習者の自発性を高める必要がある.そのため, 教授者は学習者の自発性の高さを実習期間中に把握し, その後の実習に効果的に反映させることが求められる.著者らは自発性の一因として感情に着目し, 実習時に学習者が抱く感情の強さから自発性を測定することができるか調査した.その結果, 4つの感情の強さを測定することで, 学習者の自発性の有無の可能性を示すことができた.
著者
玉田 春昭 神崎 雄一郎 中村 匡秀 門田 暁人 松本 健一
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. ISEC, 情報セキュリティ (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.103, no.195, pp.127-133, 2003-07-10
被引用文献数
2

本論文では盗用の疑いのあるJavaプログラムの発見を容易にすることを目的として,Javaクラスファイルからプログラム指紋を抽出する方法を提案する.提案方法はプログラム中の特徴的な箇所である初期値代入部分,メソッド呼び出し部分などを抽出し,指紋として用いる.このプログラム指紋を用いることにより,Javaクラスファイルを互いに区別することが可能となる.検証実験において,J2SDK SE 1.4.1_02のクラスライブラリに適用した結果,提案手法により99.94%のクラスを互いに区別できることを確認した.