15 0 0 0 OA 美の認知

著者
川畑 秀明
出版者
認知神経科学会
雑誌
認知神経科学 (ISSN:13444298)
巻号頁・発行日
vol.13, no.1, pp.84-88, 2011 (Released:2017-04-12)
被引用文献数
1

人は何に、どのように美を感じるのであろうか。芸術や美をめぐる問題は自然科学 からのアプローチが極めて稀であったが、近年の機能脳画像の手法の進歩はそれを可能にし た。この神経美学は、人文科学の問題を自然科学の手法を用いて明らかにしようとするた め、その問題の所在が自然科学者には分かりにくい点も多い。本稿では、哲学から心理学、 脳神経科学に至る美の認知研究の課題を整理した上で、美の本質、基準、過程という3 つの 問題に対するアプローチの例を紹介しながら、美の認知研究の枠組みを論じる。
著者
大神 勝也 中才 恵太朗 畑 秀明 松本 健一
出版者
日本ソフトウェア科学会
雑誌
コンピュータ ソフトウェア (ISSN:02896540)
巻号頁・発行日
vol.36, no.2, pp.2_93-2_105, 2019-04-26 (Released:2019-05-24)

アプリケーションのパフォーマンス改善において,実行時間を解析するプロファイラは有用と思われる.しかし,既存のプロファイラは特定の実行シナリオのもとプロファイリング時間を事前に設定する必要があり,実行シナリオなしでシステムのボトルネックを見つけることは難しい.また,各メソッドごとの実行時間を表示するインタフェースはソフトウェアの階層構造上における実行モジュールの位置などを把握することが難しい.これらの課題に対処するため,リアルタイムでパフォーマンス分析可能なソフトウェア都市可視化ツールHeijoを提案する.提案するプロファイラでは,アプリケーションの実行は3次元のソフトウェア都市として可視化され,アプリケーションのソフトウェア構造と実行のパフォーマンスが表現される.提案するプロファイラを使用して実際のJavaアプリケーションおよびAndroidアプリケーションのプロファイリングを行い,提案するプロファイラの有用性と実用性を確認した.
著者
中村 航洋 川畑 秀明
出版者
日本生理心理学会
雑誌
生理心理学と精神生理学 (ISSN:02892405)
巻号頁・発行日
pp.1602ci, (Released:2017-07-08)
参考文献数
76
被引用文献数
1

脳機能画像技術の発展に伴い,人が主観的に経験する美がどのような脳神経過程によって生み出されているかを研究する神経美学が近年注目を集めている。これまでの脳機能画像法による計測から,視覚芸術や人間の身体に対して主観的に美が経験されている際には,情動的処理システム,認知的処理システム,感覚運動的処理システムの少なくとも3つの機能的に独立した神経システムが駆動することが示されてきた。情動的処理システムは美の知覚に伴う快情動の経験において中核的役割を果たし,脳の報酬系を構成する眼窩前頭皮質や腹側線条体の神経活動は美的評価の程度と相関する。また,認知的処理システムは美的印象評価の決定に必要とされる情報の統合を担い,背外側前頭前野の関与が指摘されてきている。さらに,具象画や顔,身体像などの知覚処理を担う感覚運動的処理システムは,対象に特定的な知覚処理のみならず,対象の視覚美も表現していることが明らかになってきた。近年では,このような美的経験の神経基盤を計測するのみならず,経頭蓋磁気刺激や経頭蓋直流電気刺激などの脳刺激法を導入した研究も行われ,美的経験はその背後にある神経活動状態を脳刺激によって修飾することで操作されることが明らかになってきた。こうした脳機能画像法と脳刺激法による神経美学的研究から,美は報酬価値表象,意思決定,感覚運動に関わる神経システムの複雑な相互作用によって生み出されていることが示唆される。
著者
畑 秀明 水野 修 菊野 亨
出版者
日本ソフトウェア科学会
雑誌
コンピュータ ソフトウェア (ISSN:02896540)
巻号頁・発行日
vol.29, no.1, pp.1_106-1_117, 2012-01-26 (Released:2012-02-26)

近年,ソフトウェアリポジトリのデータマイニングを利用した不具合予測の研究が活発に行われている.不具合予測に関連してどのようなメトリクスが研究されているかを明らかにするため,本稿では系統的レビューを行った.2つの論文誌と5つの国際会議において,2000年から2010年に発表された文献のうち63編を調査した.研究されたメトリクスを分析するため,測定対象と測定に必要な履歴情報に基づき8つの領域に分類した.レビューの結果,主に2005年以降コードやプロセスの履歴に基づくメトリクスが研究されるようになっており,また2008年以降には新たに開発組織や地理的位置関係に関連したメトリクスが提案されていることが明らかになった.
著者
尾上 紗野 畑 秀明 松本 健一
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.56, no.2, pp.715-719, 2015-02-15

オープンソースソフトウェア(以下,OSS)開発には多くの開発者が携わっており,異なる特徴を持つ開発者が存在すると考えられる.開発者の特徴を明らかにすることで,OSSプロジェクトの成功に必要な開発者を明らかにできるなどのソフトウェア工学における新しい観点の発見が期待される.本稿ではGitHubで活発なOSSプロジェクトであるhomebrewとnodeに参加する開発者を活動履歴からクラスタリングし,その結果から開発者を分類した.クラスタリングで得られた樹形図を分析した結果,活発なOSSプロジェクトには迅速・議論型,迅速・総合型,悠然・総合型などの異なったタイプの開発者がいることが分かった.
著者
川畑 秀明
出版者
認知神経科学会
雑誌
認知神経科学 (ISSN:13444298)
巻号頁・発行日
vol.8, no.3, pp.184-189, 2006 (Released:2011-07-05)
参考文献数
22
被引用文献数
2

【要旨】我々は、絵画を見るときに様々な印象評価を行う。特に、芸術における美しさの問題は、哲学史上、重要な問題であり、その脳メカニズムが明らかになることは哲学や美学と脳科学とをつなげる知見となる。本論文では、筆者らの研究において、美しさの脳内基盤として眼窩前頭葉の活動を見出し、また美しさの対極にある醜さが左感覚運動野の活動を引き起こすことを示した研究を紹介するとともに、絵画を含めた画像認知における印象評価研究について紹介する。特に美的判断は、顔に魅力を感じることとの一貫性のみならず経済的判断などの脳メカニズムとも重なり合い、その報酬系と呼ばれる神経システムに位置づけられることが明らかになっている。同時に、違和感という絵画認知における印象評価に関する脳内基盤についても紹介する。
著者
中才 恵太朗 尾上 紗野 畑 秀明 松本 健一
雑誌
研究報告ソフトウェア工学(SE) (ISSN:21888825)
巻号頁・発行日
vol.2016-SE-194, no.5, pp.1-6, 2016-11-10

オープンソースソフトウェア (OSS) への一般的な貢献方法として開発活動 (パッチ投稿,バグ報告など) があるが,運営団体への寄付も重要な貢献方法である.OSS の開発プロジェクトによっては,寄付を促進させるため特典を用意するなど,運営資金の収集に積極的である.本研究は,効果的な寄付の収集方法を明らかにするため,著名な OSS プロジェクトである Eclipse を対象として調査を行った.寄付者のリストとリリース状況を分析した結果,(1) 特典が寄付への動機づけとなっていること,(2) 全体的な寄付者のうち開発者の割合は少ないが,開発者の寄付額は開発者でないものより大きかったこと (3) リリース日には寄付が増えるが,バグ数が多いと寄付が落ち込むようにみえた.
著者
中村 航洋 川畑 秀明
出版者
日本生理心理学会
雑誌
生理心理学と精神生理学 (ISSN:02892405)
巻号頁・発行日
vol.34, no.1, pp.9-26, 2016-04-30 (Released:2017-12-28)
参考文献数
76
被引用文献数
1

脳機能画像技術の発展に伴い,人が主観的に経験する美がどのような脳神経過程によって生み出されているかを研究する神経美学が近年注目を集めている。これまでの脳機能画像法による計測から,視覚芸術や人間の身体に対して主観的に美が経験されている際には,情動的処理システム,認知的処理システム,感覚運動的処理システムの少なくとも3つの機能的に独立した神経システムが駆動することが示されてきた。情動的処理システムは美の知覚に伴う快情動の経験において中核的役割を果たし,脳の報酬系を構成する眼窩前頭皮質や腹側線条体の神経活動は美的評価の程度と相関する。また,認知的処理システムは美的印象評価の決定に必要とされる情報の統合を担い,背外側前頭前野の関与が指摘されてきている。さらに,具象画や顔,身体像などの知覚処理を担う感覚運動的処理システムは,対象に特定的な知覚処理のみならず,対象の視覚美も表現していることが明らかになってきた。近年では,このような美的経験の神経基盤を計測するのみならず,経頭蓋磁気刺激や経頭蓋直流電気刺激などの脳刺激法を導入した研究も行われ,美的経験はその背後にある神経活動状態を脳刺激によって修飾することで操作されることが明らかになってきた。こうした脳機能画像法と脳刺激法による神経美学的研究から,美は報酬価値表象,意思決定,感覚運動に関わる神経システムの複雑な相互作用によって生み出されていることが示唆される。
著者
中村 航洋 新井 志帆子 川畑 秀明
出版者
日本認知心理学会
雑誌
日本認知心理学会発表論文集 日本認知心理学会第13回大会
巻号頁・発行日
pp.144, 2015 (Released:2015-10-21)

顔魅力評価は急速かつ自動的に行われることが知られている。しかし,顔魅力評価が視覚的意識を伴わない無自覚的情報処理レベルで生じている可能性を直接的に検討したものはこれまでにほとんどない。本研究では,一時的に視覚刺激の意識的知覚経験を両眼間で抑制する連続フラッシュ抑制を用いて,閾下刺激提示時の無自覚的顔魅力評価特性と顔魅力が両眼間抑制に及ぼす影響について検討した。実験では,参加者の優位眼に連続フラッシュ刺激を提示する間,非優位眼に顔刺激を提示し,参加者は顔の意識的知覚が生じていた時間を報告した。実験の結果,両眼間抑制は魅力顔よりも非魅力顔に対して長く持続し,顔の意識的知覚経験が持続していた時間は,非魅力顔よりも魅力顔に対して長かった。よって,顔魅力評価は顔の意識的知覚経験が生じる前段階の無自覚的情報処理レベルで行われ,魅力顔に対する注意捕捉は,顔の意識的知覚の持続を促進することが示唆された。
著者
尾上 紗野 畑 秀明 松本 健一
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.56, no.2, pp.715-719, 2015-02-15

オープンソースソフトウェア(以下,OSS)開発には多くの開発者が携わっており,異なる特徴を持つ開発者が存在すると考えられる.開発者の特徴を明らかにすることで,OSSプロジェクトの成功に必要な開発者を明らかにできるなどのソフトウェア工学における新しい観点の発見が期待される.本稿ではGitHubで活発なOSSプロジェクトであるhomebrewとnodeに参加する開発者を活動履歴からクラスタリングし,その結果から開発者を分類した.クラスタリングで得られた樹形図を分析した結果,活発なOSSプロジェクトには迅速・議論型,迅速・総合型,悠然・総合型などの異なったタイプの開発者がいることが分かった.In open source software projects, there should be different types of developers. Clarifying the characteristics of developers may enable us to manage projects successfully. In this paper we studied developers in active projects in GitHub, homebrew and node. Based on the analysis of development activities in GitHub, we classified developers and found that there are different types of developers in active projects like fast-commenter, fast-generalist, and slow-generalist.
著者
中村 航洋 川畑 秀明
出版者
日本認知心理学会
雑誌
日本認知心理学会発表論文集 日本認知心理学会第12回大会
巻号頁・発行日
pp.45, 2014 (Released:2014-10-05)

近年の神経美学的研究は,絵画の美的印象評価には眼窩前頭皮質内側部の脳機能が密接に関連していること明らかにしてきた。本研究では,経頭蓋直流電気刺激(tDCS)を用いて,眼窩前頭皮質の神経活動を一時的に変容させることによって,抽象絵画の美的印象評価における脳の因果的役割について検討した。眼窩前頭皮質に陰極刺激を行い,一時的に脳神経活動を抑制すると(陰極刺激群),絵画に対する美しさの印象は低減する一方で,絵画の醜さの印象は変化しないことが明らかになった。さらに,電気刺激を行わない統制群においては,絵画の美しさは醜さよりも早く判定されるという美的判断の優位性が認められたが,陰極刺激群においては,脳電気刺激後にこの優位性が認められなくなった。本研究の結果から,眼窩前頭皮質の脳神経活動が美的印象評価の神経生理学的基盤であり,自動的な美の認識を可能にしていることが示唆される。
著者
畑 秀明 玉田 春昭 角田 雅照
出版者
奈良先端科学技術大学院大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2014-04-01

本研究は,ソフトウェア開発者の様々な特性や行動原理を理解するを目的とし次の課題に取り組んだ.1)リスクに対する開発者の特性を明らかにするための行動経済学に基づくアンケート調査,2)オープンソースソフトウェアプロジェクトの開発履歴データに基づく開発者の特性分析,3)クローズドな開発環境のデータ分析による開発者の特性分析,ゲーム理論に基づく開発者の行動原理や動向の分析.
著者
川畑 秀明 関口 達彦
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告コンピュータビジョンとイメージメディア(CVIM) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2008, no.82, pp.37-42, 2008-08-29

視線はコミュニケーションにおいて他者の心を理解する上で重要な役割を果たしている。これまで,他者の視線方向が示す位置方向へ自動的 (反射的) な注意シフトを起こすことが心理学的に知られており,視線が向いた方向に提示されたターゲットに対して反応が促進される。本研究では,線画顔刺激において刺激提示時間を変数に,視線の意識的気づきに求められる時間的閾値を測定し,線画顔の瞳の位置を横線に置き換えた刺激,目の位置を矢印に置き換えた刺激の測定とともに比較・検討した (実験 1) 。その結果,顔刺激<矢印刺激<横線刺激の順に位置方向検出に必要な時間は長くなることが示された。次に,線画顔刺激のみを用いて,顔刺激の刺激提示時間を変数に顔刺激の後に提示されるターゲットの検出について,提示時間が閾上/閾下である場合とで検討した (実験 2) 。その結果,視線が意識的に気づく条件でも,気づかない提示条件でも,ターゲットに対する自動的シフトは起こらないが,むしろターゲットが視線手がかりに対して無効な場所に提示される場合において,抑制的な働きを持つことが明らかになった。Facial gaze seems to be very important for understanding others' mind in human communication. Automatic or reflexive attentional shift in response to another individual's gaze direction has been reported. In this study, we examined temporal thresholds to be seen whether direction cue in line drawing stimuli shows right or left side, in face gaze cue , horizontal line cue, and arrow cue, by presenting in different stimulus durations (Experiment 1). This showed the temporal limit in face gaze was much faster than one in line cue and arrow cue. Also, we tried to determine temporal point supraliminally or subliminally that the cue direction can be perceived with or without awareness. We next examined whether automatic attentional shift to a target can occur with or without awareness of the gaze direction, as a function of presentation duration of face gaze cue (Experiment 2). The reaction time needed to localize the target was consistently shorter for valid than invalid gaze cues, but the reaction times were almost constant both in subliminal and suplaliminal duration times.
著者
関口 達彦 川畑 秀明
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 D (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.J94-D, no.6, pp.1017-1024, 2011-06-01

脳活動の計測手法と解析手法の発展により,Brain-Machine Interfaceのように脳活動から情報を取り出す技術の研究が盛んである.本論文ではその手法を対象物に対する「選好」の推定に適用し,商品(腕時計)のデザインを脳活動から評価する可能性について検討を行った.機能的核磁気共鳴撮像法(fMRI)によって計測した全脳の活動信号データを対象として,提示された個々の腕時計の画像に対する被験者の選好(好き嫌い)を推定したところ,「好き/嫌い」の2択で74.4%,「好き/どちらでもない/嫌い」の3択で54.2%とチャンスレベルよりも統計的に優位に高い正解率で選好を推定できた.以上のことから,脳活動を用いて商品のデザインに対する選好の推定が可能であることが示された.この結果から,選好評価に応じた脳活動部位の解析の信頼性について検証する方法を提示するとともに,アンケート調査結果の信頼性を明らかにするものとして脳活動の多変量パターン解析が有効であることを議論する.
著者
行場 次朗 三浦 佳世 北岡 明佳 川畑 秀明
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2006

本研究では、R.L. Gregoryの「心のデザイン」モデルを援用し、人間情報処理の主要な3つのストリームに由来するクオリア、アウェアネス、知覚ルールを次元的にクロスさせて、体系的に視覚芸術の基底をなす共通項とその心理・脳科学的基盤を明らかにする世界に類がない試みを行った。その結果、心理・脳科学的には、視覚美の様相は多数存在し、それぞれが機能的に特殊化した脳内のモジュール活動に結びついており、本研究で示した分類法の妥当性とともに、美を感受するモジュールやストリームの多重性が明らかにされた。