著者
宮地 良樹 Mizzi Fabienne 三田 哲也 白 立岩 生駒 晃彦
出版者
日本皮膚科学会大阪地方会・日本皮膚科学会京滋地方会
雑誌
皮膚の科学 (ISSN:13471813)
巻号頁・発行日
vol.15, no.4, pp.294-307, 2016

目的:本治験は,アダパレン0.1%/過酸化ベンゾイル2.5%配合ゲルを日本人尋常性ざ瘡患者に12ヶ月間の長期投与をした場合における安全性と有効性を検討することを目的として施行された。<BR>方法:多施設共同,非盲検,非比較,長期投与第III相臨床試験で,治験薬は12ヶ月間,1日1回,計436例の被験者の顔面全体に塗布された。安全性は有害事象や局所刺激性評価などの指標を用いて評価した。有効性は皮疹数の12ヶ月目の減少率によって評価した。<BR>結果:計47件の治験薬と関連のある有害事象が43例(9.9%)の被験者において報告され,このうち9例が治験を中止した。治験薬と関連のある有害事象の発生頻度は第1期(投与開始後90日以内)が最も高かった。治験薬と関連のある有害事象の大半は皮膚関連で,そのうち皮膚刺激が最も多かった。皮膚刺激の発生頻度は第一期で5.5%であった。局所刺激の徴候・症状の程度は,ほとんどが軽症か中等症で,重症であった被験者は極少数であった。有効性に関しては,12ヶ月目のベースラインと比べた皮疹数の減少率は,総皮疹数,炎症性皮疹数,非炎症性皮疹数のいずれにおいても85%を超えていた。<BR>結論:本試験により,日本人尋常性ざ瘡患者におけるアダパレン0.1%と過酸化ベンゾイル2.5%配合ゲルの長期投与の高い有効性と安全性が示された。(皮膚の科学,15: 294-307, 2016)
著者
生駒 晃彦
出版者
京都大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2005

健常被験者延べ30名に参加していただき、前年度の実験からわかった、かゆみ過敏を最も生じやすい波長、周波数の皮膚電気刺激を用いてかゆみ過敏を生じさせ、そこにヒスタミン、セロトニン、ブラディキニンを投与した際の反応を調べた。その結果、かゆみ過敏状態下においては、ヒスタミンにより通常よりも強いかゆみが生じた。セロトニン、ブラディキニンにもその傾向があったが有意差には到らなかった。このことは、3物質の全てによって有意にかゆみが強く生じたアトピー性皮膚炎のかゆみ過敏状態のほうが電気刺激によるかゆみ過敏よりも程度が強いことを示唆する。また、抗ヒスタミン薬内服によりヒスタミンのかゆみはかゆみ過敏状態下であろうとなかろうと完全に抑制できたが、セロトニン、ブラディキニンのかゆみは影響を受けなかった。これはアトピー性皮膚炎のかゆみ過敏状態と同じであった。また、ステロイド外用薬の塗布はいずれのかゆみにも影響を与えなかった。これは、アトピー性皮膚炎のかゆみ過敏と異なる点であり、電気刺激のかゆみ過敏が末梢の炎症と無関係に生じていることを示唆している。また、ヒスタミン、セロトニンで生じる軸索反射性紅斑の大きさには、かゆみ過敏状態下とそれ以前の状態とで有意差は見られなかった。これは電気刺激のかゆみ過敏が末梢神経の閾値低下よりもむしろ中枢性であることを示唆している。これらを総括すると、電気刺激誘発性のかゆみ過敏も炎症性メディエーターによるかゆみの程度を増強させるが、その程度はアトピー性皮膚炎の場合よりは弱く、その理由は、アトピー性皮膚炎のかゆみ過敏には炎症による末梢神経の閾値低下が含まれるのに対して、電気刺激のかゆみ過敏にそれが含まれないからであると考えられた。
著者
菊地 克子 五十嵐 敦之 加藤 則人 生駒 晃彦 金久保 暁 照井 正
出版者
公益社団法人 日本皮膚科学会
雑誌
日本皮膚科学会雑誌 (ISSN:0021499X)
巻号頁・発行日
vol.129, no.13, pp.2763-2770, 2019-12-20 (Released:2019-12-20)
参考文献数
50

皮脂欠乏症は乾皮症と同義であり,加齢により生じる老人性乾皮症や皮膚機能が未成熟である乳幼児に生じるもののほか,アトピー性皮膚炎や魚鱗癬あるいは糖尿病や慢性腎臓病などの疾患に併発すると共に,一部の抗がん剤や放射線治療などに伴っても生じる.皮膚乾燥はしばしば瘙痒を伴い,搔破によって湿疹などの状態になることから,セルフメディケーション製品を含めた保湿剤による治療を疾患や病態に合わせて行う必要があるものの,明確な治療基準は存在しない.そのため,治療に関する指針が定められることが望まれる.
著者
大塚 篤司 生駒 晃彦
出版者
公益社団法人 日本皮膚科学会
雑誌
日本皮膚科学会雑誌 (ISSN:0021499X)
巻号頁・発行日
vol.133, no.2, pp.227-241, 2023-02-20 (Released:2023-02-20)
参考文献数
14

アトピー性皮膚炎(Atopic dermatitis;AD)の影響や治療について,医師と患者の認識を調べるため,医師209名と患者716名を対象にオンラインアンケート調査を実施した.その結果,患者は医師が考えるほどには日常生活の上で制限を受けていると感じておらず,心理・精神的にも困っていない可能性が示された一方で,医師よりも症状を改善させたい思いが強いことが示された.患者の意図を汲んだAD治療の実現のために,ADに対する医師と患者の認識のギャップを解消する必要性が示唆された.
著者
宮地 良樹 Mizzi Fabienne 三田 哲也 白 立岩 生駒 晃彦
出版者
日本皮膚科学会大阪地方会・日本皮膚科学会京滋地方会
雑誌
皮膚の科学 (ISSN:13471813)
巻号頁・発行日
vol.15, no.4, pp.278-293, 2016 (Released:2016-10-06)
参考文献数
12

目的:本治験は,各単剤と比べたアダパレン0.1%/過酸化ベンゾイル2.5%配合ゲルの有効性および安全性・忍容性を,日本人尋常性ざ瘡患者を対象に12週間の治療において検討することを目的として施行された。方法:本治験は,多施設共同,無作為化,二重盲検,実薬対照,並行群間比較の第III相臨床試験で,計417例の被験者が参加し,治験薬は12週間,1日1回,顔面全体に塗布された。総皮疹数の最終来院日の減少率を有効性主要評価項目とした。安全性・忍容性は有害事象や局所刺激性評価などの指標を用いて評価した。結果:本配合ゲルの総皮疹数に対する有効性は高かった(減少率の中央値:82.7%)。単剤に対する優越性は,アダパレン0.1%ゲル(68.6%)に対しては統計学的に有意(p<0.001)であった一方,過酸化ベンゾイル2.5%ゲル(81.6%)に対しては有意でなかった。重症や重篤な有害事象は報告されなかった。局所刺激症状を経験した被験者の割合は,配合ゲルがアダパレン0.1%ゲルや過酸化ベンゾイル2.5%ゲルよりも多かったが,いずれの群でもその症状はほとんどが軽症か中等症であった。結論:本治験により,本配合ゲルの日本人尋常性ざ瘡患者における高い有効性と安全性・忍容性が明らかになった。この結果はこれまでの海外データに矛盾せず,本配合ゲルの尋常性ざ瘡治療における良好なリスク・ベネフィット比を支持するものである。(皮膚の科学,15: 278-293, 2016)