著者
内藤 結花 前田 真之 長友 安弘 宇賀神 和久 秋間 悦子 田中 道子 時松 一成 佐々木 忠徳
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
YAKUGAKU ZASSHI (ISSN:00316903)
巻号頁・発行日
vol.142, no.5, pp.527-534, 2022-05-01 (Released:2022-05-01)
参考文献数
18
被引用文献数
2

Antimicrobial stewardship (AS) intervention strategy is a critical process in promoting appropriate antibiotic use, thus preventing unnecessarily prolonged therapy and reducing antimicrobial resistance (AMR). Although limiting unnecessary carbapenem use by AS intervention is speculated to reduce AMR, there is a lack of specific data on the efficacy of AS team (AST) intervention regarding carbapenem-resistant Pseudomonas aeruginosa (CRPA). Consequently, this study aimed to evaluate the impact of our AS strategy on carbapenem use and CRPA. The AS intervention strategy was launched in July 2017 and consisted of daily audits and feedback on carbapenem use. We evaluated the 4-year prescription trend, including the rate of switching to other antimicrobials, and the rate of CRPA and the days of therapy required prior to and after the beginning of the AST intervention. The rate of switching to narrow-spectrum antibiotics and the discontinuation of carbapenem treatment were significantly higher in the pre-intervention period compared with the post-intervention period. (7.0% vs. 14.5%; p<0.001; 54.1% vs. 50.9%; p=0.027). However, there were no significant differences in the rate of CRPA prior to and after the beginning of the AST intervention. Furthermore, there was no correlation found between consumption and resistance rate (Pearson's r=0.123). Our results suggest that it is extremely important for AST to promote de-escalation and reduce unnecessary use, while the combination of process and outcome indicators other than antimicrobial consumption and resistance rate are required for the evaluation of the AS programs.
著者
川口 寧 田中 道子
出版者
日本ウイルス学会
雑誌
ウイルス (ISSN:00426857)
巻号頁・発行日
vol.54, no.2, pp.255-264, 2004 (Released:2005-06-17)
参考文献数
57
被引用文献数
4 5

巨大なウイルスゲノムを有するヘルペスウイルスの遺伝子改変法は, 約四半世紀にも前に確立された. それにも関わらず, その過程は煩雑であり, 改変には熟練と時間を要した. 1997年, ドイツのKoszinowskiのグループは, 新しいヘルペスウイルスの改変法である‘BACシステム’を報告した. 彼らは, マウスサイトメガロウイルスのゲノムをBAC (bacterial artificial chromosome) にクローニングし, 大腸菌に保持させた. そして, 大腸菌の遺伝学を駆使してウイルスゲノムに変異を導入後, ウイルスゲノムを培養細胞に導入することによって変異ウイルスを再構築させることに成功した. この‘BACシステム’の登場により, ヘルペスウイルスの遺伝子改変は著しく簡便化され, 様々なヘルペスウイルスの増殖機構および病原性発現機構の解析が加速されている. また, ‘BACシステム’は, 遺伝子治療用のヘルペスウイルスベクターの開発をも簡便化し, ヘルペスウイルスの医学的利用の普及に貢献している. 本稿では, ヘルペスウイルス研究における‘BACシステム’について概説する.
著者
川口 寧 前田 健 堀本 泰介 見上 彪 田中 道子 遠矢 幸信 坂口 正士
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2000

本研究の目的は'bacterial artificial chromosome (BAC) systcm"を用いてヘルペスウイルスの簡便な組み換え法を開発することによって、新しいワクチン開発、遺伝子治療ベクターの開発、基礎研究を著しくスピードアップすることにある。本研究課題によって得られた結果は以下の通りである。ヘルペスウイルスで最も研究が進んでいる単純ヘルペスウイルス(HSV)の組み換え法の確立をBAC systemを用いて試みた。外来遺伝子の挿入によって影響がでない部位であるUL3とUL4のジャンクション部位にLoxP配列で挟まれたBACmidが挿入されたHSV全ゲノムを大腸菌に保持させることに成功した。大腸菌よりHSVゲノムを抽出し培養細胞に導入したところ、感染性ウイルス(YK304)が産生された。また、YK304とCre recombinase発現アデノウイルスを共感染させることによって非常に高率にYK304 genomeよりbacmidが除去されたウイルス(YK311)が得られた。YK304およびYK311は培養細胞において野生株であるHSV-1(F)と同等な増殖能力を示した。さらに、マウス動物モデルを用いた解析によりYK304およびYK311がHSV-1(F)と同等の病原性を示すことが明らかになった。以上より、YEbac102は、(i)完全長のHSV-1 genomeを保持し、(ii)bacmidの除去が可能であり、(iii)野生株と同等な増殖能および病原性を保持する感染遺伝子クローンを有していることが明らかになった。大腸菌の中で、実際に任意の変異をウイルスゲノムに導入する系を確立した。RecAを発現する大腸菌RR1にHSV全ゲノムを保持させた(YEbac103)。YEbac103内で、RecA法に従って、ICP0遺伝子に3つのアミノ酸置換を導入することに成功した。また、RecAを発現するトランスファープラスミドを構築し、RR1を用いずに、RecA negativeの大腸菌YEbac102内で、ICP34.5部位に変異を導入することに成功した。YEbac102、YEbac103と確立した組み換え系は、HSVの基礎研究、ワクチン開発、ベクター開発に多目的に有用であると考えられる。またこれらの系は他のヘルペスウイルスにも応用可能である。