- 著者
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川口 寧
田中 道子
- 出版者
- 日本ウイルス学会
- 雑誌
- ウイルス (ISSN:00426857)
- 巻号頁・発行日
- vol.54, no.2, pp.255-264, 2004 (Released:2005-06-17)
- 参考文献数
- 57
- 被引用文献数
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巨大なウイルスゲノムを有するヘルペスウイルスの遺伝子改変法は, 約四半世紀にも前に確立された. それにも関わらず, その過程は煩雑であり, 改変には熟練と時間を要した. 1997年, ドイツのKoszinowskiのグループは, 新しいヘルペスウイルスの改変法である‘BACシステム’を報告した. 彼らは, マウスサイトメガロウイルスのゲノムをBAC (bacterial artificial chromosome) にクローニングし, 大腸菌に保持させた. そして, 大腸菌の遺伝学を駆使してウイルスゲノムに変異を導入後, ウイルスゲノムを培養細胞に導入することによって変異ウイルスを再構築させることに成功した. この‘BACシステム’の登場により, ヘルペスウイルスの遺伝子改変は著しく簡便化され, 様々なヘルペスウイルスの増殖機構および病原性発現機構の解析が加速されている. また, ‘BACシステム’は, 遺伝子治療用のヘルペスウイルスベクターの開発をも簡便化し, ヘルペスウイルスの医学的利用の普及に貢献している. 本稿では, ヘルペスウイルス研究における‘BACシステム’について概説する.