- 著者
-
田口 寛
- 出版者
- 三重大学
- 雑誌
- 特定研究
- 巻号頁・発行日
- 1985
先ずトリゴネリンの生合成について検討した。その結果、コーヒー植物体各部位における含量は、生育の段階にかかわらず、トリゴネリンが1mg/gのオーダーであり、ニコチン酸はその千分の1の値であった。また、トリゴネリン合成酵素活性の分布を調べたところ、非常に高い活性が葉に検出され、以下未熟の種子、枝の順であった。さらに、本酵素の精製を試みたが、酸化防止とポリフェノールの除去を完全にしないと活性な酵素は抽出できなかった。酵素の性質を要約すると、基質はニコチン酸とS-アデノシルメチオニンであり、反応の最適pHは7で、重金属イオンによって阻害され、ニコチン酸に対するKm値は0.58mMと計算された。次に【N^1】-メチルニコチンアミドについて検討を加えた。一般的な食品105種類について含量を測定した結果、その含量の多いものは次のようであった(食品可食部100g当りのmg数):干しわかめ(3.19),茶の葉(3.04),ロースハム(2.83),砂ギモ(2.42),しょうが(1.63),しいたけ(1.32),うに(1.15),こうなご(1.14),糸引納豆(1.09),しゃこ(0.88),丸干し(0.87),わかさぎ(0.86),ほたてがい(0.85)。次に、試薬の【N^1】-メチルニコチンアミド(10mg)を小試験管に入れ、種々の温度のオイルバス中で5分間加熱して、ビタミンへの変換を調べてみたところ、240℃以上の高温で変換し、最大変換率は約70%で、生成物はニコチンアミドであった。そこで、実際の食品の調理・加工によっても【N^1】-メチルニコチンアミドなどがビタミンに変換するかどうかを調べるため、この目的に合った食品数種類を選び、焼くのと油炊めとを行った後に、ニコチン酸・ニコチンアミドのマイクロバイオアッセイをした結果、単位重量当りで比較して、生のときより明らかにビタミン効力は増加していた。以上のように、食品中には潜在性ニコチン酸・ニコチンアミドが存在しており、高温にするほどビタミンの量が増加した。