著者
谷口 枝穗 増澤 佑哉 島谷 直孝 多村 知剛 上野 浩一 栗原 智宏 本間 康一郎 佐々木 淳一 田口 寛子 新庄 正宜 武内 俊樹
出版者
日本救急医学会関東地方会
雑誌
日本救急医学会関東地方会雑誌 (ISSN:0287301X)
巻号頁・発行日
vol.41, no.4, pp.475-478, 2020-12-28 (Released:2020-12-28)
参考文献数
11

【背景】今回, 水痘を罹患した後に脳梗塞を発症した小児の1例を経験したので報告する。【症例】4歳の男児。右上下肢脱力で当院へ救急搬送された。来院後, 救急外来で一過性の右上下肢麻痺および構音障害が確認された。頭部MRI検査拡散強調画像で左内包後脚に高信号域, MRA検査で左中大脳動脈本幹の血管狭小所見を認め急性期脳梗塞と診断し, 同日入院した。入院5週間前に水痘罹患歴があり, 入院時の髄液検査より水痘・帯状庖疹ウイルス (varicella zoster virus : VZV) DNAが検出され, 水痘罹患後の血管炎による脳梗塞と診断した。アシクロビル (Aciclovir : ACV), プレドニゾロン (Prednisolone : PSL), 抗血栓薬投与により症状は単相性に改善し, 第18病日に自宅退院となった。【考察】小児期の脳梗塞の原因は, 成人と比較し多岐に渡り, 水痘罹患も主要な原因の一つである。小児脳梗塞症例においては, 基礎疾患の検索のほか, 水痘をはじめとした感染症の罹患歴ももれなく聴取することが重要である。
著者
新庄 正宜 岩田 敏 佐藤 吉壮 秋田 博伸 砂川 慶介
出版者
一般社団法人 日本感染症学会
雑誌
感染症学雑誌 (ISSN:03875911)
巻号頁・発行日
vol.86, no.5, pp.582-591, 2012-09-20 (Released:2013-04-25)
参考文献数
17
被引用文献数
11 14

2009 年1 月から2010 年12 月までの2 年間に全国95 施設から小児細菌性髄炎314 症例(男児186,女児124,性別未報告4 例)が報告された.年齢別では0 歳児が51.2%(161/314)と半数を占めた.原因菌として,Haemophilus influenzae(1 カ月~5 歳)が53.2%(167/314)と最も多く,次いでStreptococcus pneumoniae (1 カ月~12 歳)が24.2%(76/314),Streptococcus agalactiae(4 カ月以下のみ),Escherichia coli(3 カ月以下のみ)と続いた.耐性菌の率は,H. influenzae で50.1%(78/153),S. pneumoniae で63.0%(46/73)であった.初期治療薬は,4 カ月未満ではampicillin(ABPC)+セフェム系薬ならびにカルバペネム系薬+その他のβ ラクタム系薬の2 剤を併用した症例が77.8%(42/54)と多く,4 カ月以降ではカルバペネム系薬+その他のβ ラクタム系薬の併用が76.4%(198/259)を占めた.最終治療薬としては,H. influenzae でcefotaxime(CTX)もしくはceftriaxone(CTRX),S. pneumoniae でカルバペネム系薬の単剤が最も多かった.致死率は2.0%(6/305)であった.インフルエンザ菌b 型ワクチン(以下,Hib ワクチン)を接種したのは 5 名のみで,いずれもH. influenzae 髄膜炎以外の髄膜炎を発症した.7 価肺炎球菌結合型ワクチン(以下, PCV7)の接種者はいなかった.Hib ワクチン,PCV7 の普及していない現時点では,小児細菌性髄膜炎の特徴に,ここ数年間大きな変化はなかった.