著者
根本 裕太 菊賀 信雅 澤田 亨 松下 宗洋 丸藤 祐子 渡邊 夏海 橋本 有子 中田 由夫 福島 教照 井上 茂
出版者
一般社団法人日本体力医学会
雑誌
体力科学 (ISSN:0039906X)
巻号頁・発行日
vol.71, no.5, pp.431-441, 2022-10-01 (Released:2022-09-13)
参考文献数
35

Approximately 40%–65% of new fitness club (FC) members cancel their membership within 6 months. To prevent such cancellations, it is essential to identify members at high risk of doing so. This study developed a model to predict the probability of discontinuing FC membership among new members. We conducted a cohort study and enrolled participants from 17 FCs in Japan. We asked 5,421 individuals who became members from March 29, 2015 to April 5, 2016 to participate in the study; 2,934 completed the baseline survey, which was conducted when the participants became FC members. We followed up the participants until September 30, 2016. We excluded 883 participants with missing values and 69 participants under aged 18 years; thus, our analysis covered 1,982 individuals. We conducted the random survival forest to develop the prediction model. The mean follow-up period was 296.3 (standard deviation, 127.3) days; 488 participants (24.6%) cancelled their membership during the follow-up. The prediction model comprised 8 predictors: age; month of joining FC; years of education; being under medical follow-up; reasons for joining FC (health improvement, relaxation); and perceived benefits from exercise (maintaining good body weight, recognition of one’s ability by other). The discrimination and calibration were acceptable (C statistic: 0.692, continuous ranked probability score: 0.134). Our findings suggest that the prediction model could assess the valid probability for early FC cancellation among new members; however, a validation study will be needed.
著者
天笠 志保 松下 宗洋 田島 敬之 香村 恵介 中田 由夫 小熊 祐子 井上 茂 岡 浩一朗
出版者
日本運動疫学会
雑誌
運動疫学研究 (ISSN:13475827)
巻号頁・発行日
pp.2102, (Released:2021-02-10)

2020年11月に国際身体活動健康学会(International Society for Physical Activity and Health: ISPAH)は「身体活動を支える8つの投資(Eight Investments That Work for Physical Activity)」を出版した。これは,2010年に同学会が発表した「身体活動のトロント憲章」と2011年の「非感染性疾患予防:身体活動への有効な投資」のうち,後者を最新化するもので,世界保健機関(World Health Organization: WHO)の「身体活動に関する世界行動計画2018-2030」とともに身体活動促進のガイダンスとして有益である。身体活動の促進は人々の健康増進のみならず,より良い社会の実現,国連が定める「持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals: SDGs)」の達成に資するとされている。その戦略としてはシステムズアプローチが重要であり,その考えに基づいて8つの領域にわたる対策を推奨している。8つとは,①「学校ぐるみ」のプログラム(whole-of-school programmes),②アクティブな移動・交通手段(active transport),③アクティブな都市デザイン(active urban design),④保健・医療(healthcare),⑤マスメディアを含む一般社会に向けた啓発(public education, including mass media),⑥みんなのためのスポーツとレクリエーション(sport and recreation for all),⑦職場(workplaces),⑧コミュニティ全体のプログラム(community-wide programmes)である。本稿ではその内容を概説するとともに,英語原本およびその日本語訳を要約し,紹介する。
著者
佐藤 慎一郎 根本 裕太 高橋 将記 武田 典子 松下 宗洋 北畠 義典 荒尾 孝
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.63, no.9, pp.560-568, 2016 (Released:2016-11-04)
参考文献数
62
被引用文献数
1

目的 本研究は地域在住の自立高齢者を対象に,膝痛の包括的な関連要因を男女別に明らかにすることを目的とした。方法 山梨県都留市下谷地区在住の65歳以上の要介護認定を受けていないすべての高齢者1,133人を対象に,健康状態,生活習慣に関する調査を行った。調査内容は基本属性,健康状態,生活習慣,膝痛,身体活動であった。膝痛は,過去 2 週間の平地を歩く際の痛みの有無について調査した。身体活動は,国際身体活動質問紙短縮版の日本語版を用い,週あたりの総身体活動量と 1 日あたりの座位時間を算出した。世界保健機関による健康のための身体活動に関する国際勧告に基づき,週あたりの歩行および中等度強度以上の総身体活動量が150分以上を身体活動量充足群,150分未満を身体活動量非充足群の 2 群とした。座位時間は中央値を基準値とし,5 時間以上を長時間群,5 時間未満を短時間群の 2 群とした。基本属性は,年齢,性別,最終学歴,婚姻状態,健康状態は体格指数(Body mass index:BMI),現症歴,生活習慣は食生活,飲酒状況,喫煙状況を調査しそれぞれ 2 値に分類した。解析は,男女別に行い,膝痛の有無を従属変数とし,身体活動量,座位時間,食生活,飲酒状況,喫煙状況,BMI を独立変数とした。また,不可変変数である年齢,最終学歴,婚姻状態,現症歴を調整変数として一括投入した多重ロジスティック回帰分析を行った。結果 有効回答数は801人(有効回答率70.7%)であった。解析対象者801人のうち,男性は365人(74.9±6.9歳),女性は436人(74.9±6.9歳)であった。膝痛の関連要因を性別にて検討した結果,男性においては,身体活動量(P=0.035)のみが有意な関連要因であった。身体活動量非充足群に対する身体活動量充足群の膝痛のオッズ比は0.605,95%信頼区間は0.380-0.964であった。女性においては,BMI(P=0.023)と食生活(P=0.004)が有意な関連要因であった。BMI では25 kg/m2 以上群に対する25 kg/m2 未満群の膝痛のオッズ比は0.595,95%信頼区間は0.380-0.931であった。食生活は,食生活不良群に対する食生活良好群の膝痛のオッズ比は0.547,95%信頼区間は0.364-0.823であった。結論  本研究結果から,男性では身体活動量,女性では BMI と食生活がそれぞれ膝痛の関連要因であることが示唆された。
著者
菊賀 信雅 福島 教照 澤田 亨 松下 宗洋 丸藤 祐子 渡邊 夏海 橋本 有子 中田 由夫 井上 茂
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.68, no.4, pp.230-240, 2021-04-15 (Released:2021-04-23)
参考文献数
29

目的 健康増進施設であるフィットネスクラブ(fitness club: FC)では,約4割以上の新規入会者が6か月以内に退会する。運動の習慣化に心理行動医学的アプローチが重要とされるが,民間FCの退会と関連する心理的要因を検討した報告は極めて少ない。そこで,本研究の目的はFC新規入会者における運動習慣の促進要因・阻害要因と退会との関連を明らかにすることである。方法 単一の経営母体である民間FC(17施設)の協力を得てコホート研究を実施した。2015年4月1日から2016年3月31日までのすべての新規入会者(5,421人)に自記式質問紙調査を依頼し,2,934人より回答を得た。未成年者(n=167)および回答欠損者(n=702)は解析から除外した。運動習慣の心理的要因は「簡易版運動習慣の促進要因・阻害要因尺度」で評価した。2016年9月30日まで追跡し退会の有無を把握した。Cox比例ハザードモデルにより全体および性・年齢階級別に検討した。結果 最終的な分析対象者は2,065人(平均年齢[標準偏差],39.0[15.0]歳,男性28.8%)で,追跡不能者はいなかった。平均追跡期間は10.1(4.4)か月で,退会率は24.6人/1,000人月であった。全体の分析では心理的要因と退会に有意な関連は認めなかった。層別解析において40-59歳の男性では「健康体力(促進要因)」得点が高い者ほど退会率が低かった(HR, 0.72[0.52-1.00])。39歳以下の女性では,「身体的・心理的阻害(阻害要因)」得点が高い者では退会率が高かった(HR, 1.10[1.01-1.19])。40-59歳の女性では「対人関係(促進要因)」得点が高い者ほど退会率が低く(HR, 0.84[0.74-0.97]),「怠惰性(阻害要因)」得点が高い者ほど退会率が低かった(HR, 0.85[0.73-0.99])。男女とも60歳以上では「自己の向上(促進要因)」得点が高い者ほど退会率が高かった(男性HR, 2.52[1.10-5.81],女性HR, 1.31[1.00-1.72])。結論 退会と関連する入会時の心理的要因は性・年齢階級により異なった。退会予防には入会者の属性や心理的要因に即した運動プログラムの提供が必要と考えられた。
著者
松下 宗洋 原田 和弘 荒尾 孝
出版者
日本健康教育学会
雑誌
日本健康教育学会誌 (ISSN:13402560)
巻号頁・発行日
vol.22, no.1, pp.30-38, 2014 (Released:2015-01-13)
参考文献数
17
被引用文献数
1

目的:運動行動を促進する技法の1つとして,インセンティブを用いて動機づけを高める技法が注目されている.インセンティブを効果的に用いるには,インセンティブの内容(種類,金額)や,対象者の運動行動に対する準備性を考慮する必要がある.本研究の目的は,対象者の運動行動変容ステージとインセンティブの内容によって,運動行動を動機づける強さが異なるかを検討することである.方法:40~69歳のモニターを対象(N=1,290)にインターネット調査による横断研究を実施した.測定項目は,インセンティブの種類による運動行動の動機づけの強さ(以下,動機強化得点),インセンティブとして希望する相当額,運動行動変容ステージであった.結果:動機強化得点は,インセンティブの種類(p<0.01),運動の行動変容ステージ(p<0.01)により有意に異なり,両者の交互作用も有意であった(p<0.01).しかし,各行動変容ステージにおける動機強化得点の高いインセンティブは,現金,商品券,旅行券であり,順位に大きな変動はなかった.各行動変容ステージの運動取組動機率が50%に達するインセンティブ希望金額は,前熟考期が2,000円,熟考期が1,000円,準備&実行期が1,500円,維持期が500円であった.結論:運動行動を動機づける強さは,インセンティブの内容(種類,金額)や運動の行動変容ステージによって異なることが明らかとなった.今後は,本研究を基にしたインセンティブによる運動実践率向上の検証が課題となる.
著者
松下 宗洋 宮地 元彦 川上 諒子 岡本 隆史 塚本 浩二 中田 由夫 荒尾 孝 澤田 亨
出版者
一般社団法人日本体力医学会
雑誌
体力科学 (ISSN:0039906X)
巻号頁・発行日
vol.62, no.5, pp.375-381, 2013-10-01 (Released:2013-10-19)
参考文献数
29

Several studies have shown that low cardiorespiratory fitness (CRF) or heavy alcohol consumption is risks of total or certain types of cancer death. However, the combined influence of CRF and drinking habits on total cancer mortality is not clear. The purpose of this study was to investigate the joint effect of CRF and drinking habits on total cancer mortality among Japanese men. We evaluated the CRF and drinking habits on risk of total cancer mortality in 8,760 Japanese men (age: 19-59 yr) who were given a submaximal exercise test, a medical examination test, and questionnaires on their health habits. CRF was measured using a cycle ergometer test, and the men were classified into two categories by CRF levels based on the reference value of CRF (R-CRF) in “Physical Activity Reference for Health Promotion 2013” (Under R-CRF and Over R-CRF). Also, the men were assigned to Non Drinking, Moderate Drinking, and Heavy Drinking categories. There were 178 cancer deaths during the 20-yr follow-up period. Relative risk and 95% confidence intervals for total cancer mortality were obtained using the Cox proportional hazards model while adjusting for age, body mass index, systolic blood pressure, and smoking habits. Using the Under R-CRF & Heavy Drinking group as reference, the relative risk and 95% confidence intervals were 0.37 (0.16–0.85) for the Over R-CRF & Non Drinking group. This result suggests that Japanese male with a high CRF and a low drinking habit have a lower risk of total cancer mortality.