著者
村山 良之 黒田 輝 田村 彩
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
日本地理学会発表要旨集 2018年度日本地理学会秋季学術大会
巻号頁・発行日
pp.68, 2018 (Released:2018-12-01)

自然災害は地域的現象であるので,学校の防災教育(および防災管理)の前提として学区内やその周辺で想定すべきハザードや当該地域の土地条件と社会的条件を踏まえることが必要である。災害というまれなことを現実感を持って理解できるという教育的効果も期待できる。福和(2013)の「わがこと感」の醸成にもつながる。 学校教育において,児童生徒に身近な地域の具体例を示したりこれを導入に用いたりすることは,ごく日常的である。しかし,山形県庄内地方では,新潟地震(1964年6月16日,M7.5)で大きな被害を経験したが,多くの教員がこのことを知らず,学校でほとんど教えられていない。発災から約50年が経ち,直接経験の記憶を持つ教員が定年を迎えており,教材開発が急務であると判断された。そこで,既存の調査記録(なかでも教師や児童生徒,地域住民が記した作文等)および経験者への聞き取り調査を基に,当時の災害を復元し,それをもとに教材化することを目指した。庄内地方における1964年新潟地震災害の復元 鶴岡市においては,被害が大きい①京田地区②大山地区③西郷地区④上郷地区について調査した。①と②について記す。 ①京田地区は,鶴岡駅の北西に位置し,集落とその周辺は後背湿地である。小学校の校舎を利用して運営されていた京田幼児園では,園児がグラウンドへ避難する際に園舎二階が倒壊し,保母と園児16名が下敷きとなった。学校職員をはじめ,地域住民やちょうどプール建設工事を行っていた従業員によって13名が救出されたが,3名の園児が亡くなった。当時の園児Sさんは,倒壊部分の下敷きとなったうちの1人である。逃げる途中に机やいすから出ていた釘で左の頬を切った。自分もグラウンドに逃げたかったが,体が倒壊した建物にはさまれて動かず,「お父さん!お母さん!」と叫んで助けを求めるしかなかった。その後泣き疲れて眠ってしまい,気付いた時にはすでに救出されていたそうだ。 ②大山地区は,鶴岡市西部に位置する。地区の西部は丘陵地,東部は低地である。町を横断するように大戸川と大山川が流れており,当時の市街地は大戸川の自然堤防上にあった。ここは家屋被害が鶴岡市でもっともひどく,道路に家が倒壊したものもあった。家を失った人々は公民館や寺の竹藪,旧大山高校などで数日間生活した。大山は酒造業が盛んで,醤油作りも行われていたが,これらの被害も大きかった。酒造会社のWさんによると,町中を流れる水路に酒が流れ込み,酒と醤油の混ざり合った異臭が数日間消えなかったそうだ。大山小学校においては,明治時代に造られた木造校舎の被害が大きかった。当時3年生だったOさんの話によれば,教室後方の柱が倒れてきたとのことだった。大山小学校ではちょうど3日前の避難訓練の成果がでて,職員と児童全員がけがすることなく避難することができた。 酒田市においては,既存文献で被害の大きい①旧市街地②袖浦・宮野浦地区の2地域について調査した。うち①について記す。 ①旧市街地は最上川右岸の砂丘とその周辺に位置する。水道被害が深刻でとくに上水道の被害が大きく,6月17~19日にかけて完全断水となった。その間は自衛隊の給水車で水を賄っていた。酒田第三中学校で2年生の女生徒がグラウンドに避難する途中に,地割れに落ちて圧迫死した。グラウンドには,何本もの地割れが走り,そこから水が噴き上げため,落ちた生徒の発見が遅れた。犠牲者と同学年のIさんの話によると,校庭でバレーボールをしている際に地震が起こった。先生の指示で最上川の堤防に逃げようとした時,グラウンドにはすでに地割れが起こっていた。地割れが自分に向かって走ってきた恐怖は,今でも地震の際に思い出すそうだ。水道管の被害,グランドの地割れや憤水から,酒田では広域にわたって激しい液状化が発生したことがわかる。新潟地震の教材化 現行の小学校社会科学習指導要領では,3年「市の様子」,「飲料水・電気・ガス」,4年「安全なくらしを守る」,「地域の古いもの探し」,5年「国土と自然」,6年「暮らしと政治」の各単元で,上記結果を用いた授業展開が考えられる。このうち3,4年社会科では地元教育委員会作成の副読本を用いることが一般的である。鶴岡市と酒田市の現行副読本には新潟地震災害は含まれていないため,これに追加可能な頁を,上記の研究成果を基に試作した。 鶴岡市教育委員会では,次期改訂で新潟地震を取り上げることとし,2018年度から検討を開始した。以上の研究成果が次期副読本に活用される見通しである。
著者
滑田 明暢 田村 彩佳 望月 昭
出版者
一般社団法人 日本家政学会
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.68, no.11, pp.598-608, 2017 (Released:2017-12-02)
参考文献数
31

The present study examined the effect of the token economy on clean-up behavior among family members. We conducted experiments with one family (1 man and 3 women), in which the family members consented to the introduction of the token economy. The introduction of the token economy among family members (experiment 1) and the new physical environmental setting that introduced a display shelf for cloths (experiment 2) resulted in an increase in clean-up behavior as a household task. The goods and cloths left in the living room of the home were put in the storage space. In other words, the results demonstrated the effectiveness of the token economy and the new physical environmental setting (introducing a display shelf for cloths).
著者
村山 良之 黒田 輝 田村 彩
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
日本地理学会発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.2018, 2018

自然災害は地域的現象であるので,学校の防災教育(および防災管理)の前提として学区内やその周辺で想定すべきハザードや当該地域の土地条件と社会的条件を踏まえることが必要である。災害というまれなことを現実感を持って理解できるという教育的効果も期待できる。福和(2013)の「わがこと感」の醸成にもつながる。<br><br> 学校教育において,児童生徒に身近な地域の具体例を示したりこれを導入に用いたりすることは,ごく日常的である。しかし,山形県庄内地方では,新潟地震(1964年6月16日,M7.5)で大きな被害を経験したが,多くの教員がこのことを知らず,学校でほとんど教えられていない。発災から約50年が経ち,直接経験の記憶を持つ教員が定年を迎えており,教材開発が急務であると判断された。そこで,既存の調査記録(なかでも教師や児童生徒,地域住民が記した作文等)および経験者への聞き取り調査を基に,当時の災害を復元し,それをもとに教材化することを目指した。<br><br>庄内地方における1964年新潟地震災害の復元<br><br> 鶴岡市においては,被害が大きい①京田地区②大山地区③西郷地区④上郷地区について調査した。①と②について記す。<br><br> ①京田地区は,鶴岡駅の北西に位置し,集落とその周辺は後背湿地である。小学校の校舎を利用して運営されていた京田幼児園では,園児がグラウンドへ避難する際に園舎二階が倒壊し,保母と園児16名が下敷きとなった。学校職員をはじめ,地域住民やちょうどプール建設工事を行っていた従業員によって13名が救出されたが,3名の園児が亡くなった。当時の園児Sさんは,倒壊部分の下敷きとなったうちの1人である。逃げる途中に机やいすから出ていた釘で左の頬を切った。自分もグラウンドに逃げたかったが,体が倒壊した建物にはさまれて動かず,「お父さん!お母さん!」と叫んで助けを求めるしかなかった。その後泣き疲れて眠ってしまい,気付いた時にはすでに救出されていたそうだ。<br><br> ②大山地区は,鶴岡市西部に位置する。地区の西部は丘陵地,東部は低地である。町を横断するように大戸川と大山川が流れており,当時の市街地は大戸川の自然堤防上にあった。ここは家屋被害が鶴岡市でもっともひどく,道路に家が倒壊したものもあった。家を失った人々は公民館や寺の竹藪,旧大山高校などで数日間生活した。大山は酒造業が盛んで,醤油作りも行われていたが,これらの被害も大きかった。酒造会社のWさんによると,町中を流れる水路に酒が流れ込み,酒と醤油の混ざり合った異臭が数日間消えなかったそうだ。大山小学校においては,明治時代に造られた木造校舎の被害が大きかった。当時3年生だったOさんの話によれば,教室後方の柱が倒れてきたとのことだった。大山小学校ではちょうど3日前の避難訓練の成果がでて,職員と児童全員がけがすることなく避難することができた。<br><br> 酒田市においては,既存文献で被害の大きい①旧市街地②袖浦・宮野浦地区の2地域について調査した。うち①について記す。<br><br> ①旧市街地は最上川右岸の砂丘とその周辺に位置する。水道被害が深刻でとくに上水道の被害が大きく,6月17~19日にかけて完全断水となった。その間は自衛隊の給水車で水を賄っていた。酒田第三中学校で2年生の女生徒がグラウンドに避難する途中に,地割れに落ちて圧迫死した。グラウンドには,何本もの地割れが走り,そこから水が噴き上げため,落ちた生徒の発見が遅れた。犠牲者と同学年のIさんの話によると,校庭でバレーボールをしている際に地震が起こった。先生の指示で最上川の堤防に逃げようとした時,グラウンドにはすでに地割れが起こっていた。地割れが自分に向かって走ってきた恐怖は,今でも地震の際に思い出すそうだ。水道管の被害,グランドの地割れや憤水から,酒田では広域にわたって激しい液状化が発生したことがわかる。<br><br>新潟地震の教材化<br><br> 現行の小学校社会科学習指導要領では,3年「市の様子」,「飲料水・電気・ガス」,4年「安全なくらしを守る」,「地域の古いもの探し」,5年「国土と自然」,6年「暮らしと政治」の各単元で,上記結果を用いた授業展開が考えられる。このうち3,4年社会科では地元教育委員会作成の副読本を用いることが一般的である。鶴岡市と酒田市の現行副読本には新潟地震災害は含まれていないため,これに追加可能な頁を,上記の研究成果を基に試作した。<br> 鶴岡市教育委員会では,次期改訂で新潟地震を取り上げることとし,2018年度から検討を開始した。以上の研究成果が次期副読本に活用される見通しである。
著者
大門 拓実 田村 彩 髙橋 邦彦
出版者
公益社団法人 日本食品衛生学会
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.62, no.5, pp.166-167, 2021-10-25 (Released:2021-11-02)
参考文献数
1

著者らは,農産物中の残留農薬をQuEChERS (EN 15662:2008)の原理で抽出後,希釈のみ行い,LC-MS/MSで測定を行うという,迅速性,簡便性,汎用性の高い分析方法について,全21種の農産物を対象にその妥当性確認を実施した.その結果,全210成分中194~210成分において妥当性評価ガイドライン(厚生労働省通知)の目標値を満たしたことから,本法は迅速的かつ効果的な分析法として適用可能であることが考えられた.
著者
田村 彩香 李 種恩 永田 良太
出版者
広島大学大学院教育学研究科日本語教育学講座
雑誌
広島大学日本語教育研究 (ISSN:13477226)
巻号頁・発行日
no.26, pp.23-27, 2016

This paper aims to clarify the use of Japanese conjunctive particles in tasks related to Dialogic Language Assessment (DLA). With a focus on the students' developmental stage and the kind of tasks, this study made the following two findings. (1) Speaking in DLA involves two kinds of tasks: one relates to frequently used conjunctive particles (i.e., daily routine, fire truck, and story-telling tasks); the other relates to rarely used conjunctive particles (i.e., vocabulary check, classroom, sports, and new teacher tasks). (2) In tasks that involve frequent use of conjunctive particles, the particle te is most commonly selected. In addition, with increasing student developmental stage, various conjunctive particles, such as tara, kedo, kara, and node, are employed.本研究は,2013年度JSPS科研費25284096(基盤研究(B)『アーティキュレーションを保証する言語能力アセスメント実施支援システムの構築』研究代表者:渡部倫子)の助成を受けたものである。