著者
田村 糸子 高木 秀雄 山崎 晴雄
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.116, no.7, pp.360-373, 2010-07-15 (Released:2010-11-11)
参考文献数
54
被引用文献数
11 13

南関東の千葉県銚子地域から東京都江東区,神奈川県鎌倉市,愛川町にかけて分布する上総層群相当層に見出された,ざくろ石を多量に含むという特徴を持つテフラ層について,記載岩石学的特徴,ざくろ石の化学組成,テフラ層の層序学的位置づけなどを検討し,これらのテフラ層が明確に対比されることを示した.そして,ざくろ石の粒径の傾向などから,その給源火山が丹沢に求められることを明らかにした.このざくろ石テフラ層を丹沢-ざくろ石軽石層(Tn-GP)と呼ぶ.Tn-GPの堆積年代は,各地における生化石層序,テフラ層序,古地磁気層序などから,およそ2.5 Maと推定される.ざくろ石を多量に含む極めて特徴的なTn-GPは,今後,南関東の各地の更新統で見出される可能性が高く,新しい層序区分におけるP/P境界付近,あるいは黒滝不整合の時代の指標テフラとして貴重な時間面を提供し,関東平野の都市基盤解明に寄与すると期待される.
著者
田村 糸子
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.114, no.4, pp.157-162, 2008-04-15 (Released:2009-02-24)
参考文献数
17
被引用文献数
11 4

高等学校において地学教育の機会が減少の一途をたどっている.その要因の一つは,2003年度より施行された現行の学習指導要領である.「情報」・「総合的な学習の時間」・理科の3つの総合的な選択必修科目の導入による,理科の時間数減少の中で,受験に関係の少ない地学が最も削減の影響を受けたと予想される.「地学I」の全高等学校在学者数に対する履修率は3%で,理科の7つの選択必修科目の中で最も少ない.また,地学の教員が減少していることも大きな要因の一つである.高等学校生徒数の減少に伴い教員数も削減され,地学教員退職後の補充がほとんどされてない.地学が軽んじられているのは,高等学校の教育が,進路重視,入試最優先という実情にあると考えられる.今後,教育本来の目的を取り戻し,広い視点から高等学校教育を見つめ直す必要がある.
著者
小西 拓海 宇都宮 正志 岡田 誠 田村 糸子
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.129, no.1, pp.469-487, 2023-10-31 (Released:2023-10-31)
参考文献数
50

本研究では下部更新統上総層群下部(前弧海盆堆積物)と千倉層群畑層(海溝陸側斜面堆積物)について古地磁気層序とテフラ層序に基づく時間面対比を行った.上総層群勝浦層最上部と大原層上部~黄和田層にFeni(Réunion)正磁極亜帯とOlduvai正磁極亜帯に相当する正磁極性がそれぞれ確認され,それ以外の層準でMatuyama逆磁極帯に相当する逆磁極性が確認された.千倉層群畑層のテフラ層Kmj-3,Kmj-10,Kmj-18,Kmj-29,Kmj-41,Kmj-53,Kmj-68,およびKmj-71が上総層群のテフラ層Kr31,KRm,KH2,IW2,OFN2,KB,HS C,およびHS Aにそれぞれ対比された.これらのテフラ対比は古地磁気層序と調和的であり,上総層群のテフラ層IW2はFeni正磁極亜帯内,HS CはOlduvai正磁極亜下部境界の直下,HS Aは同境界直上にそれぞれ位置することが示された.
著者
田村 糸子
出版者
日本地質学会
雑誌
地質學雜誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.114, no.4, pp.157-162, 2008-04-15
被引用文献数
9 4

高等学校において地学教育の機会が減少の一途をたどっている.その要因の一つは,2003年度より施行された現行の学習指導要領である.「情報」・「総合的な学習の時間」・理科の3つの総合的な選択必修科目の導入による,理科の時間数減少の中で,受験に関係の少ない地学が最も削減の影響を受けたと予想される.「地学I」の全高等学校在学者数に対する履修率は3%で,理科の7つの選択必修科目の中で最も少ない.また,地学の教員が減少していることも大きな要因の一つである.高等学校生徒数の減少に伴い教員数も削減され,地学教員退職後の補充がほとんどされてない.地学が軽んじられているのは,高等学校の教育が,進路重視,入試最優先という実情にあると考えられる.今後,教育本来の目的を取り戻し,広い視点から高等学校教育を見つめ直す必要がある.
著者
田村 糸子 水野 清秀 宇都宮 正志 中嶋 輝允 山崎 晴雄
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.125, no.1, pp.23-39, 2019-01-15 (Released:2019-04-15)
参考文献数
116
被引用文献数
9 12

房総半島に分布する上総層群は,層厚3000mに達する下部~中部更新統の前弧海盆堆積物である.古くから多くの層序学的研究が行われ,日本の海成更新統の模式層序である.また500層を超える多くのテフラが挟在され,上部の笠森層から下部の黄和田層まで詳細なテフラ層序が確立されている.多数の広域テフラ対比も報告され,日本列島の更新世テフラ編年上,重要である.本論では,現在までに明らかにされた上総層群の広域テフラをまとめ,約0.4Ma~2Ma間の20層を超える広域テフラを示した.そして黄和田層中のテフラ層序に関して,ダブルカウントや上下逆転などの問題点を指摘した.また報告の少なかった上総層群下部の大原層,浪花層,勝浦層において,新たに多数の細粒ガラス質テフラを記載し広域対比を検討した.その結果,Bnd2-O1(2.1Ma),Fup-KW2(2.2Ma)の2層の広域テフラを新たに見出した.これらのテフラ対比から,上総層群基底の堆積年代が2.3Maを遡る可能性を示した.
著者
山崎 晴雄 田村 糸子
出版者
首都大学東京
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

黒滝不整合は房総半島で鮮新・更新統上総層群の基底に認められる不整合である。その成因に関しては,構造運動説や海底地すべり説など様々な見解が検討されてきたが明確な答えは得られていない。本研究では不整合を覆う上総層群中の広域テフラの対比・編年を通じて、各地の不整合形成時期を明らかにした。その結果、房総の上総層群基底の堆積時期は3.2Ma ~ 1.9Maに及び、三浦半島には不整合が存在しないことが分かった。これから、黒滝不整合は,2.3~1.9Ma頃に局地的な海底地すべりが、順次発生した結果と考える。
著者
田村 糸子 山崎 晴雄
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.110, no.7, pp.417-436, 2004 (Released:2005-01-07)
参考文献数
78
被引用文献数
18 26

金沢から富山にかけて分布する鮮新—更新統, 北陸層群に挟在するテフラ層序を明らかにし, 30層のテフラ層を記載した. 本地域に分布する釣部1, 砂子谷1, 砂子谷2, 寺町, OL2a, MT2・Chk, O1, O2, O3, ptの各テフラ層は, その記載岩石学的特性から, Ya-4, 坂井・Ya-5, 小鈴谷 (4 Ma), 大田-ZnP (3.7 Ma), T2, 谷口 (2.2-2.3 Ma), 坂東2 (2.1 Ma), 恵比須峠-福田 (1.75 Ma), 大峰-SK110 (1.65 Ma), 上宝 (0.6 Ma) の各テフラ層に対比される. この対比から大桑層中部が鮮新—更新世境界層準であり, 大桑層の下限は2.3 Maより古くなることが明らかとなった. そして高窪層上部の堆積年代は3 Ma頃で, 従来考えられていた長時間に及ぶ無堆積状態は存在しないことが示された. また富山平野東部の呉羽山礫層の堆積年代から, 飛騨山地は, 後期鮮新世には隆起を開始していたことが明らかとなった.
著者
田村 糸子 山崎 晴雄 水野 清秀
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.111, no.12, pp.727-736, 2005 (Released:2006-04-05)
参考文献数
52
被引用文献数
4 12

中央日本において,近畿東海地域から北陸,新潟,房総地域にかけて分布する前期鮮新世の広域テフラ-坂井火山灰層とその相当層の広域性を検討した.坂井火山灰層とその相当層は,発泡のよい火山ガラスからなり極少量の黒雲母を含む.火山ガラスの化学組成がK2Oに富みCaOに乏しく,特に微量成分においてBaやSrが著しく乏しいという特徴を示す.堆積年代は,各地域の挟在層準において,Znp-大田火山灰層の下位,浮遊性有孔虫化石N.19帯上部,Gilbert ChronのCochiti Subchronに近接した層位等から,およそ4.1 Maと推定される.坂井火山灰層とその相当層の給源は,粒径や層厚の変化,火山ガラスの化学組成の特徴から,近畿地方より西方と推定され,北九州から山陰にかけての鮮新世アルカリ火山岩の活動と関係する可能性がある.坂井火山灰層とその相当層は,極めて特徴的な火山ガラスの化学組成を示すことから,今後,他の地域でも見出される可能性が高く,前期鮮新世の重要な鍵層となると予想される.