著者
山崎 晴雄
出版者
Japan Association for Quaternary Research
雑誌
第四紀研究 (ISSN:04182642)
巻号頁・発行日
vol.16, no.4, pp.231-246, 1978-02-28 (Released:2009-08-21)
参考文献数
32
被引用文献数
14 10

The Musashino Upland, a dissected fan of the Tama River in the western suburbs of Tokyo, is displaced by the Tachikawa fault, which runs in a NW-SE direction with long-continued flexure scarps.Using the tephrochronological method and data of water well logs, the author investigated geomorphic features and movement history of the fault in detail. It is thus revealed that the fault has displaced the terrace surfaces of various ages, including the Tc3 surface of 14, 000 years B.P. and the Holocene old stream channels (Fig. 1, Fig. 10). The Plio-Pleistocene sediments, buried under the Musashino Upland, have been vertically displaced about 70m at Hakonegasaki (Fig. 5, Fig. 6). This fault has only vertical displacement with no strike-slip component, and the upthrown side of the fault is northest. The long-term average slip-rate, derived from the displacement of terrace surfaces, is the largest in the central part of the fault and gradually decreases toward the both ends. The maximum average slip-rate is 36cm/1000 years.The total length of the fault is 21km. If examined in detail, it may be divided into two segments from discontinuity of the geomorphic expression and difference in the long-term slip-rate (Fig. 11). No sign of fault movement has been found from precise levelling across this fault for 40 years. So it is thought that fault movements had been recurred on this fault with large earthquakes in the late Quaternary period. The fault displacement in an earthquake, the earthquake magnitude, and its recurrence interval are estimated at about 1.8m, M. 7.1, and 5, 000 years, respectively.There are two types of surface deformations along the Tachikawa fault. One is a flexure scarp of 100-300 meters in width (Fig. 8). This flexure scarp is thought to have been formed by the existence of thick unconsolidated fluvial gravel deposits overlying the faulted Plio-Pleistocene sediments. The other is a broad undulation of a few kilometers in a half-wave length across the fault trace (Fig. 12). This undulation seems to reflect the elastic dislocation of the crust due to the movements of the Tachikawa fault.
著者
鈴木 毅彦 村田 昌則 大石 雅之 山崎 晴雄 中山 俊雄 川島 眞一 川合 将文
出版者
日本第四紀学会
雑誌
第四紀研究 (ISSN:04182642)
巻号頁・発行日
vol.47, no.2, pp.103-199, 2008-04-01 (Released:2009-04-25)
参考文献数
36
被引用文献数
2 2

立川断層の活動史を明らかにするため,4本のコアと狭山丘陵を調査した.狭山丘陵に産出するテフラSGOはMTB1・武蔵村山コア中のテフラに対比される可能性があり,同じくSYG(1.7 Ma)はMTB1・武蔵村山コア中のテフラに,箱根ヶ崎テフラ群(約2.0 Ma)は武蔵村山・MTB2コア中のテフラに対比された.また,Ebs-Fukuda(1.75 Ma)がMTB1コア中に,Kd44(1.968~1.781 Ma)が武蔵村山・瑞穂コア中に,Tmg-R4(2.0 Ma)がMTB2コア中に検出された.三ツ木地区においては,SYG層準が約126mの北東側隆起の変位を受けている.SYGと箱根ヶ崎テフラ群の変位量には累積はなく,立川断層は2.0~1.7 Maの間は活動していなかった.断層は南東・北西セグメントからなる.従来,地下でのみ認定された瑞穂断層は北西セグメント南東部であり,両セグメントは約1.5kmの区間を並走している.南東セグメント内では北西端部ほど累積変位量が小さいが,並走する北西セグメントの累積変位量を加味すれば,断層全体では南東セグメント北西端で累積変位量は急減しない.
著者
田村 糸子 高木 秀雄 山崎 晴雄
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.116, no.7, pp.360-373, 2010-07-15 (Released:2010-11-11)
参考文献数
54
被引用文献数
11 13

南関東の千葉県銚子地域から東京都江東区,神奈川県鎌倉市,愛川町にかけて分布する上総層群相当層に見出された,ざくろ石を多量に含むという特徴を持つテフラ層について,記載岩石学的特徴,ざくろ石の化学組成,テフラ層の層序学的位置づけなどを検討し,これらのテフラ層が明確に対比されることを示した.そして,ざくろ石の粒径の傾向などから,その給源火山が丹沢に求められることを明らかにした.このざくろ石テフラ層を丹沢-ざくろ石軽石層(Tn-GP)と呼ぶ.Tn-GPの堆積年代は,各地における生化石層序,テフラ層序,古地磁気層序などから,およそ2.5 Maと推定される.ざくろ石を多量に含む極めて特徴的なTn-GPは,今後,南関東の各地の更新統で見出される可能性が高く,新しい層序区分におけるP/P境界付近,あるいは黒滝不整合の時代の指標テフラとして貴重な時間面を提供し,関東平野の都市基盤解明に寄与すると期待される.
著者
山崎 晴雄
出版者
一般社団法人 日本原子力学会
雑誌
日本原子力学会誌ATOMOΣ (ISSN:18822606)
巻号頁・発行日
vol.55, no.6, pp.322-325, 2013 (Released:2019-10-31)
参考文献数
7

東京西郊の主要な活断層である立川断層の調査では,人工物を断層が繰り返しずれた跡である断層破砕帯と見誤るという事態が生じた。その原因について検討し,大地震の際,地表に現れる地表地震断層の活動様式などに誤解と思いこみがあったことを指摘した。そして,誤解を防ぐために,地表地震断層やその繰り返しの結果である活断層についての解説を行った。活断層は将来,大地震を引き起こす可能性があり,それを防災に利用するためには,地表地震断層の挙動を予測しなければならないが,そこには知識等の不足により誤解や思いこみが入る余地が大きくなる。このことを理解して冷静に活断層等に対応する必要がある。
著者
山崎 晴雄 水野 清秀
出版者
Japan Association for Quaternary Research
雑誌
第四紀研究 (ISSN:04182642)
巻号頁・発行日
vol.38, no.6, pp.447-460, 1999-12-01
被引用文献数
3 2

国府津・松田断層の地震テクトニクス上の位置づけに関しては,現在二つの異なる見解が示されている.一つは,相模トラフ内のセグメントとは独立に活動し,丹沢山地や大磯丘陵を持ち上げる大磯型地震を引き起こすというものである.もう一つは,関東地震を200~300年ごとに引き起こすプレート境界断層から分岐した副断層の一つであり,関東地震と連動することなしに大地震を起こすことはないという考えである.これを検証するため,断層崖の麓で5個所のトレンチ発掘調査を行い,最新の断層活動史を復元した.完新統に明瞭な断層変位は認められなかったが,地辷りや崩壊堆積物から3,000年間に4ないし5回のイベントが識別された.このうち,大規模なイベントは約3,000年前の1回だけで,これが同断層の活動を示すと考えられる.ほかの小規模なイベントは,相模トラフで発生した大地震の可能性があるが,その頻度は数百年という短い間隔ではない.
著者
奥村 晃史 下川 浩一 山崎 晴雄 佃 栄吉
出版者
公益社団法人 日本地震学会
雑誌
地震 第2輯 (ISSN:00371114)
巻号頁・発行日
vol.46, no.4, pp.425-438, 1994-03-14 (Released:2010-03-11)
参考文献数
25
被引用文献数
9 19

The middle section of the Itoigawa-Shizuoka Tectonic Line (Middle ISTL) is an active fault system that extends NW-SE for 50km from Matsumoto to Kobuchizawa, in central Japan. The Middle ISTL is characterized by high average slip-rate reaching 8 to 10mm/yr during the Late Pleistocene and Holocene. This is one of the highest slip-rate reported from active faults on land in Japan. Empirical relation between slip-rate and recurrence time indicates that the Middle ISTL may rupture more than once a thousand year. The previously known recurrence time estimates of 3500 to 5000 years were significantly longer than the expected recurrence time. The last faulting event on the Middle ISTL most likely occurred in 841 A. D. according to historic record and paleoseismological works. Since the elapsed time is about 1152 years, the estimation of recurrence time is critical to evaluate the potential of next earthquake. In order to know the history of recent faulting events, we excavated the Gofukuji fault, the northernmost segment of the Middle ISTL at Namiyanagi, south of Matsumoto. Investigation of 6 trenches, 3 test pits and topography around the trenches brought following results. The ages of three most recent faulting events are 445-1386 A. D., 150-334 A. D., and 839-189 B. C. The recurrence time is between 111 and 1236 years. Assuming the correlation of the last event with the 841 A. D. event, the recurrence time is estimated to be 338 to 1172 years. Average recurrence interval in this case ranges 515 to 840 years. The elapsed time of 607 to 1152 years is probably longer than the recurrence time. The average slip rate of the fault since c. a. 6000 B. C. is 9.4±4.5mm/yr left-lateral. The left-lateral coseismic slip during the last event is estimated as 7.5±1.5m.
著者
山崎 晴雄 佃 栄吉 奥村 晃史 衣笠 善博 岡田 篤正 中田 高 堤 浩之 長谷川 修一
出版者
日本地質学会
雑誌
地質学論集 (ISSN:03858545)
巻号頁・発行日
no.40, pp.129-142, 1992-12-15
被引用文献数
6

中央構造線(MTL)は西南口本を南北に二分する主要な地質構造線である。この断層は第四紀における日本で最大級の右横ずれ活断層でもある。その活発な活動度にも拘らず, MTLに沿っては歴史地震の発生は知られていない。長期的な地震予知や災害アセスメントに有効な最近の地質時代における断層の運動史を知るため, 1988年の夏中央構造線活断層系の一部である西条市近傍の岡村断層でトレンチ発掘調査を行なった。5つの小トレンチとそれらを繋ぐ細長い溝で構成される調査トレンチでは, 更新世末から歴史時代までの5つの地層ユニットと, それらの顕著な断層変位が認められた。各ユニットの堆積時期は地層中に含まれる有機物試料の^<14>C年代と土器片の考古学的編年によって決定された。断層は2000年前〜4世紀に堆積したIIIb層を切り, 7世紀以降に堆積したIIIc層に覆われるので最終活動時期は4〜7世紀と推定された。この値は1984年に行なわれた同じ断層の発掘調査結果と一致する。また, これ以外の断層活動時期も地層の不整合や変形構造に基づいて識別された。
著者
山崎 晴雄 鈴木 毅彦
出版者
首都大学東京
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

海成段丘上に位置する孤立した短い活断層の成因を検討するため、日本各地の当該断層について、断層地形の特徴、運動様式、地質構造、地震活動等を考察した。その結果、1.沖合に存在する大規模な逆断層のバックスラストと、2.海岸沿いの基盤地質構造が、遠方の大地震や過去の環境条件の変化による応力集中によって再活動したもの、の2タイプの断層があることが判った。何れも起震断層として活動する可能性は考えにくい。
著者
田村 糸子 水野 清秀 宇都宮 正志 中嶋 輝允 山崎 晴雄
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.125, no.1, pp.23-39, 2019-01-15 (Released:2019-04-15)
参考文献数
116
被引用文献数
9 12

房総半島に分布する上総層群は,層厚3000mに達する下部~中部更新統の前弧海盆堆積物である.古くから多くの層序学的研究が行われ,日本の海成更新統の模式層序である.また500層を超える多くのテフラが挟在され,上部の笠森層から下部の黄和田層まで詳細なテフラ層序が確立されている.多数の広域テフラ対比も報告され,日本列島の更新世テフラ編年上,重要である.本論では,現在までに明らかにされた上総層群の広域テフラをまとめ,約0.4Ma~2Ma間の20層を超える広域テフラを示した.そして黄和田層中のテフラ層序に関して,ダブルカウントや上下逆転などの問題点を指摘した.また報告の少なかった上総層群下部の大原層,浪花層,勝浦層において,新たに多数の細粒ガラス質テフラを記載し広域対比を検討した.その結果,Bnd2-O1(2.1Ma),Fup-KW2(2.2Ma)の2層の広域テフラを新たに見出した.これらのテフラ対比から,上総層群基底の堆積年代が2.3Maを遡る可能性を示した.
著者
山崎 晴雄 田村 糸子
出版者
首都大学東京
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

黒滝不整合は房総半島で鮮新・更新統上総層群の基底に認められる不整合である。その成因に関しては,構造運動説や海底地すべり説など様々な見解が検討されてきたが明確な答えは得られていない。本研究では不整合を覆う上総層群中の広域テフラの対比・編年を通じて、各地の不整合形成時期を明らかにした。その結果、房総の上総層群基底の堆積時期は3.2Ma ~ 1.9Maに及び、三浦半島には不整合が存在しないことが分かった。これから、黒滝不整合は,2.3~1.9Ma頃に局地的な海底地すべりが、順次発生した結果と考える。
著者
上本 進二 大河内 勉 寒川 旭 山崎 晴雄 佃 栄吉 松島 義章
出版者
日本第四紀学会
雑誌
第四紀研究 (ISSN:04182642)
巻号頁・発行日
vol.32, no.1, pp.41-45, 1993
被引用文献数
1

鎌倉市長谷小路周辺遺跡において, 14世紀前半 (鎌倉時代後期~南北朝時代初期) に由比ヶ浜砂丘地に築かれた半地下式の建物の跡から, 13世紀から14世紀前半頃 (鎌倉時代初期~南北朝時代初期) 形成されたと考えられる噴砂の跡を検出した. 噴砂は砂層に含まれていた土器を巻き込んで約1m上昇して, 当時の地表に噴出している. また, 噴砂の流出と並行して16cmの落差を伴う地割れも形成されている. この噴砂は『吾妻鏡』や『北条九代記』に見られる地震記録から, 1257年 (正嘉元年) あるいは1293年 (永仁元年) の地震によって形成されたと思われる. とくに1257年の地震では, 鎌倉の各地で噴砂が発生した記録が『吾妻鏡』にあるので, 1257年の地震による噴砂と考えるのが適当であろう.
著者
松田 時彦 山崎 晴雄 中田 高 今泉 俊文
出版者
東京大学地震研究所
雑誌
東京大學地震研究所彙報 = Bulletin of the Earthquake Research Institute, University of Tokyo (ISSN:00408972)
巻号頁・発行日
vol.55, no.3, pp.795-855, 1981-03-07

The Rikuu earthquake (M = 7. 2) occurred in the Mahiru Mountains in Tohoku district on 31 August 1896. Associated with the earthquake, reverse faults appeared on the surface along the western and the eastern feet of the Mahiru Mountains (Table 1 and Fig. 1), which are known as Senya and Kawafune earthquake faults (YAMASAKI, 1896), respectively. This was the largest on-land surface faulting of reverse fault type among events in historical time in Japan. These surface faults were re-studied.
著者
田村 糸子 山崎 晴雄
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.110, no.7, pp.417-436, 2004 (Released:2005-01-07)
参考文献数
78
被引用文献数
18 26

金沢から富山にかけて分布する鮮新—更新統, 北陸層群に挟在するテフラ層序を明らかにし, 30層のテフラ層を記載した. 本地域に分布する釣部1, 砂子谷1, 砂子谷2, 寺町, OL2a, MT2・Chk, O1, O2, O3, ptの各テフラ層は, その記載岩石学的特性から, Ya-4, 坂井・Ya-5, 小鈴谷 (4 Ma), 大田-ZnP (3.7 Ma), T2, 谷口 (2.2-2.3 Ma), 坂東2 (2.1 Ma), 恵比須峠-福田 (1.75 Ma), 大峰-SK110 (1.65 Ma), 上宝 (0.6 Ma) の各テフラ層に対比される. この対比から大桑層中部が鮮新—更新世境界層準であり, 大桑層の下限は2.3 Maより古くなることが明らかとなった. そして高窪層上部の堆積年代は3 Ma頃で, 従来考えられていた長時間に及ぶ無堆積状態は存在しないことが示された. また富山平野東部の呉羽山礫層の堆積年代から, 飛騨山地は, 後期鮮新世には隆起を開始していたことが明らかとなった.
著者
松田 時彦 山崎 晴雄 中田 高 今泉 俊文
出版者
東京大学地震研究所
雑誌
東京大学地震研究所彙報 (ISSN:00408972)
巻号頁・発行日
vol.55, no.3, pp.795-855, 1981-03-07

The Rikuu earthquake (M = 7. 2) occurred in the Mahiru Mountains in Tohoku district on 31 August 1896. Associated with the earthquake, reverse faults appeared on the surface along the western and the eastern feet of the Mahiru Mountains (Table 1 and Fig. 1), which are known as Senya and Kawafune earthquake faults (YAMASAKI, 1896), respectively. This was the largest on-land surface faulting of reverse fault type among events in historical time in Japan. These surface faults were re-studied.
著者
田村 糸子 山崎 晴雄 水野 清秀
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.111, no.12, pp.727-736, 2005 (Released:2006-04-05)
参考文献数
52
被引用文献数
4 12

中央日本において,近畿東海地域から北陸,新潟,房総地域にかけて分布する前期鮮新世の広域テフラ-坂井火山灰層とその相当層の広域性を検討した.坂井火山灰層とその相当層は,発泡のよい火山ガラスからなり極少量の黒雲母を含む.火山ガラスの化学組成がK2Oに富みCaOに乏しく,特に微量成分においてBaやSrが著しく乏しいという特徴を示す.堆積年代は,各地域の挟在層準において,Znp-大田火山灰層の下位,浮遊性有孔虫化石N.19帯上部,Gilbert ChronのCochiti Subchronに近接した層位等から,およそ4.1 Maと推定される.坂井火山灰層とその相当層の給源は,粒径や層厚の変化,火山ガラスの化学組成の特徴から,近畿地方より西方と推定され,北九州から山陰にかけての鮮新世アルカリ火山岩の活動と関係する可能性がある.坂井火山灰層とその相当層は,極めて特徴的な火山ガラスの化学組成を示すことから,今後,他の地域でも見出される可能性が高く,前期鮮新世の重要な鍵層となると予想される.
著者
山崎 晴雄 長岡 信治 山縣 耕太郎 須貝 清秀 植木 岳雪 水野 清秀
出版者
首都大学東京
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2004

鮮新・更新世に噴出した火山灰層の対比・編年を通じて、日本各地の後期新生代堆積盆地の層序・編年を行った。これを利用して、関東平野や北陸地域、宮崎平野などの古地理変遷を明らかにした。また、洞爺火山や浅間火山などの活動史や地形変化を示した。これらにより以下の成果を得た。1.中央日本(大阪〜関東)において1.3Maの敷戸-イエロ-1テフラの存在確認を初めとして、4〜1Ma(百万年)の間に少なくとも12枚の広域指標テフラの層序及び分布を明らかにした。これにより、10〜50万年ほどの間隔で時間指標が設定でき、本州に分布する鮮新・更新世盆地堆積物編年の時間分解能や対比精度が著しく向上した。2.本研究で発見した坂井火山灰層(4.1Ma)は現在日本で知られている最古の広域テフラである。アルカリ岩質の細粒ガラス質火山灰で、その岩石記載学的特徴から同定対比が比較的容易であり、今後、日本列島の古環境復元に活用できる重要な指標テフラとなろう。3.関東平野の地下についてボーリングコア中の火山灰と房総半島や多摩丘陵に分布する火山灰の対比が進み、平野の地下構造、深谷断層-綾瀬川断層の活動史、テフラ降下時の古地理などが判明した。4.関東平野の地下構造とテフラ編年から、この地域の活断層の一部は15Maの日本海開裂時に形成された古い基盤構造が、1Ma以降の前〜中期更新世頃に新しい応力場で再活動を始めたものであることが明らかになった。5.北海道各地のテフラ情報が集積され、洞爺火山の活動史などが明らかになった。6.九州の火山活動史がとりまとめられると共に、テフラを用いて宮崎平野の地質層序、地形面の編年が詳細に調査され、鮮新・更新統の層序が明らかになった。7.テフラを利用して浅間火山の更新世活動史、泥流流下機構、周辺の地形発達との関係が明らかになった。8.本研究で改良した広域テフラを用いた地層の編年・対比技術はエチオピアの人類遺跡の調査・研究にも活用された。