著者
田畑 治
出版者
愛知学院大学
雑誌
愛知学院大学論叢. 心身科学部紀要 (ISSN:18805655)
巻号頁・発行日
vol.3, pp.77-87, 2008-03

本調査研究は,5・17に大学キャンパス近辺で発生した発砲立てこもり事件に伴う,学生の生活状況,通学の不便さ,心身の調・不調の認知とそれらへの対応,さらに大学がとった臨時休講措置に対する要望などについてのアンケート調査(項目数22項目)を実施した.調査への参加者は,(1)群:日進キャンパスの「臨床心理学」受講学生N=100,(2)群:楠元キャンパスの「臨床心理学」受講学生N=148であった.調査時期は,事件発生から4〜7日後であった.結果は,(1)群が(2)群に比べて,全ての項目に0.1%〜5%水準で有意差が見られた.(1)群は,生活状況に不自由・不都合,通学への不便さ,心身の不調(食欲不振,睡眠不調,不安など)を経験したことが判明した.また事件熟知の手段に,友人間の対話や携帯電話での連絡,大学のWeb Campus掲示板,テレビのニュース報道などで知ったことが判明した。"こころの問題"は,概して深刻な問題は伺えなかったが,今後さらに追跡的に調査をすることが指摘された.
著者
藤原 勝紀 田畑 治 岡田 康伸 皆藤 章 一丸 藤太郎 下山 晴彦
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2001

こころの問題が複雑化・深刻化している現代において、臨床心理士をはじめとする専門家、心理臨床家には、高度な専門性が求められている。心理臨床家の養成の難しさは、内面的な心と心の使い方、あるいは全人格に関わる生き方について、いわゆる教育指導が可能かという本質的な課題を提起する点にある。直接の人間関係による臨床実践をつうじて生成する学問、学問を基盤に臨床実践を行う心理臨床家、という学問と臨床実践の相互不可分な専門性の中で、従来の知識伝授型の教育過程とは異なる「臨床実践指導」の在り方に焦点を当てることになった。そこで、臨床心理士の養成と資格取得後の教育研修、ならびに臨床実践指導者の養成に関する教育訓練、教育研修の仕組みや在り方と、その指導内容や方法について検討がなされ、大学院附属心理教育相談室など臨床実践指導機関の役割や位置づけ、大学院教育カリキュラムにおける臨床実践指導の位置と在り方を討議する中、新しい臨床実践指導のパラダイム(従来の「講義-演習-実習」から「実習-演習-講義」への変換)が示された。これは、高度専門職業人として不可欠な倫理教育も含んでおり、臨床実践に根ざしたボトムアップ型の重要性が認識されることになった。このような技術だけではない臨床実践技能の質をどう担保し高めるかという点が、心理臨床家の養成において焦点であり、かつ臨床心理士有資格者にとっては生涯学習的なテーマである。本研究を通して、臨床実践指導の本質が問い直され、その特徴として、指導を受ける側と指導者側との双方向的な視点の重要性も明らかにされた。なお、京都大学大学院教育学研究科では、平成16年度から「臨床実践指導者養成コース」という独立した博士課程が設置され、「臨床実践指導学講座」が新設される運びとなっている。
著者
田畑 治
出版者
千葉大学
雑誌
千葉大学教育学部研究紀要 (ISSN:05776856)
巻号頁・発行日
vol.20, pp.33-50, 1971-07-31

今日,教育は効果があるとかないとかといったことを,一般的に議論することは不毛であると同様に,カウンセリングや心理療法が効果をもたらすか否かについて,一般的に議論するのも意味がない。教育や治療において問題になるのは,「どのような人(教育者やセラピスト)が,どのような人(被教育者やクライエント)に対して,どのような目標・手段,あるいは条件でかかわるとき,どのような結果がもたらされるか」ということである。このことを,カウンセリングや心理療法にあてはめていえば,「セラピストとクライエントとが,どのようにかかわりあうとき,どのような変化が生じるか」ということである。すでに別のところで論じたように,心理療法の定義は,人によってまちまちである。しかし,セラピストとクライエントとが"相手"(Partner)としてかかわりあうというのが,心理療法の現代的意義である(田畑,1971)。ところで,心理療法の効果判定は,セラピストとクライエントとの両者の心理治療的活動にもとづいて起こるところの,クライエントの症状の軽減・除去,あるいは人格・行動の変容を,客観的に把握するために行なわれる。しかし,かかる効果を客観的に測定し,評価しようとする側面や方法は,多種多様である。なぜならば,治療による変容が,身体的因子,人格的因子,社会的因子,さらには文化的因子をも含み,多次元的であるからである。本論文は,心理療法によってもたらされる"結果的側面"に関する評価研究に,方法論的省察を加えようとするものである。すなわち,ここでは主題に関して,(1)心理療法の効果とは何か,(2)治療効果の評価法,(3)治療的人格変容の性質,(4)統制群法による効果判定の厳密化,(5)わが国の現状での問題点,の5点について考察をすすめる。それによって,心理療法の効果判定の評価研究の可能性と限界を明確にしたい。
著者
田畑 治 伊藤 義美
出版者
名古屋大学
雑誌
名古屋大學教育學部紀要. 教育心理学科 (ISSN:03874796)
巻号頁・発行日
vol.27, pp.89-97, 1980-12-15

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著者
田畑 治
出版者
千葉大学
雑誌
千葉大学教育学部研究紀要 (ISSN:05776856)
巻号頁・発行日
vol.20, pp.21-32, 1971-07-31

異なる種々の治療体系からみた心理治療関係の共通点と相違点を,比較検討することを目的として,9つの治療体系(精神分析,来談者中心療法,役割療法,支持的療法,学習理論的療法,実存分析・ロゴテラピー,森田療法,内観法,催眠療法)をとりあげた。その結果,それら9つの治療体系における治療の目標・理想的人格像,セラピストの任務,クライエントの任務,心理治療関係そのもの,さらにクライエントの型,の5点について,それぞれの特徴をみい出し,心理療法と心理治療関係の今日的意義を考察した。