著者
高橋 麻衣子 鈴木 啓司 山下 俊一 甲斐 雅亮
出版者
Journal of Radiation Research 編集委員会
雑誌
日本放射線影響学会大会講演要旨集
巻号頁・発行日
vol.2008, pp.118, 2008

哺乳類細胞における主要なDNA損傷修復経路として非相同末端結合修復(NHEJ)と相同組換え修復(HR)が知られ、NHEJは主にG1期で、HRはS期からG2期で働くことが知られている。最近、NHEJ修復経路の中にさらに複数の経路が存在し、少なくともDNA-PKcs/Kuに依存した経路とartemisを必要とする2経路があることが明らかになってきた。しかしながら、これら修復経路がどのような役割分担をしているのかは依然不明である。そこで本研究では、制限酵素を細胞内に直接導入して同じ形状のDNA切断末端を誘導するという系を用い、DNA切断末端の構造依存的な修復経路の役割分担を検討することを目的とした。G0期に同調した正常ヒト二倍体細胞に、制限酵素(Pvu II、100 U)をエレクロポレーション法を用いて細胞内に導入し、DNA二重鎖切断の誘導を抗53BP1抗体を用いた蛍光免疫染色法により検討した。その結果、まず制限酵素導入後1時間の段階で、約90%の細胞の核内に53BP1フォーカスが誘導されるのを確認した。その内、核全面に分布するタイプや計測不能な多数のフォーカスを持つ細胞が60%程度存在し、残りの約20%の細胞は、3〜20個程度が核内に散在するフォーカスのタイプ(タイプIIIフォーカス)であった。制限酵素導入後時間が経つにつれてタイプIIIフォーカスを持つ細胞の割合が増加し、DSBの修復が確認できた。次に、artemis依存的な修復経路を阻害するために、ATM阻害剤KU55933を処理した結果、タイプIIIフォーカスを持つ細胞の割合は処理の有無により顕著な差はみられなかったが、artemisを阻害した細胞では核あたりのフォーカス数はより多かった。以上の結果から、ブラントエンドタイプの切断末端が、その修復にartemisの活性を必要とすることが明らかになった。
著者
甲斐 雅亮 三浦 哲朗 小橋 一弥 大倉 洋甫
出版者
The Pharmaceutical Society of Japan
雑誌
Chemical and Pharmaceutical Bulletin (ISSN:00092363)
巻号頁・発行日
vol.29, no.4, pp.1115-1120, 1981-04-25 (Released:2008-03-31)
参考文献数
16
被引用文献数
31 32

A new fluorimetric method for the precise and rapid determination of guanidino compounds with benzoin is described. This is based on their reaction in an aqueous potassium hydroxide solution with benzoin (dissolved in methylcellosolve), in the presence of β-mercaptoethanol and sodium sulfite, while the pH of the reaction mixture is maintained at 9.2 after the reaction. This method requires heating at 100° for only 10 min. The excitation and emission maximum wavelengths of the fluorescence from these compounds are at around 325 and 435 nm, respectively. The method is simple, selective for guanidine and monosubstituted guanidino compounds (including peptides with one or two arginyl residues) and sensitive ; almost all the compounds can be determined at concentrations as low as 40-170 pmol/ml.
著者
甲斐 雅亮 坂本 靖浩 三浦 哲朗 大倉 洋甫
出版者
公益社団法人 日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.35, no.3, pp.329-332, 1986-03-05 (Released:2009-06-30)
参考文献数
7
被引用文献数
2 2

A high performance liquid chromatographic method is described for the determination of antipain which is a protease inhibitor and also a possible therapeutic drug for muscular destrophy. Antipain was converted to the fluorescent derivative by reaction with benzoin, a fluorogenic reagent for guanidino group. The derivative was then determined on a reversed phase column with isocratic elution within 15 min by using fluorescence detector. The detection limit of antipain in mouse serum was 0.42μg/ml, which corresponds to the amount of 240 pg (400 fmol) in an injection volume of 100μ1 at a signal to noise ratio of 2. The calibration graph for the compound was linear up to at least a concentration of 30 μg/ml in the serum. The proposed method was simple, rapid and sensitive enough to permit the quantification of antipain in as little as 40 μl of mouse serum dosed with the compound.
著者
甲斐 雅亮
出版者
長崎大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2002

本研究課題の目的は、DNA検出用の新たな超高感度プローブを創製することである。研究代表者らは、昨年度の研究において、多糖分子に、水溶性を損なうことなく低分子量の化学発光物質であるルミノールまたはイソルミノールを多数結合させる強発光性高分子の合成手法を確立した。本年度は、平均分子量200万のデキストラン分子[(Glc)_<12300>]に、まずルミノール(Lu)、又は、イソルミノール(Ilu)を結合させた(Ilu)_<3700>-(Glc)_<1230>及び(Lu)_<1900>-(Glc)_<12300>を合成し、分光学的測定値を比較した。その結果、両高分子の蛍光強度は遊離のルミノールやイソルミノールの約60-80倍の強度しか得られなかったが、化学発光強度は、(Ilu)_<3700>-(Glc)_<12300>では遊離のイソルミノールの7700倍を示し、(Lu)_<1900>-(Glc)_<12300>では遊離のルミノールの210倍を示した。このことから、デキストランに導入する低分子量化学発光物質としてはイソルミノールの方が優れていることが示唆された。また、溶液中のこれらの発光性高分子の化学発光の検出感度は、蛍光のそれよりも約100倍高く、約2×10^<-16>molの検出限界(S/N=2)を示した。次に、イソルミノールとビオチン(Bio)の結合数をコントロールした3種の化学発光性デキストラン分子、(Ilu)_<850>-(Bio)_<330>-(Glc)_<12300>、(Ilu)_<600>-(Bio)_<660>-(Glc)_<12300>及び(Ilu)_<400>-(Bio)_<1100>-(Glc)_<12300>を合成した。DNAのハイブリダイゼーションアッセイ用のナイロン膜にスポットした時、等モルのそれらの化学発光強度は、分子中のイソルミノールの結合比にほぼ相応していた。さらに、これらの化学発光性デキストランは、分子中のビオチンを介して膜上のアビジンと結合して、特異的に化学発光スポットを与えた。以上のことから、本研究で開発した化学発光性デキストラン分子は、アビジンに特異的に結合し、超高感度な発光プローブとしての適用が期待できる。