著者
疋田 努
出版者
日本動物分類学会
雑誌
タクサ:日本動物分類学会誌 (ISSN:13422367)
巻号頁・発行日
vol.47, pp.1-9, 2019-08-31 (Released:2019-09-12)
参考文献数
30

In the studies of reptiles, I started the study of phylogeny and biogeography of the scincid genus, Plestiodon (formerly Eumeces) in the East Asian Islands by cladistic analysis and neighbor joining method based on morphological data. Then our laboratory has continued to study this group genetically using allozymes and DNA data. We revealed the process of the speciation of the genus in Japanese and Ryukyu Archipelagos. During the studying this group, we described five cryptic species. While studying the taxonomy and phylogeny of reptiles, I found that the cladistic taxonomy has several problems. I proposed the gradistic classification system showing cladistic relationship by putting a tag of the descendant grade within the ancestral grade.
著者
太田 英利 藤井 亮 岡本 卓 疋田 努
出版者
日本爬虫両棲類学会
雑誌
爬虫両棲類学会報 (ISSN:13455826)
巻号頁・発行日
vol.2004, no.2, pp.128-137, 2004-09-30 (Released:2010-06-28)
参考文献数
29

Two reptiles, Mauremys mutica kami and Hemiphyllodactylus typus typus, are newly recorded from Haterumajima, the southernmost island of the Yaeyama Group, southern Ryukyus, on the basis of voucher specimens. Of these, M. m. kami was found in large number, and this strongly suggests that this freshwater turtle has already established a breeding population on this island. With respect to H. t. typus, only one individual, juvenile female, was found. However, considering possible parthenogenetic nature of its East Asian assemblages, this gecko may have also established on this island already. Besides these new records, our survey yielded additional specimens of Lepidodactylus lugubris, another parthenogenetic gecko non-native to Haterumajim Island. Characteristics of the dorsal pattern in these specimens indicate that the Haterumajima assemblage belongs to so-called “clone C” like assemblages of this gecko from all other islands of the Ryukyus exclusive of the Daito Group. Records of reptile species from this island are reviewed and problems requiring future investigations are clarified.
著者
疋田 努
出版者
日本爬虫両棲類学会
雑誌
爬虫両棲類学会報 (ISSN:13455826)
巻号頁・発行日
vol.2000, no.2, pp.99-111, 2000-10-10 (Released:2010-06-28)
参考文献数
22
著者
Ekgachai JERATTHITIKUL Naratip CHANTARASAWAT 矢後 勝也 疋田 努
出版者
THE LEPIDOPTEROLOGICAL SOCIETY OF JAPAN
雑誌
蝶と蛾 (ISSN:00240974)
巻号頁・発行日
vol.64, no.4, pp.132-139, 2013-12-25 (Released:2017-08-10)

シジミチョウ科の幼虫は,アリと単なる共存から片利共生,相利共生,また共生の中でも特定のアリとしか結び付かない絶対的共生から多くの種のアリと関係する任意的共生,さらには寄生(アリ幼虫の捕食)に至るまでの広範な関係を持つことが知られる.一部ではアリと共生する半翅目を捕食したり,その分泌物を食して成育するものもいる.これらのアリに襲われずに共生等の関係を続けられる性質は好蟻性(myrmecophily)と呼ばれる.そしてアリとの相互関係を維持できる基盤には,アリの制御を可能とする化学的,音響的あるいは視覚的信号をつかさどる好蟻性器官(myrmecophilous ograns)の存在が重要となる.シジミチョウ科ヒメシジミ族に属するクロツバメシジミは,国内では東北地方を除く本州から四国,九州にかけて局地的に分布するシジミチョウ科の一種である.本種の幼虫もアリとの関連性がすでに知られているが,その好蟻性や好蟻性器官に関する詳しい情報はこれまであまり知られていない.2009年から2011年にかけて,筆者らは九州地方の9カ所において本種の調査を行い,幼生期を含む本種を観察,採集した他,幼虫の好蟻性や随伴するアリ類などに関するいくつかの知見も得た.採集した幼虫の体表に見られる好蟻性器官に関してSEMを用いて調べたところ,一般的な共生関係が知られるシジミチョウ科幼虫が持つ基本的な3つの好蟻性器官,すなわち蜜腺(DNO=dorsal nectary organ),伸縮突起(TOs=tentacle organs),PCOs(Pore cupola organs)が認められた.蜜腺は腹部第7節の背中域に見られる横長に開口した大きな器官で,ここからアリが好むアミノ酸や糖類を含む分泌物を多量に放出することが知られる.伸縮突起は腹部第8節の背側域に備える一対の伸縮可能な筒状器官で,本種では先端部周辺に20前後の羽毛状の突起を備えていた.この器官からアリの行動を制御する揮発性物質が放出されるとも言われるが,単に物理的(あるいは視覚的)に刺激をアリに与える器官かもしれず,詳しい機能は不明である.PCOsはドーム形または多少凹んだレンズ状の上部を備えた円柱形の微小器官で,体表全体に散在するが,特に本種では蜜腺と気門の周囲に多く見られた.本種のPCOsは側面上部に4〜8つの三角状の短い突起を有し,特にこの形状はツバメシジミ類の近縁種Cupido minimusと酷似し(Baylis and Kitching,1988),その類縁性がうかがえる.この器官の表面からアリの体表物質に類似した組成の炭化水素やアミノ酸などが検出されるために分泌器官の一つとされる.その他の好蟻性器官として樹状突起(dendritic setae)が認められた.樹状突起はDNOの周辺や気門の周囲,前胸背楯板上などによく生じるが,本種ではDNOの両側の周囲のみに限られていた.DNOやTOsを持たない好蟻性の種の体表上にも散見されることや,物理的な刺激に対する受容器として機能することなどから,アリを感知する重要な感覚毛とされる.好蟻性器官以外の注目すべき構造として,体表全体に散在する剌毛が通常の針状の他にやや扁平なしゃもじ状となるものも少なからず見られた.この形状は好蟻性との関連性によるものと考えられる.また,ソケットの多くは星形をしていたが,これはヒメシジミ族に広く見られる形状である.さらに今回の調査では,幼虫に随伴するアリとしてルリアリ,ヒゲナガケアリ,ハダカアリ,ツヤシリアゲアリ,ミナミオオズアリ,オオシワアリ,トビイロシワアリの7種を記録した.このうちトビイロシワアリを除く6種は,本種の共生アリとして初記録の可能性がある.このように複数種のアリ類との関連が確認された結果から,おそらくクロツバメシジミの好蟻性"任意的共生関係"と考えられるが,今後は九州以外の本州から四国にかけての他地域での好蟻性や共生アリなどの調査も必要であろう.
著者
疋田 努 ダレフスキイ イリヤS.
出版者
日本爬虫両棲類学会
雑誌
爬虫両棲類学雑誌
巻号頁・発行日
vol.12, no.1, pp.10-15, 1987

ベトナム北部のタムダオから,1937年にBourretによって報告されたトカゲ属の1種,<i>Eumeces tamdaoensis</i>は,原記載後なんの報告も採集例もなく,しかも原記載の論文の入手が非常に困難なため,謎につつまれたトカゲとなっていた。このほど,原記載を入手し,さらにベトナム北部から新たに一個体の標本を得たので,本種について再記載を行った。また,従来<i>fasciatus</i>群の一員とされていたこのトカゲが,実際は<i>obsoletus</i>群と近縁であることがわかった。
著者
疋田 努 太田 英利
出版者
京都大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1995

台湾から琉球列島にかけて分布するアオスジトカゲ、イシガキトカゲ、オキナワトカゲの3種は小さい島々にまで広く分布し、種内の形態的な変異も知られている。泳動データからは,これら3種のうち八重山諸島のイシガキトカゲは台湾のアオスジトカゲよりも,沖縄諸島,奄美諸島のオキナワトカゲにより近縁であることが,示された.従来,八重山諸島の動物相は,沖縄諸島よりもむしろ台湾のものに近いと考えれており,この結果はこの地域の生物地理をどのように考えるかに大きな影響を与えるものとなった.また,トカラ列島の中之島,諏訪之瀬島,口之島からには,ニホントカゲ分布すると考えられていたが,これらがむしろオキナワトカゲに近いことが明らかとなった.それぞれの種内でも,島毎に大きな変異が認められた.まず,アオスジトカゲでは,尖閣列島の集団が台湾のものと大きく異なることがが示された.つぎにイシガキトカゲでは波照間島のものが他の八重山諸島のものと異なっていることがわかった.オキナワトカゲ集団は,従来基亜種のオキナワトカゲと奄美諸島亜種のオオシマトカゲに分けられてきたが,その地理的変異はもっと複雑で,さらに細分する必要があることが示された.形態的な形質では,とくに体色や模様の変異が認められ,体鱗列数等の計数形質にも地理的変異が認められた.しかし,これらの形態的な違いは変異の重なりがかなりあり,十分な識別形質とはならなかったが,島毎の傾向が明らかとなった.