著者
早川 智一 疋田 輝雄
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.57, no.2, pp.573-582, 2016-02-15

本論文では,HTML5とJavaScript関連技術とを用いた仮想Webブラウザ(以下,仮想ブラウザ)の提案を行う.仮想ブラウザの目的は,悪意のあるコンテンツを含むWebページ(以下,悪意のあるWebページ)から閲覧者を保護することにある.仮想ブラウザは,閲覧者が要求したWebページを外見が等価な画像に透過的に変換することで,悪意のあるWebページの脅威を低減させる.仮想ブラウザのネットワーク転送量や応答時間の評価結果は,仮想ブラウザが閲覧者の利便性を大幅に低下させることなく悪意のあるWebページの脅威を低減できることを示した.我々は,この評価結果から,仮想ブラウザが悪意のあるWebページから閲覧者を保護する有用な手段たりうるという結論を得た.
著者
三浦 真 疋田 輝雄
雑誌
全国大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.44, pp.83-84, 1992-02-24

並行プログラムにおいては,複数のプロセス(タスク)が,共有変数を通して,あるいはメッセージの交換によって,互いの間の通信と同期を行なう.さらに,各プロセスには優先度(prior-ity)が付与されているとする.(プロセスの優先度は現実的なシステムにおいて重要で,実時間処理の周期的なプログラムにおいては,短い周期のプロセスに高い優先度を与えるという方式を用いることが多い.)この状況のもとで,優先度の高いプロセスが低いプロセスに待たされるという優先度逆転(priority inversion)の現象が起ることが知られている.一例は,優先度の高いプロセスAが,低いプロセスCからのメッセージを待って停止(suspend)し,Cの優先度が低いため,Aが中間の優先度のプロセスBに追い越されてしまう状況である.これに対処するための方策がいくつか提案されている.ここでは,優先度逆転がどのような状況において起こるかを解析する.さらに,新しい対策法を提案する.(なお,優先度を整数で表わすものとし,値の大きいほど優先度が高いとする.)一般に,メッセージ交換方式のうちでも,いくつか種類がある.第一に,同期(synchronous)と非同期(asynchronous)の区別があり,受付けプロセスのキューには,同期方式の場合は呼出しプロセスが,非同期方式の場合はメッセージがはいる.さらに細かい区別として,キューが,あるかないか,その長さが1か限定長か不定長かがある.現在のAda(1983年規格)は同期方式で,キューは不定長である.優先度逆転の起る状況はこれらの通信・同期の方式によって異なる.ここでは単一プロセッサ・システムの下で考える.なお,プロセスの優先度と,プロセスのスケジューリングという二つの概念は,互いに独立したものである.ここではスケジューリングはもっとも単純なもので,その時点で実行可能な,待ち状熊(blocked)のプロセスの中の,最も優先度の高いものから一つ選んで実行するというものとする.プロセスの優先度に関する議論は並行処理一般に関わり,言語からは独立である.しかしこの話はこれまで主として,現在進行中のAdaの言語改定にからんで議論されている.我々は種々のインプリメントや実験をCおよびAdaの上で行なっている.現在のAdaでは,プロセスの優先度は,静的にプラグマによって与える.Ada 9xでは,スケジューリングの方針をユーザが選択できるエうにすること,優先度を実行時に変えられるようにすることなどが検討されている.
著者
上松陽介 疋田輝雄
雑誌
第75回全国大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.2013, no.1, pp.585-586, 2013-03-06

近年,Linked Dataのデータ量が増加し,そのデータの利用法が注目を集めている.Linked Dataには,BBC放送の番組情報ページの作成やDBpedia Mobileでの地図へのアノテーションに代表される様々な利用法があるが,我々は,Linked Dataにユーザから取得した興味に関する値と提案する計算手法を用いることで,従来の推薦手法よりもユーザの興味に即した情報の推薦が可能になると考える.本論文では,我々の提案手法と,評価のために作成したプロトタイプの映画推薦システムについて報告する.
著者
疋田 輝雄
雑誌
情報処理
巻号頁・発行日
vol.49, no.7, pp.728-735, 2008-07-15

コンピュータ科学カリキュラム標準J07-CSは,1997 年のJ97すなわち「大学の理工系学部情報系学科のためのコンピュータサイエンス教育カリキュラムJ97」の後継である.米国のコンピューティングカリキュラムコンピュータ科学CC2001CSを形式および内容の面から参考にし,これに多数の変更と追加を加えたものである.カリキュラム標準を規定するにはまず,コンピュータ科学知識体系CS-BOK-J 2007を規定する.知識体系は専門エリア,ユニット,トピックの3レベルからなる.専門エリア(area)は15分野からなり,さらに,エリアを構成する各ユニットは,トピックと,ユニットの学習成果からなる.エリアやユニットの内容は,米国案をもとにして,日本の技術および大学教育の実状と最新技術の動向を踏まえて多数の改変を加えた.個々の授業科目(course)はこの知識体系をもとにして,ユニットを組み合わせて構成する.今回のCS カリキュラム標準の目標は,J97の後継として,既存の理工系情報学科を想定することに加えて,国際的な整合性,日本の科学技術の特徴を活かすこと,および最新技術への考慮である.カリキュラム標準の提示形式の上でこれまでのJ97との違いは,米国版にならって,科目ではなく学問的な知識体系(Body of Knowledge)を最初に与えることと,コアユニットとして必修の項目を導入したことである.成果主義教育としての各ユニットにおける学習成果が設定されている.さらに,24の具体的な科目構成例が提示されている.