著者
白井 美穂 サトウ タツヤ 北村 英哉
出版者
法と心理学会
雑誌
法と心理 (ISSN:13468669)
巻号頁・発行日
vol.11, no.1, pp.40-46, 2011-10

本稿では、人々が凶悪犯罪に対面しながらも公正世界信念(Belief in a Just World)を維持するために有効な加害者の「非人間化方略」として、「悪魔化」と「患者化」の2つを挙げ、それぞれにおける思考プロセスの可視化を目指した。先行研究の結果から、加害者の非人間化が生じる凶悪事例(EVIL)とそうでない事例(BAD)について、参加者によって記述された判決文(死刑/無期)を、複線径路・等至性モデル(Trajectory Equifinality Model: TEM)を援用してまとめた。その結果、凶悪事例の加害者は両判決文において「一般的でない精神構造」を持つ者と仮定され、そこから派生した加害者の特性ラベリング(悪魔/患者)は、両判決の理由として機能していた。本稿の結果は、凶悪事例の加害者に対する死刑/無期判決を合理化・正当化する際、どちらを前提とした場合でも、人々が公正世界信念を維持できる知識構造を有していることを示すものである。
著者
白井 美穂 黒沢 香
出版者
法と心理学会
雑誌
法と心理 (ISSN:13468669)
巻号頁・発行日
vol.8, no.1, pp.114-127, 2009 (Released:2017-06-02)
被引用文献数
3

本研究では裁判員制度の枠組みから「専門家でない人々による量刑判断の要因」について、前科情報による効果を中心に、しかし今後の研究の土台として他要因についても多角的な検討を試みた。大学生及び社会人を対象とした2つの質問紙実験の結果から、量刑判断の主な要因としては被告人の再犯可能性や事件の悪質性の推測が挙げられ、また厳罰傾向と呼べる個人変数も重要な要因であることが示された。本研究でみられた主な前科情報の効果は、被告人に前科がある場合はより再犯可能性が高く推測され量刑も重くなったこと、また呈示事件が前科から長期間経過しておりかつそれらの事件内容が類似している場合に、事件の種類に関わらず量刑が最も重くなったことが挙げられるが、量刑判断と前科情報の関連は被告人についての情報呈示のあり方によって顕著となる可能性が示された。また本研究では性犯罪である強姦致傷も含め量刑判断において性差は一貫してみられなかったが、参加者の性別とJW得点の交互作用が厳罰傾向を媒介して量刑判断に関連したことを示し、間接的に量刑へ影響を及ぼし得ることを示した。
著者
白井 美穂 サトウ タツヤ 北村 英哉
出版者
法と心理学会
雑誌
法と心理 (ISSN:13468669)
巻号頁・発行日
vol.11, no.1, pp.40-46, 2011 (Released:2017-06-02)

本稿では、人々が凶悪犯罪に対面しながらも公正世界信念(Belief in a Just World)を維持するために有効な加害者の「非人間化方略」として、「悪魔化」と「患者化」の2つを挙げ、それぞれにおける思考プロセスの可視化を目指した。先行研究の結果から、加害者の非人間化が生じる凶悪事例(EVIL)とそうでない事例(BAD)について、参加者によって記述された判決文(死刑/無期)を、複線径路・等至性モデル(Trajectory Equifinality Model: TEM)を援用してまとめた。その結果、凶悪事例の加害者は両判決文において「一般的でない精神構造」を持つ者と仮定され、そこから派生した加害者の特性ラベリング(悪魔/患者)は、両判決の理由として機能していた。本稿の結果は、凶悪事例の加害者に対する死刑/無期判決を合理化・正当化する際、どちらを前提とした場合でも、人々が公正世界信念を維持できる知識構造を有していることを示すものである。
著者
荒川 歩 白井 美穂 松尾 智康 加藤 賢大
出版者
日本質的心理学会
雑誌
質的心理学研究 (ISSN:24357065)
巻号頁・発行日
vol.18, no.1, pp.263-273, 2019 (Released:2021-04-12)

インタビュイーの中には豊かで巧みな表現を行えるインタビュイーもいれば,あまり話さないインタビュイーも いる。有名な質的研究には,そのフィールドに熟知しているというだけではなく,研究者が引用したいと思うよ うな多くの点を話すことのできる人が関わっていることが多い。そこで,質的研究にとって重要な情報とはどの ような情報なのかを明らかにするために,本研究では学会賞を受賞した 4 つの質的研究を対象に分析を行った。 ほぼすべての引用にラベルを付けたところ,それらのラベルからは 6 つのカテゴリの存在が明らかになった。そ れは,「体験の具体的な説明」「自分(たち)なりの理解,解釈,意味づけ」「問題に直面した場面における自分 (たち)なりの対処」「俯瞰的説明」「異なる時間についての見解」「現実とずれるインタビュイー」である。これ らに基づき,「良いインタビュイー」の特徴と,質的研究の根拠の構造について議論した。
著者
白井 美穂 黒沢 香
出版者
法と心理学会
雑誌
法と心理 (ISSN:13468669)
巻号頁・発行日
vol.8, no.1, pp.114-127, 2009-10

本研究では裁判員制度の枠組みから「専門家でない人々による量刑判断の要因」について、前科情報による効果を中心に、しかし今後の研究の土台として他要因についても多角的な検討を試みた。大学生及び社会人を対象とした2つの質問紙実験の結果から、量刑判断の主な要因としては被告人の再犯可能性や事件の悪質性の推測が挙げられ、また厳罰傾向と呼べる個人変数も重要な要因であることが示された。本研究でみられた主な前科情報の効果は、被告人に前科がある場合はより再犯可能性が高く推測され量刑も重くなったこと、また呈示事件が前科から長期間経過しておりかつそれらの事件内容が類似している場合に、事件の種類に関わらず量刑が最も重くなったことが挙げられるが、量刑判断と前科情報の関連は被告人についての情報呈示のあり方によって顕著となる可能性が示された。また本研究では性犯罪である強姦致傷も含め量刑判断において性差は一貫してみられなかったが、参加者の性別とJW得点の交互作用が厳罰傾向を媒介して量刑判断に関連したことを示し、間接的に量刑へ影響を及ぼし得ることを示した。
著者
白井 美穂 黒沢 香
出版者
法と心理学会
雑誌
法と心理 (ISSN:13468669)
巻号頁・発行日
vol.8, no.1, pp.114-127, 2009-10

本研究では裁判員制度の枠組みから「専門家でない人々による量刑判断の要因」について、前科情報による効果を中心に、しかし今後の研究の土台として他要因についても多角的な検討を試みた。大学生及び社会人を対象とした2つの質問紙実験の結果から、量刑判断の主な要因としては被告人の再犯可能性や事件の悪質性の推測が挙げられ、また厳罰傾向と呼べる個人変数も重要な要因であることが示された。本研究でみられた主な前科情報の効果は、被告人に前科がある場合はより再犯可能性が高く推測され量刑も重くなったこと、また呈示事件が前科から長期間経過しておりかつそれらの事件内容が類似している場合に、事件の種類に関わらず量刑が最も重くなったことが挙げられるが、量刑判断と前科情報の関連は被告人についての情報呈示のあり方によって顕著となる可能性が示された。また本研究では性犯罪である強姦致傷も含め量刑判断において性差は一貫してみられなかったが、参加者の性別とJW得点の交互作用が厳罰傾向を媒介して量刑判断に関連したことを示し、間接的に量刑へ影響を及ぼし得ることを示した。