著者
海老名 敏明 金上 晴夫 桂 敏樹 青沼 賢治 白石 晃一郎
出版者
医学書院
雑誌
呼吸と循環 (ISSN:04523458)
巻号頁・発行日
vol.7, no.4, pp.401-409, 1959-04-15

I.まえがき 機能的残気量(Functional Residual Capa—city,以下F.R.C.と略す)の測定は,慢性肺気腫の診断並びにその程度の判定上大切であるばかりでなく,慢性肺疾患に於ける代償性肺気腫の有無,肺葉切除術後の残存肺膨脹の状態を知る上にも重要である。 F.R.C.の測定はかなり前から行われ,1932年のChristie1)の論文では当時まで発表されたF.R.C.の測定に関する約47篇の論文の詳細な考察を行いVan Slyke and Binger2)の方法が最も信頼性の高い方法であると述べている。この方法は水素をIndicator Gasとして用いているがChristieは之を改良し,爆発の危険性を除くために窒素をIndicator Gasとして用いる閉鎖回路法を発表した。この方法はその後かなり長く用いられ,閉鎖回路法としてはわが国では現在も尚行われている。1939年J.McMichaelはChristieの方法を追試しKatharometerを用い水素をIndicator Gasとして用いるConstant Volume Modificationを初めて発表した。1940年Darli—ng4)は酸素による開放回路法を発表し,その正確さ,再現性の高い点から米国その他に於て現在も尚広く用いられている。
著者
白石 晃一
出版者
桜花学園大学
雑誌
桜花学園大学研究紀要 (ISSN:13447459)
巻号頁・発行日
vol.1, pp.83-98, 1999-03-31

教育の量的拡大をなしとげた国々での重大問題である「教育の質」についての論議(definition of quality of education)と教育の質の向上を目指す「質の教育」(quality education)の計画と実践を,1980年代後半から90年代前半にかけてのイギリスの幼年教育(3歳〜7,8歳児の教育)について検討した。そして,ナショナル・カリキュラム(1988年)が幼年教育に悪影響を与えるとの批判を受けたため,ランボルド報告(1990年)によって本来の幼年教育とナショナル・カリキュラムとの調整がはかられたことを明らかにした。ランボルド報告の示す児童観(児童中心主義)と教育内容論(cross-curricular approachesの推奨)は,ケアと教育の分離不可能を前提とし,遊びを重視するなど,教科教育重視の傾向にある小学校教育に反省を迫るものである。なお,ランボルド報告にもとづく問題解決学習の事例としてマンチェスター・グループの実践をとりあげ,イングランドにおける改革に先立つ論議と計画についてスコットランドのストラスクライド地域の例をとりあげた。
著者
白石 晃一
出版者
桜花学園大学
雑誌
桜花学園大学人文学部研究紀要 (ISSN:13495607)
巻号頁・発行日
vol.7, pp.1-18, 2005-03-31

英国(イングランド)の中等学校での公民教育の中核となる義務教育第3段階(第7〜9学年,11〜14歳)の公民科の授業に関して,単元「人権」の授業展開を,学習指導計画と指導方法に注目して検討した。具体的に二つの学習指導計画(テューダーの教師用資料集ならびにフィーンの教科書と教師用書)をとりあげ,教師用資料集・指導書と生徒用教科書の内容を精査し,そこで重視されている思考・判断と討議・討論の過程を解明した。そして,子どもの権利の確認,責任の自覚,人権擁護のための積極的な活動への誘い,障害者差別反対の絵はがきやポスターや直訴状の作成に,また生徒のアムネスティー・インターナショナル支部設立運動に,「思考・判断と討議・討論(ディベートとディスカッション)と発表(発言・表現)を重視しながら,そこから出発して,人権擁護の行動を促す」という方向性を見出した。
著者
白石 晃一
出版者
桜花学園大学
雑誌
桜花学園大学人文学部研究紀要 (ISSN:13495607)
巻号頁・発行日
vol.10, pp.125-142, 2008-03-31

英国イングランドの中等学校義務教育課程後期段階(第4段階,第10・11学年,14〜16歳)の公民科における地球環境問題学習についての研究である。まず,英国の中等学校公民科教育の実情を教育水準局(Ofsted)報告書(2006年9月)に関する新聞記事に見た。優れた学習指導をおこなっている学校もあるが,4分の1の学校で基準に達していないとのことである。そこで,公民科教育の終点に置かれる「地球環境問題」学習を取り上げ,低水準の学習展開例を市販の学習参考書で確認した。重要語句・重要事項説明の書き写し練習と暗記という学習である。その上で,能動的な学習を提唱する教科書における地球環境問題学習を検討した。地球環境問題学習単元の公民科学習内容における位置づけについて,また学習単元「地球環境問題」の展開について,その学習活動例に注目して,調査した。そして,能動的学習の展開の模索という面で,日本の公民科教育と地球環境問題学習にとって参考になる,との結論をえた。