- 著者
-
相澤 育郎
- 出版者
- 日本犯罪社会学会
- 雑誌
- 犯罪社会学研究 (ISSN:0386460X)
- 巻号頁・発行日
- vol.44, pp.11-29, 2019-10-20 (Released:2022-04-26)
グッドライフモデルとは,2000年代の初頭より,ニュージーランドの心理学者トニー・ウォードらによって提唱された,犯罪者処遇・更生に関する理論的枠組みである.本稿の目的は,これに関連する文献をレビューすることにより,その全体像の解明と評価を行い,そして日本の犯罪者処遇政策への示唆を得ることである.グッドライフモデルは当初から,リスク管理的アプローチをモデルに組み入れることを意図していた.それは,犯罪者処遇・更生理論にとって重要な再犯の予防(リスクの管理)と本人の福利(グッドライフの促進)を両立させる理論的挑戦である.またグッドライフモデルの発想による処遇は,人間の尊厳と人権,刑罰と更生,そして処遇と処遇者の倫理に基づいている.そこでは,刑事司法に関与するすべてのステークホルダーを重視する関係的刑罰理論が重要な位置を占めている.そしてグッドライフモデルにはエビデンスが不十分であるとの批判もなされるが,これを支える前提と実務に焦点を当てた評価研究は,徐々に積み重ねられている.結論として,グッドライフモデルには,その折衷主義的な性格ゆえの課題も残されているが,日本の犯罪者処遇実務に取り入れられるべきである.