- 著者
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相良 翔
- 出版者
- 福祉社会学会
- 雑誌
- 福祉社会学研究 (ISSN:13493337)
- 巻号頁・発行日
- vol.10, pp.148-170, 2013
本稿の目的は,ダルク(DARC:Drug Addiction Rehabilitation Center)在所者・スタッフによって語られる薬物依存からの回復について,ダルクのスローガンとなっている「今日一日」を焦点にして考察を試みることである.ここで使用されているデータはX/Yダルクにおいてのフィールドワークによって得られたものである.Xダルクは大都市圏に位置し,比較的古くに創設されたYダルクも大都市圏に位置し,近年に創設された筆者は共同研究の一環として2011年4月からX/Yダルクにおいてフィールドワークを行っている.分析の結果「今日一日」は薬物依存からの回復を語る上で重要な「時間の感覚」 として存在していることがわかった.具体的に言えば, 1) 「今日一日」 のもとで生活することにより「過去」や「未来」に対する不安を軽減し,クスリを止めている「現在」に繋がったこと, 2) その「現在」の積み重ねにより「過去」から「現在」,「現在」から「未来」という時間の流れを取り戻したこと, 3) ダルクという空間外でも「今日一日」のもとで回復の語りを展開する可能性を持つこと,以上の3点を明らかにした.