- 著者
-
都島 梨紗
- 出版者
- 日本教育社会学会
- 雑誌
- 教育社会学研究 (ISSN:03873145)
- 巻号頁・発行日
- vol.92, pp.175-195, 2013-07-25 (Released:2014-07-28)
- 参考文献数
- 22
- 被引用文献数
-
2
本稿の目的は,少年院収容を経験した元非行少年の視点から,少年院教育について描き出し,社会から少年院へと移行する際の適応方法を明らかにすることである。そのうえで,少年院と非行仲間集団との連続性を示していく。 少年院研究は,少年院を「管理・運営」する立場から,少年たちの自己が変容していたという前提のもとに行われてきていた。そのために,非行少年が少年院をどのように経験していたのかという知見や,少年院の教育を経ても変容しなかった場合どのような帰結に至るのか,という知見が不在であった。そこで本稿では,非行少年の少年院生活に対する態度と非行仲間集団への意味づけに着目し,少年が少年院において実行した2つの調整の事例を取り上げた。そして少年院における調整は,少年院教育を維持しながら,非行仲間との関係性を維持する方法であることを明らかにした。 本稿を通して得られた最大の知見は,少年が実行する調整によって,少年院と非行仲間という,相反する性質を持つ両者との関係性が見事に維持されているということである。その結果少年は,少年院収容によって一旦は地元社会から切り離されるものの,地元社会から施設への移行のみならず,施設から地元社会への移行をも可能にしているのである。したがって,非行少年と仲間との関係性は少年院退院後も継続しうるものとして捉えた上で,処遇プログラムを考案していく必要があるだろう。