- 著者
-
藤間 公太
- 出版者
- 日本教育社会学会
- 雑誌
- 教育社会学研究 (ISSN:03873145)
- 巻号頁・発行日
- vol.106, pp.35-54, 2020-05-30 (Released:2022-03-31)
- 参考文献数
- 42
教育や子育てといった子どもにかかわる営みは,政策の対象として重要な領域の1 つである。本稿に与えられた課題は,そうした子どもにかかわる政策における家族主義の問題を論じることである。まず,家庭教育支援をめぐる動きを事例として,教育政策における家族主義を,次に,2017年に完全施行された改正児童福祉法と「社会的養護の家庭化」をめぐる議論を事例として,福祉政策における家族主義を論じる。両政策を概観すると,「家庭」という言葉がマジックワード化している反面,両政策ともに「家庭」において保護者が教育,子育ての第一義的責任を負うことを求めていることがわかる。このことは,国の責任を曖昧化する点で問題含みである。政策の中で規範化される家族や「家庭」のあり方が歴史的な構築物であり,家族をサポート資源として利用できるか否かに階層差がある以上,教育や子育てに対する国家の責任を明確にする必要がある。そして,国家による責任は,介入的な形ではなく,無条件の生存保障という形で遂行される必要がある。それはすなわち個人の選択肢の拡充するような公的支援体制の整備であり,その観点からいうと,選択的家族主義(Leitner 2003)が目指される必要がある。政策が内包する家族主義の問題を克服する上では,自身が提供した資源が教育や子育てに優先配分されることに対して市民の納得を得られるような論理につながる知見を導出することが,今後ますます研究者に求められるだろう。