著者
柳沢 文孝 中川 望 安部 博之 矢野 勝俊
出版者
The Japanese Society of Snow and Ice
雑誌
雪氷 (ISSN:03731006)
巻号頁・発行日
vol.58, no.5, pp.393-403, 1996-09-05
被引用文献数
12 1

山形県の蔵王には着氷と積雪が繰り返し集積することによって生じた樹氷が存在している.着氷はシベリアからの北西の季節風によって生成するものであり,降雪は高さ数千メートルに達する雪雲によりもたらされたものである.蔵王周辺地域の大気の化学的環境を明らかにするため,蔵王山頂付近(標高1680 m)で積雪と着氷を採取して溶存成分の分析を行った.積雪の溶存成分濃度は北西季節風が強まるにつれて増大するが,着氷の濃度より低い値である.また,着氷と電気伝導度が15 μS/cmを越える積雪試料から黒色の油脂成分が観察された.積雪の塩化物イオン濃縮係数は1.3であるのに対して着氷は0.7であった.これは,着氷の起源となる過冷却水滴が朝日連峰を越峰する際にクローリンロスを起こし,この際に飛散した塩化水素ガスが降雪の起源となる氷晶核に取り込まれたためと考えられる.積雪と着氷のnss-SO<SUB>4</SUB><SUP>2-</SUP>/NO<SUB>3</SUB><SUP>-</SUP>比は等しかった.このことは,両イオンの起源が冬期を通じて同じであり,大陸の大気汚染物質起源であることを示すものである.アンモニウムイオンも大陸からもたらされていると推定される.一方,カルシウムイオンも北西の季節風に乗って飛来していると考えられるが,着氷と積雪では起源が異なると推定される.
著者
伊藤 驍 山崎 宣悦 矢野 勝俊 佐藤 幸三郎 長谷川 武司
出版者
秋田工業高等専門学校
雑誌
試験研究
巻号頁・発行日
1987

本研は雪害防災対策上、不可欠な降雪・積雪の性状情報を安価で即時的に入手できる高性能な機器を開発し、雪害防除の指針を得るために行われたものである。本研究で行われた主な項目を挙げると1)既存の降雪検知器で沿岸および豪雪山間部で降雪現象の比較観測を行いその性能を調べ、併せて積雪の物理試験を行って地域特性を整理した。2)既存の観測装置はまず高価で精度に問題点がある。本研究ではこの点を検討し、低廉で測定簡易なセンサ赤外線発光ダイオ-ドを素材とする次の4つの方式による装置を作製した。(1)スリット方式(2)複数スリット方式(3)シルエット方式(4)受雪板反射方式これらはそれぞれで特徴をもつがそれを総括すると、従来式の降雪有無の確認に留まらず粒度分布や形状も認識し吹雪の降雪片も捕捉できるように開発した。その性能は従来の機器より優れ安く作製できる見通しを得た。3)上とは別に、情報工学的方法としてビデオカメラ、イメ-ジプロセッサ及び演算処理高速コンピュ-タ-を使って降雪片の性状を分析できるシステムを確立した。4)降積雪の観測から雪害発生の予測に関する指標を提案した。以上の詳細は研究成果報告書して一冊にまとめ印刷製本し、関連研究機関に郵送配布した。