著者
今西 伸行 西村 浩一 森谷 武男 山田 知充
出版者
The Japanese Society of Snow and Ice
雑誌
雪氷 (ISSN:03731006)
巻号頁・発行日
vol.66, no.1, pp.3-10, 2004-01-15 (Released:2009-08-07)
参考文献数
16
被引用文献数
1 1

雪崩発生に伴う地震動の特徴を把握するとともに,雪崩の発生地点と規模を推定する手法を確立するため,4台の地震計を用いて,2001年1月から4月までの80日間,北海道大学天塩研究林内で観測を行った.期間中に,対象域で確認された雪崩の86%にあたる50例の震動波形を得ることができ,地震計によって高い確率で雪崩発生のモニタリングが可能であることが判った.ほぼ同地点で発生した雪崩による震動は類似した波形を示すこと,震動の卓越周波数と地震計から雪崩発生点までの距離との間には負の相関があり,これから発生点の推定が可能であること,また雪崩の運動エネルギーと位置エネルギーとの関係を用いて,雪崩質量の推定が可能であることが示された.
著者
山口 悟 西村 浩一 納口 恭明 佐藤 篤司 和泉 薫 村上 茂樹 山野井 克己 竹内 由香里 Michael LEHNING
出版者
The Japanese Society of Snow and Ice
雑誌
雪氷 (ISSN:03731006)
巻号頁・発行日
vol.66, no.1, pp.51-57, 2004-01-15 (Released:2009-08-07)
参考文献数
6
被引用文献数
4

2003年1月5日に長野県南安曇郡安曇村の上高地乗鞍スーパー林道で起こった複数の雪崩は,死者こそ出なかったが車20台以上を巻き込む大災害となった.雪崩の種類は面発生乾雪表層雪崩であった.今回の雪崩の特徴は,従来雪崩があまり発生しないと考えられている森林内から発生したことである.現地における断面観測より,今回の雪崩は表層から約30cm下層に形成された“こしもざらめ層”が弱層となり発生した事がわかった.積雪変質モデル並びに現場近くの気象データを用いた数値実験でも,同様の“こしもざらめ層”の形成を再現することができた.弱層になった“こしもざらめ層”は,1月1日の晩から1月2日の朝に積もった雪が,3日早朝の低温,弱風という気象条件下で変質して形成されたと推定される.今回の研究結果により,雪崩予測における積雪変質モデルの適応の可能性が明らかになった.また,考えられている森林の雪崩抑制効果に関してより詳細に検討する必要性があることも示された.
著者
小椋 崇広 James MCELWAINE 西村 浩一
出版者
The Japanese Society of Snow and Ice
雑誌
雪氷 (ISSN:03731006)
巻号頁・発行日
vol.65, no.2, pp.117-125, 2003-03-15 (Released:2010-02-05)
参考文献数
11
被引用文献数
2

雪崩の挙動予測には,質量中心モデルがよく用いられる.しかし,雪崩データの不足から,斜面の曲率変化にともなう遠心力の効果,空気抵抗,底面摩擦については十分に議論・検討が行なわれておらず,モデルの評価は未だに十分とは言えない.そこで,本研究ではピンポン球を用いた大規模な模擬雪崩実験を札幌市宮の森ジャンプ台で実施するとともに,質量中心モデルを用いて流下速度の再現とパラメーターの検証を行った.その結果,以下の事項が明らかになった.(1)遠心力の効果の有無に関わらず,モデルはピンポン雪崩の流下速度をよく再現する.(2)空気抵抗係数:L(=2m/ρaCDA)は,ピンポン球雪崩の規模(球の数)の1/3乗に比例する.(3)底面摩擦係数(摩擦角)は,規模によらず一定の値をとる.
著者
西村 浩一 佐々木 敦 小林 一義
出版者
釧路工業高等専門学校
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1996

10GHzを越える電波は降雨、降雪、霧などの大気条件によって減衰することは知られているが、釧路地方で発生する濃い海霧が12GHz帯衛星放送波の減衰に及ぼす影響については解明されていない。海霧発生時における衛星放送波の減衰について、より正確な実測データを得るため、受信レベルの測定地点における気象データ収集システムと、海霧等の視程値を計測する視程計測システムを製作した。これらのシステムを用い、これまで得られたデータから、次のような結果を得た。雨の場合は、雨量に応じて衛星放送波の受信レベルが減衰している。これに対し、海霧が発生している時の受信レベルは、その減衰量は少ないが絶えず細かく変動している。この受信レベルの細かな変動は、局所的な海霧の濃さの変動によるものだけではなく、海霧の空間的形状にも深く関係していると考えられる。また、視程がほぼ同じであっても、海霧の粒径により受信レベルに与える影響に差がある。粒径が大きな霧(湿った霧)ほど、受信レベルに与える影響が大きい。降雨による衛星放送波の減衰と、ガイシの絶縁特性の低下の間に相関関係があることもわかってきた。降水量が多い場合には、ガイシ表面の汚損物質が洗い流されて絶縁特性が再び回復するが、霧や小雨の場合は絶縁特性を低下させるだけである。特に海霧の場合は、その中に含まれる海塩粒子が絶縁特性をより低下させている。釧路地方で発生する海霧は、その濃さが場所によってかなり異なる。今後の展開として、衛星放送波の減衰と海霧の画像データから、海霧の動きを予想することも期待される。
著者
鍛治 恭介 鵜浦 雅志 小林 健一 中沼 安二 西村 浩一 坂本 徹 竹内 正勇 寺崎 修一 下田 敦 卜部 健 松下 栄紀 金子 周一
出版者
一般社団法人 日本肝臓学会
雑誌
肝臓 (ISSN:04514203)
巻号頁・発行日
vol.33, no.11, pp.872-876, 1992
被引用文献数
4

症例は53歳女性で1991年3月検診時にGOT 329, GPT 306とトランスアミナーゼの上昇を指摘され精査加療目的にて当科入院.検査成績では血沈65mm/hrと亢進,γ-glb 3.5g/dl,IgG 5.5g/dlと上昇,抗核抗体が160倍と陽性,また抗C100-3抗体,PCR法にてHCV RNAが陽性であり,自己免疫型の病型を示すC型慢性肝炎と診断した.プレドニゾロン(PSL) 40mgより加療するも改善は認めず,PSL漸減後α-インターフェロン(α-IFN)投与を開始した.α-IFN投与後GPT値は速やかに正常化し,また,γ-glb値は2.1g/dlまで減少した.一方,抗核抗体は持続陽性であったが,抗体価の上昇は認めなかった.なおIFN投与後22日目の時点で測定したHCV抗体,HCV RNAはいずれも陽性であった.C型慢性肝炎の一部に自己免疫型の病型を示す症例が存在し,また,IFNが有効な症例が存在することを示す貴重な症例と思われ報告した.
著者
和泉 薫 小林 俊一 秋田谷 英次 西村 浩一
出版者
北海道大学低温科学研究所
雑誌
低温科学. 物理篇. 資料集 = Data report low temperature science. Series A, Physical sciences (ISSN:03853683)
巻号頁・発行日
no.55, pp.27-45, 1996
被引用文献数
1

明治の後半からの北海道の雪崩情報を新聞から収集した。過去95年間の雪崩災害件数は666件,死者は722人におよんだ。雪崩災害の内容をみると,北海道の開拓の歴史を反映している。明治時代は海岸部の民家の被害が,昭和に入ると鉄道や鉱山が,戦後は森林伐採やダム工事,道路が,さらに近年は登山やスキー関連の事故が目立っている。
著者
西村 浩一 高橋 修平 本山 秀明 小杉 健二 根本 征樹
出版者
名古屋大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2010-04-01

風力発電と太陽光パネルを用いた吹雪計測システムの開発を試みた。低温風洞で出力特性等の検証後、国内は新潟県と北海道、国外ではフランスアルプスで性能試験を行った。2013年には南極の昭和基地近傍の氷床上で、約2カ月にわたる吹雪の自動観測に成功したほか、フランスと共同でアデリーランドの観測タワーで吹雪フラックスの鉛直分布を求めた。また英国と共同で砕氷船により南極海の棚氷を周回し、海塩エアロゾルの供給源としての吹雪の寄与の測定を行った。一方、メソスケール気象モデルWRFで南極氷床上における気象要素の時系列変化を求め、これに基づいて算出された吹雪量を2000年の南極みずほ基地での観測結果と比較した
著者
山口 悟 西村 浩一 納口 恭明 佐藤 篤司 和泉 薫 村上 茂樹 山野井 克己 竹内 由香里 LEHNING Micheal
出版者
日本雪氷学会
雑誌
雪氷 (ISSN:03731006)
巻号頁・発行日
vol.66, no.1, pp.51-57, 2004-01-15
被引用文献数
6 4

2003年1月5日に長野県南安曇郡安曇村の上高地乗鞍スーパー林道で起こった複数の雪崩は,死者こそ出なかったが車20台以上を巻き込む大災害となった.雪崩の種類は面発生乾雪表層雪崩であった.今回の雪崩の特徴は,従来雪崩があまり発生しないと考えられている森林内から発生したことである.現地における断面観測より,今回の雪崩は表層から約30cm下層に形成された"こしもざらめ層"が弱層となり発生した事がわかった.積雪変質モデル並びに現場近くの気象データを用いた数値実験でも,同様の"こしもざらめ層"の形成を再現することができた.弱層になった"こしもざらめ層"は,1月1日の晩から1月2日の朝に積もった雪が,3日早朝の低温,弱風という気象条件下で変質して形成されたと推定される.今回の研究結果により,雪崩予測における積雪変質モデルの適応の可能性が明らかになった.また,考えられている森林の雪崩抑制効果に関してより詳細に検討する必要性があることも示された.
著者
成瀬 廉二 秋田谷 英次 西村 浩一 白岩 孝行 山口 悟 須澤 啓一 天見 正和 伊藤 陽一 根本 征樹
出版者
北海道大学低温科学研究所
雑誌
低温科学 物理篇 資料集 (ISSN:03853683)
巻号頁・発行日
no.55, pp.13-26, 1996
被引用文献数
1

1996年2月下旬に,北海道内広域の58地点にて積雪調査を行った。測定項目は,積雪深,積雪水量,層位・雪質・粒径,ラム硬度,雪温である。同年冬期は,札幌を中心とした日本海側では記録的な大雪であり,一方北海道東部は平年より少雪であった。全層平均密度と全層平均ラム硬度は,積雪量が多い北海道西部で高い値を,積雪量が少なく「しもざらめ雪」が顕著な東部で低い値を示した。
著者
西村 浩一 阿部 修 和泉 薫 納口 恭明 伊藤 陽一
出版者
名古屋大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2006

本研究は、「地震と豪雪」の複合災害の中で、「冬に地震が発生」した際の雪崩災害危険度の評価手法を開発し、被害軽減に資することを目的とした。今年度は、主に地震時の積雪の破壊強度とその挙動を調べる目的で、防災科学研究所の雪氷防災実験棟において小型振動台を用いた積雪の破壊実験を実施した。実験にはロシアのAPATIT雪崩研究所殻からChernouss博士も参加し、共同で実施された。加速度計を埋め込んだ積雪ブロックを凍着させ、一定振幅のもとで2次元の振動数を増加し、積雪がせん断破壊した時点の加速度、上載荷重、断面積から、「新雪」、「しまり雪」、「しもざらめ雪」の「高歪速度領域の積雪破壊特性」とその密度依存性が求められた。また2次元振動に伴う、法線応力の効果についても議論を行った。さらにこの破壊特性を積雪変質モデル(Snowpack)に組み込んで、対象領域の地震発生時の雪崩発生危険度予測図を作成した。一方、こうした一連の取組みに対して、トルコの公共事業省災害監理局から共同研究と技術支援の依頼があり、研究協力者2名とともに現地視察を行ったほか、地震による雪崩発生の現況および危険度評価と災害防止手法開発に関する意見交換を実施した。現在、今後の共同研究策定に向けて調整を実施中である。
著者
前野 紀一 川田 邦夫 木村 龍治 荒川 政彦 西村 浩一 成田 英器
出版者
北海道大学
雑誌
重点領域研究
巻号頁・発行日
1991

一般に湿雪雪崩の形は単純でその動的特徴の多くは斜面を流下する濡れた雪塊として理解できる。しかし、乾雪雪崩、特に煙り型乾雪表層雪崩は、昭和61年13人の死者を出した新潟県能生町の柵口雪崩にように、極めて高速かつ大規模になり、大きな被害を起こしやすいにもかかわらず、その内部構造と動的特性について詳しい情報が得られておらず、その予測や防御が難しい。本研究では実際の乾雪表層雪崩の内部構造を調べるために、黒部峡谷志合谷において観測を実施した。これは雪崩走路上に設置されている2基のマウンドに雪崩観測用のカメラ、衝撃圧センサ-、超音波風速計等を取り付け、雪崩の自然発生を待つ方法である。黒部峡谷志合谷で観測された数個の雪崩では、雪崩風が観測された。雪崩風は雪崩の実体の前面あるいは側方に発生する局部的な強風であり、その存在やそれによる災害がしばしば報告されいるが、これまで定量的に観測はなかった。今回観測された雪崩風は、雪崩自身の規模があまり大きくなかったが、雪崩の実質部よりもはっきりと先行しており、その速度は雪崩前面の速度にほぼ等しかった。本研究では、また雪崩の内部構造と運動メカニズムを調べるために、大型低温実験室における氷球を用いたシュ-ト実験が実施された。多数の氷球(平均粒径2.9mm)がシュ-ト(長さ5.4m、幅8cm)を流下する様子が高速ビデオで撮影され、速度と密度が求められた。シュ-トの角度は30度から40度、実験温度は0℃からー30℃の範囲で変えられた。得られた氷粒子速度と密度の鉛直分布からは、流れの最下部に低密度層が見出され、この層が生成する理由は粒子間衝突の結果と結論された。
著者
山田 知充 西村 浩一 伏見 硯二 小林 俊一 檜垣 大助 原田 鉱一郎 知北 和久 白岩 孝行
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2001

近年の地球温暖化の影響であろうか、半世紀ほど前からヒマラヤ山脈の南北両斜面に発達する表面が岩屑に覆われた谷氷河消耗域の末端付近に、氷河湖が多数形成され始めた。ところが、同じ気候条件下にあり、同じような形態の谷氷河であっても、ある氷河には氷河湖が形成されているのに、他の氷河には氷河湖が形成されていない。何故ある氷河には氷河湖が形成され他の氷河には無いのであろうか?今回の研究によって、氷河内水系、岩屑に覆われた氷河の融解速度と氷河の上昇流速から計算される氷河表面の低下速度(氷厚の減少)を考慮した氷河湖形成モデルを導き出すことによって、この問題に対する回答を得ることができた。氷河湖が一旦形成されると、その拡大速度は非常に大きく、わずか30〜40年の間に、深さ100m、貯水量3000万〜8000万m^3もの巨大な湖に拡大成長する。何故これほどの高速で拡大するのであろう?氷河湖の拡大機構を以下のように説明出来ることが分かった。太陽放射で暖められた氷河湖表面の水が、日中卓越する谷風によって、湖に接する氷河末端部に形成されている氷崖へと吹送され、氷崖喫水線下部の氷体を効率よく融解する。そのため、下部を抉られた氷崖が湖へと崩れ落ちる(カービング)ことによって、湖は急速に上流側へと拡大する(氷河は逆に効率よく縮退する)。一方、湖底の氷は約2〜3℃の水温を持つ湖水で融解され、水深を増す。この両者によって湖は拡大している。湖の熱収支を計算すると、湖に崩れ落ち小氷山となって漂う氷の融解と湖底氷を融解させるに要する熱量は、アルベドの小さな湖表面が吸収した太陽放射エネルギーで主に賄われていることを確認した。研究成果の一部は3冊の英文報告書及び、3冊の邦文研究報告書として出版されている。
著者
中村 泰人 平岡 久司 西村 浩一
出版者
一般社団法人日本建築学会
雑誌
日本建築学会計画系論文報告集 (ISSN:09108017)
巻号頁・発行日
no.364, pp.48-56, 1986-06-30
被引用文献数
11

Air temperature distribution in an urban cavity of the rectangular type was investigated based on field measurement all daylong in hot summer. The cavity is enclosed with a street and both walls of buildings ; the center line of the street is oriented almost exactly east-west; the width of the street is 16 m ; the heigth of both buildings on the north side and the south side is 17 m. Air temperatures of 63 points in a section rectangular to the street and building's wall of the cavity were measured. A special method measuring air temperature outdoors was devised; which used fine thermocouple without shield, calibrated temperature error to solar radiation in advance, and corrected measured data in the sunny points on the calibration according to the direct solar radiation in the same time. The standard deviation of the air temperature distribution in the cavity was higher in the daytime than in the night time, was in the linear correlation to solar radiation, and held 0.5 K of maximum in the daytime. Mean of the air temperature in the cavity was occasionally changed, as the wind direction on the street was turned from west to east. The air temperature in the cavity was almost near to the outside air temperature. Temperature boundary layer on the surface was not over 50cm. Air vortex on the section in the cavity was observed from the air temperature distribution, when the wind direction was rectangular to the building's wall.