著者
石井 隆之
出版者
近畿大学経済学会
雑誌
生駒経済論叢 = Ikoma Journal of Economics (ISSN:13488686)
巻号頁・発行日
vol.7, no.1, pp.825-847, 2009-07-01

生成文法の枠組みでは, 「経済性」というメタ原理は, 言語を適切に成立させる「原理の原理」とみなされる。 本稿では, このメタ原理としての「経済性」が, 4つの基本的な言語学上の課題,すなわち, 英語の第一人称代名詞の主格が単純であること, 英語の冠詞の存在意義, 日本語において助動詞の種類が豊富な理由, 日本語の数の概念の曖昧さの存在意義に対して, ある程度関わっていることを示した。 結果的に, 経済性は, 言語や状況によって, 形態的コスト・構造的コスト・音声的コストおよび心理的コストのうち1つ, または, 幾つかを低くする方向に働くことが分かった。 (英文) Under the framework of generative grammar, the meta-principle of "economy" is regarded as "the principle of principles," which makes it possible to form a language properly. In this paper, I have shown that economy as the meta-principle is to some extent related to the following four basic linguistic problems: the simplicity of the nominative case of the first-person pronoun in English, the significance of the existence of articles in English, the reason for a variety of auxiliaries in Japanese, and the significance of the existence of vagueness in the concept of numbers in Japanese. It has been found that the "economy" metaprinciple works depending on languages and situations in the way it helps lower one or more of the following costs: morphological cost, syntactic cost, phonological cost and psychological cost.
著者
石井 隆之
出版者
近畿大学総合社会学部
雑誌
近畿大学総合社会学部紀要 = Applied Sociology Research Review KINDAI UNIVERSITY (ISSN:21866260)
巻号頁・発行日
vol.6, no.1, pp.41-52, 2017-10-30

[Abstract] The notion of religious barriers plays a significant role in dividing many physical areas into sacred and secular spaces. This paper explores a possibility of establishing a new notion of time-related religious barriers formed by language in contrast to the ordinary space-related barriers, by focusing on a popular Japanese expression “Itadakimasu,” which is uttered by most Japanese before they eat. Moreover, I will seek for the logical descriptions of the impacts of words uttered by speakers on individuals’ psychological barriers, which I regard as a form of religious barriers in this paper. Furthermore, the paper also aims at giving principled explanation to grammatical mechanisms found in the Japanese language under the religious barrier-based framework.
著者
石井 隆之
出版者
近畿大学語学教育部
雑誌
近畿大学語学教育部紀要 = Kinki University Department of Language Education bulletin (ISSN:13469134)
巻号頁・発行日
vol.2, no.1, pp.11-29, 2002-11-01

著者専攻: 理論言語学
著者
松井 洋 中村 真 堀内 勝夫 石井 隆之
出版者
川村学園女子大学
雑誌
川村学園女子大学研究紀要 (ISSN:09186050)
巻号頁・発行日
vol.18, no.1, pp.109-122, 2007-03-15

日本とトルコの中学生,高校生,大学生,親,3820人を対象に,恥意識について調査を行い,日本とトルコの文化比較と世代間比較を行った。親に対する質問項目の因子分析の結果,「他律的恥意識」,「他者同調的恥意識」,「自律的恥意識」の3因子を抽出した。この3因子構造は,生徒とほぼ同一であった。この3因子を基に層別の分散分析の結果,3つの恥意識について,グループ間に有意な違いがあった。自律的恥意識は,トルコの父母とトルコの中学生女子,それに日本の母が高く,日本の若年層で低い。他律的恥意識は,おおむね,大人,女子,男子という順になった。他者同調的恥意識は,日本の女子とトルコの中学生が高く,日本の父親が最も低かった。以上のことから,恥意識の強さは文化と世代によって質的に異なると言える。つまり,世代や文化によって,恥を感じる場面が異なる。日本の親は,自律的恥意識と他律的恥意識が強く,子どもは他者同調的恥意識が強い。また,女子は他律的恥意識と他者同調的恥意識が男子より強い。このようなことは,日本の若年層で問題行動を抑止する恥意識が弱いことを示している。このことは,わが国における恥意識の質が変容した可能性を示していると考えられる。
著者
大窪 健之 小林 正美 土岐 憲三 益田 兼房 寺田 佳高 石井 隆之 岡崎 風時
出版者
立命館大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

全国の木造の重伝建地区(国指定の町並み保存地区)は、地震火災による同時多発火災に弱い。しかし災害時に最も重要な役割を果たす住民が参加し、地区防災計画を定めた例は少数であった。このため、防災水利の整備事業の実施前、中、後、の段階別に地区を選定して住民ワークショップを実施し、図上防災訓練による想定と、発災対応型防災訓練による実践を試みた。得られた結果を総合することで、住民ワークショップの手法とその有効性を明らかにした。
著者
松井 洋 中村 真 堀内 勝夫 石井 隆之
出版者
川村学園女子大学
雑誌
川村学園女子大学研究紀要 (ISSN:09186050)
巻号頁・発行日
vol.17, no.1, pp.51-70, 2006-03-15

本研究の目的は日本の「子ども」の特徴について比較文化の視点から検討することであり,特に非行と非行を抑制する要因について明らかにすることである。そのため非行許容性と恥意識,道徳意識の関係について検討する。この目的のため,日本とトルコの中学・高校生1488人を対象に調査を行った。調査結果は,日本の中高生はトルコの中高生と比較して,道徳意識が低く,非行的行為に対して許容的という傾向があった。非行許容性,虞犯許容性,犯罪許容性については,日本の中学女子は男子より許容的であった。道徳意識は,日本よりトルコ,高校生より中学生,男子より女子が高いと言うという傾向があった恥意識について,自律的恥意識と他律的恥意識は,概ねトルコが日本より高く,男子より女子,高校生より中学生が高い傾向があった。しかし,他者同調的恥意識は,男子より女子,高校生より中学生が高いという傾向は前2者と同様だが,他の恥意識とは異なり,トルコより日本が高かった。非行許容性を従属変数とした重回帰分析の結果は,日本の生徒では非行許容性は他律的恥意識によって説明され,また,他律的恥意識が強いほど非行を許容しないと考えられ,そして,道徳意識が強いほど非行を許容しないという関係である。しかし,トルコの中高生の非行許容性は道徳意識によって説明され,恥の意識とは関係が無いということが言える。これらのことより,非行許容性の背景となる個人の態度には文化差があると考えられる。そして,トルコの中高生では,恥の意識より,良い悪いという道徳意識が非行的行為と関係が深いと言える。他方,日本の中高生では,良い悪いという判断より,他者を意識した「恥」の意識がより重要である。しかし,日本の中高生は,他者同調的恥意識は強いが,非行許容性と関係の深い他律的恥意識はトルコに比べて弱いという問題が明らかとなった。