著者
日隈 ふみ子 藤原 千恵子 石井 京子
出版者
一般社団法人 日本助産学会
雑誌
日本助産学会誌 (ISSN:09176357)
巻号頁・発行日
vol.12, no.2, pp.56-63, 1999-01-20 (Released:2010-11-17)
参考文献数
12
被引用文献数
1 2

初めて親となった父親の発達について, 母親の発達との比較と父親発達への影響要因を明らかにすることを目的に研究を行った. 調査は子どもが1歳半になった時期に父親と母親に対して別々に実施し, 分析対象は両親の回答がそろった178組 (有効回答率45.8%) とした. その結果, 以下のことが明らかとなった. 父親の育児家事行動の中で, 子どもに話しかける・だっこする・遊び相手になるや, 母親への精神的援助など比較的行動しやすい行動得点は高いが, 子どもへの具体的な世話や家事行動の得点は低かった. 親としての発達に関する因子得点は両親とも高く,「生き甲斐・存在感」因子はどちらも第1位であったが, 2位以下には父母間に違いがあった, 父親と母親の因子得点の比較では, 母親のほうが父親よりすべての因子で高かった. 父親の発達には父親の役割観と育児家事行動の行動得点の高低が影響しており, 母親の父親に対する育児家事行動の期待度は影響していなかった.
著者
石井 京子
出版者
一般社団法人日本発達心理学会
雑誌
発達心理学研究 (ISSN:09159029)
巻号頁・発行日
vol.8, no.3, pp.186-194, 1997-10-30

高齢者の老人病院への入院により, 家族がその後の高齢者介護に対しどのような意識を持つのかを明らかにすることを目的に, 家族に郵送質問紙調査と医療者による患者実態調査を行った。さらに, 同対象の2年後の追跡調査を行い, 実際の退院に関与した要因の分析を行った。分析は老人病院に入院中の高齢者の家族のうち, 家族調査と医療者側の患者実態調査が揃っている561名について行った。結果は次のとおりである。高齢者の平均年齢は79.0歳で, 75歳以上では女性が多い。入院中の家族は37.8%が高齢者の退院後の生活場所として家庭を考えているが, 医師・看護婦の在宅可能者の判断と一致しなかった。家族の家庭意向に影響する要因は今回以前の入院経験と入院期間, 住居に段差問題がない, 福祉サービスの利用経験, 今回の入院期間の長さ, 現在の痴果度, 家族の面会頻度などである。2年後の追跡調査の結果, 自宅への退院は5.7%であった。退院に関与する要因は入院期問が6ケ月以内である, 現在の痴呆が軽度, 入院時の家族の意向が在宅介護, 医師・看護婦が在宅可能の判断などであった。このように入院中の在宅介護意向と実際の退院へ影響する要因は類似している。今後は在宅介護の意向を持っている家族が, 入院期間が長期になるとその意欲を失っていくことを防ぐために, 家族への頻繁な面接や退院に向けての家屋の改造などの専門的援助が, 入院時から継続して行われることの必要性が明らかになった。