著者
石井 裕子 滝山 一善
出版者
公益社団法人 日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.39, no.3, pp.145-149, 1990-03-05 (Released:2009-06-19)
参考文献数
17
被引用文献数
10 4

食用のほうれん草,野草のベゴニア,すいば,あかざなどは葉や茎にシュウ酸カルシウム結晶を含んでいる.植物体では代謝の最終産物で不用有害なシュウ酸をカルシウム塩として固定して無害にしている.これらの結晶に一水和物と二水和物があることを見いだし,結晶の形態から両者を区別することができた.ベゴニアには二水和物が,すいば,あかざには一水和物が,ほうれん草には大部分が二水和物で約20%の一水和物が存在していた.シュウ酸とカルシウムの種々の濃度の溶液を種々のpHで室温で反応してシュウ酸カルシウム沈殿を生成した.試薬濃度と,pHを変化させて生成した場合,更にクエン酸,リンゴ酸,コハク酸などを共存させた場合に粒子の形態に特徴ある,長い六角形板状の一水和物及び八面体を基本とする二水和物の結晶が析出した.これらのことから植物中のシュウ酸カルシウム結晶の一水和物と二水和物の生成条件の一部が解明できた.
著者
石井 裕子
出版者
公益社団法人 日本顕微鏡学会
雑誌
電子顕微鏡 (ISSN:04170326)
巻号頁・発行日
vol.25, no.3, pp.145-151, 1991-03-31 (Released:2009-06-12)
参考文献数
25
被引用文献数
1
著者
石井 裕子
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌(化学と工業化学) (ISSN:03694577)
巻号頁・発行日
vol.1991, no.1, pp.63-70, 1991-01-10 (Released:2011-05-30)
参考文献数
40
被引用文献数
4

シュウ酸カルシウムは水溶液中で一般には一,二,または三水和物の混合物沈殿として生成する。高温では一水祁物のみが生成するが,本研究によれば少量のクエン酸あるいはリンゴ酸ナトリウムの共存の下で二水和物のみが生成し,やや多量のクエン酸またはリンゴ酸ナトリウムの共存の下で三水和物のみが生成した。シュウ酸カルシウムー水和物の溶解度は6×10-5M程度で二水和物および三水和物が一水和物よりやや大きい。一水漁物の溶解度は100℃ではわずかに大きくなった。シュウ酸カルシウムの一,二および三水和物沈殿の形態はそれぞれ長い六角形板状,八面体および平行四辺形板状である。二および三水和物は不安定で水中で約10分煮沸すると一水和物に転移した。シュウ酸カルシウムー水胸物沈殿の結晶核は誘導時間の測定からCa3(C2O4)3n・H2Oと推定できた。シュウ酸カルシウムー水和物および二水和物は植物の葉または茎に見いだされたものと沈殿粒子との形態を比較し,またX線回折によって同定できた。植物中のシュウ酸カルシウム結晶は極めて安定で一水和物に変化するには1時間以上煮沸することが必要であった。
著者
石井 裕子 滝山 一善
出版者
一般社団法人 日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.33, no.3, pp.372-376, 2000-08-20 (Released:2013-04-26)
参考文献数
19
被引用文献数
1

Three kinds of sesame seed samples (washed and dried seeds, roasted seeds and dehulled seeds)were pulverized by a cooking mixer. The free oxalic acid in each sample was extracted into boiling water, and the total oxalic acid was extracted into 0.5 M hydrochloric acid. The concentration of oxalic acid in the extract was determined by ion chromatography. The amounts of total and free oxalic acid in 100 g of dried sesame seeds were found to be 1,750 mg and 350 mg, respectively, and 100mg and 50 mg, respectively, in 100g of dehulled sesame seeds. The difference between the total and free oxalic acid gave the content of calcium oxalate in the sesame seeds. The calcium oxalate contents per 100 g of dried and dehulled sesame seeds were respectively 2,323 mg and 83 mg as the monohydrate, this corresponding to 636 mg and 23mg of calcium. Almost all of the calcium oxalate was contained in the hulls of the dried sesame seeds. The total calcium per 100g of dried sesame seeds was determined as 1,210 mg, with 636 mg of calcium fixed as the oxalate. The remaining 574 mg of calcium are considered to be available for easy digestion. The calcium oxalate crystals in the hulls of the sesame seeds were aggregated particles composed of longish hexagonal plate crystals and were estimated as the monohydrate.
著者
石井 裕子
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌(化学と工業化学) (ISSN:03694577)
巻号頁・発行日
vol.1991, no.4, pp.316-320, 1991-04-10 (Released:2011-05-30)
参考文献数
18
被引用文献数
1

ホウレソソウを水中で煮沸して含まれているシュウ酸カルシウム結晶の量,形態および結晶構造の変化を検討した。ホウレンソウを水で20分間煮沸して非結合性シュウ酸を抽出し0.1M塩酸中に一夜浸漬して全シュウ酸を抽出してそれぞれイオンクロマトグラフ分析して定量し,単位重量当たりの両者の含有量の差からシュウ酸カルシウムの含有量を求めた。実験に使用したホウレンソウ100g中に非結合性シュウ酸は730mg,全シュウ酸は912mgと実測され,シュウ酸カルシウムは二水和物として339mgとなった。さらにホウレンソウを長時間煮沸して抽出されるシュウ酸を定量し,全シュウ酸との差から煮沸後残存するシュウ酸カルシウム量を求めた。シュウ酸カルシウムは煮沸1時間後からわずかずつ減少し,約4時間後から減少速度が増加し,8時間煮沸すると約26%が消失した。ホウレソソウを煮沸する間に葉の中に存在するシュウ酸カルシウム結晶は表面からわずかずつ溶解し,まず微細な穴が生じ小さなき裂が現れ,数時間以上煮沸すると凝集体の構成粒子の結合部分が溶解し始め,別に再結晶と転移により小さなシュウ酸カルシウム一水和物の結晶が元の結晶表面に現れた。X線回折分析によれば,煮沸前ほとんど二水和物であったシュウ酸カルシウム結晶は8時間煮沸した後にはその約50%が一水称物に転移していた。
著者
長谷川 昌美 坂元 秀樹 〓 小虹 位下 幸子 白川 貴士 大谷 香 高見 雅司 高見 毅司 石井 裕子 佐藤 和雄
出版者
日本産科婦人科学会
雑誌
日本産科婦人科學會雜誌 (ISSN:03009165)
巻号頁・発行日
vol.47, no.5, pp.479-485, 1995-05-01
参考文献数
11
被引用文献数
1

Estra-1,3,5 (10)-triene-3,17-diol (17β)-, 3-[bis(2-chloroethyl) carbamate] (Estramustine : 以下EMと略)は estrogen (E)に nitrogen mustardを結合させた抗腫瘍剤である. その効果は微小管阻害作用によるものとされ, Eの抗androgen作用と相乗させることで前立腺癌の経口抗癌剤として現在使用されている. 我々はこの抗癌剤の構造骨格である Eに着目し, この製剤がE受容体(ER)をもつ腫瘍に対するミサイル療法剤となる可能性を検討した. ヒト子宮体癌細胞株Ishikawaならびに当科で分離樹立した E非依存性の亜株 EIIL (Estrogen Independent Ishikawa Line)に対し in vitroにおけるEMの効果を検討した.その結果, (1) EMは濃度依存性にIshikawaおよびEIILの増殖を抑制したが,そのID50はIshikawaでは12μM, EIILでは65μMであった. (2) EMの培養系への添加は腫瘍細胞の剥離とDNAの断裂を起こしたが, この断裂は90 base pairの整数倍であった. (3) EM添加後にc-erbB-2, fasならびに nidogenの発現を β-actinの発現に比較して検討した. Ishikawaの c-erbB-2の発現は対照群で0.98±0.12 (X^^-±SD, n=3), EM群で1.02±0.23, EIILではそれぞれが0.99±0.34, 0.95±0.43. fasはIshikawaの対照群で0.89±0.20, EM群では 0, EIILでは対照群1.13±0.54, EM 群で1.35±0.78とIshikawaにおいてのみ有意 (p<0.01)のfas発現抑制がみられた. nidogenの発現は Ishikawaの対照群で0.88±0.22, EM群では0.21±0.10でEM群で発現の低下(p<0.05)が観察された. 一方EIILでは対照群1.30±0.43, EM群1.11±0.87と両者には有意の変化がみられなかった. 以上の結果より EMには体癌株の増殖抑制効果があることが確認された. この抑制は ERの有無により効果が変わるとともに, fas, nidogen発現の抑制を伴うことが明らかとなった.