著者
石橋 宏之
出版者
東海大学
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2008

近年、子どもたちの理科離れが深刻な問題となってきている。本来、好奇心旺盛な幼児期に「遊び」を通して様々な体験や経験から学んでいた原理や仕組みが、おもちゃの複雑化・IT化によって、体験から学ぶ事が非常に難しい環境になってきている。更に、小学校以上の義務教育機関では、カリキュラムや単位数に縛られ、子どもたちに体験的学習をさせる事が難しい。そこで本研究では、「遊び」を通して子どもたちに科学的要素を体験できる教育プログラムを実施し、当該プログラムの有用性の調査として、過去に本プログラムを実施した卒園生(保護者含む)と実施しなかった卒園生(保護者含む)を対象にアンケート調査を併せて行ない、より教育効果の高いプログラムの開発を目指す。1. 本田記念幼稚園卒業生へのアンケート調査(対象:1年生~6年生、対象:401名 有効回答193名)を実施設問22.『生活科・理科・算数はすきですか(卒業生回答)』の問では、本プログラム参加者58名中、95%の方が『すごく好き』・『好き』を選択した。不参加者131名中、86%の方が『すごく好き』・『好き』を選択した。したがって、本プログラムを選択した子どもたちは、小学校に進学後も、継続して理系科目に興味を持ち続けていることが読み取れる。さらに、設問36.『当時お子様と一緒に、何かを作ったり直したりした事はありましたか(保護者回答)』の問では、参加者の90%の方が、『よくあった』『時々あった』を選択、不参加者の86%を上回っている。つまり、理系科目に興味を持つには、保護者との関わりも重要であることが読み取れる。2. 全国幼児教育研究大会で報告。2008年8月5日 テーマ:『考えよう思考力の芽生え』研究大会での講評では下記の4つの点を称賛いただいた。a. 材料を自由に選択して制作できる。(材料の紹介はするが、使い方は教えない。自分で考えアイデアを形にしていく)b. 子どものつぶやきを捉える。(子どものアイデアから、新しい素材や材料を準備する。指導者の固定観念にとらわれず、子どものアイデアを尊重する。子どもたちが自己有能感を持てるようにする)c. 子どもが体験から学ぶ時間を作る。(答えを先に教えない。指導者は待つ姿勢を忘れない)d. 本物に出会う(東海大学動力機械工学科の見学(実車のカットモデル、レーシングカー、ソーラーカーなど)京商株式会社来園(電動ラジコンカー、エンジンカーの披露と説明)3. 以上の事を踏まえ、2008年度レッツサイエンスのプログラムでは、期間中の保護者向けの説明会を実施。内容:1.理論 全国幼児教育研究大会での発表内容。2.実践 子どもたちと同じ環境で材料を自由に選択いただき、自由に作る。4. 2008年度レッツサイエンス参加者へのアンケート調査参加園児32名説明会参加保護者18名設問3.『レッツサイエンスグループの活動は楽しかったですか』の設問に『とても楽しかった』88%、『楽しかった』12%と非常に好評であった。説明会の効果は、設問9.『レッツサイエンス説明会はいかがでしたか』の設問に、参加者18名全員の方が『とても良かった・良かった』と評価していただいた。さらに感想の中で、「いままでは、完成した物をほめていたが、この説明会の後では子どもの工夫やプロセスを見るようになった。子どものアイデアを褒めることができるようになった」など、指導者がわの意図が伝わっていた。設問13.『ものづくりを好きになりましたか(車に限らず)(園児回答者)』の問に保護者が説明会に参加した園児は、『とても好きになった』89%、『好きになった』11%と、保護者が不参加の園児は『とても好きになった』57%、『好きになった』43%という回答になった。このように、幼児時期に科学的遊びを体験すことは、世界的に問題視されている理系(技術者)不足への効果的な手段である。その科学的遊びには、幼児が主体的に『作る⇒遊ぶ(試行)⇒考える(学び、工夫)』のサイクルができる内容であり、自己有能感を持てるように関わることが大切である。さらに、保護者に対しても、内容や重要なポイントを十分に説明し、作ることの楽しさを体験していただくことも大切である。指導者と保護者が相互理解をはかり、子どもたちと向き合うことが重要である。
著者
石橋 宏之 太田 敬 杉本 郁夫 竹内 典之 永田 昌久 本多 靖明
出版者
日本静脈学会
雑誌
静脈学 (ISSN:09157395)
巻号頁・発行日
vol.13, no.3, pp.217-222, 2002 (Released:2022-06-11)
参考文献数
16
被引用文献数
2

ナットクラッカー症候群(左腎静脈捕捉症候群)は,左腎静脈が上腸間膜動脈と大動脈との間で圧迫され,左腎静脈還流障害から血尿,腰痛などを呈する疾患である.症例1:24歳,男.15歳時から肉眼的血尿と左側腰痛を認めた.貧血はなく,腎機能は正常であった.上腸間膜動脈-大動脈間距離は4mm,左腎静脈-下大静脈圧較差は6.8cmH2Oであった.症例2:16歳,男.11歳時から肉眼的血尿を認めた.軽度貧血があったが,腎機能は正常であった.上腸間膜動脈-大動脈距離は6mm,左腎静脈-下大静脈圧較差は5.4cmH2Oであった.いずれも左腎静脈転位術を行った.症例1は症状が消失した.症例2は吻合部が閉塞したが,保存的治療により軽快した.左腎静脈転位術は,左腎静脈が下大静脈に流入する部位を切離し,大動脈-上腸間膜動脈間距離が広い尾側に再吻合するものである.侵襲も少なく,確実な術式であるが,2例目が閉塞したのは反省すべき点であった.
著者
山口 晃弘 蜂須賀 喜多男 堀 明洋 廣瀬 省吾 深田 伸二 宮地 正彦 碓氷 章彦 渡辺 英世 石橋 宏之 加藤 純爾 神田 裕 松下 昌裕
出版者
Japan Surgical Association
雑誌
日本臨床外科医学会雑誌 (ISSN:03869776)
巻号頁・発行日
vol.46, no.4, pp.455-463, 1985-04-25 (Released:2009-02-10)
参考文献数
23
被引用文献数
2 1 36

過去14年間に手術を行った消化管原発の悪性腫瘍は2,721例で,その内訳は胃癌1,904例,小腸悪性腫瘍34例,大腸癌783例で,このうち穿孔をきたした症例の頻度は胃癌18例(0.95%),小腸悪性腫瘍3例(8.8%),大腸癌36例(4.5%)であった. 胃癌穿孔例はすべて進行癌であり,組織学的には中分化型管状腺癌が多く, ps(+),脈管侵襲も高度な症例が多数を占めた.切除率は100%であったが治癒切除は4例(22.2%)にすぎなかった.手術直接死亡率は22.2%,累積5年生存率0%, 4年生存率6.7%であった. 小腸穿孔は3例にみられ組織学的にはすべて悪性リンパ腫であった. 3例のうち1例は手術死亡し,他の2例も8カ月以内に全身の悪性リンパ腫に進展し死亡した.小腸悪性リンパ腫の穿孔は予後が極めて不良と考えられた. 大腸癌には遊離穿孔と被覆穿孔がみられ,遊離穿孔は左側結腸癌,直腸癌に多く,被覆穿孔は右側結腸癌に多い傾向があった.癌の口側穿孔例が7例(19.4%)にみられ,すべて遊離穿孔であり,主病巣はS字状結腸より肛門側にみられた.大腸癌穿孔例は組織学的には高分化ないし中分化腺癌が大半を占め,深達度ssの症例が半数であった.治癒切除は穿孔例の50%に可能であったが,手術直接死亡率は16.7%ですべて細菌性ショックによるものであった.治癒切除例の累積5年生存率は59.6%であり,胃癌穿孔,小腸悪性リンパ腫穿孔例とくらべはるかに良好な成績が得られた.大腸癌穿孔例では全身状態を考慮し,より積極的に根治手術を行うことが望ましいと考えられた.
著者
近藤 哲 蜂須賀 喜多男 山口 晃弘 堀 明洋 広瀬 省吾 深田 伸二 宮地 正彦 碓氷 章彦 渡辺 英世 石橋 宏之 加藤 純爾 神田 裕 松下 昌裕 中野 哲 武田 功 小沢 洋
出版者
一般社団法人日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.17, no.11, pp.1987-1995, 1984-11-01
被引用文献数
23

原発性十二指腸癌7切除例を対象として臨床的検討を行った. 5例は UGI, 内視鏡, 生検の3者で診断可能であったが, 2例は膵癌の十二指腸浸潤との鑑別が困難であった. しかし US と CT で膵癌を否定しえた. 血管造影では4例中2例が十二指腸原発と確認しえた. さらに切除可能性, 根治性を推定するのに有用であった. リンパ節転移は全例に認められ, 非治癒切除4例中3例の非治癒因子, 治癒切除後再発2例中1例の再発因子となっていたした. したがって, 乳頭上部癌では膵頭部癌第1群リンパ節郭清をともなう膵頭十二指腸切除を原則とし, 乳頭下部癌では腸間膜根部リンパ節をより徹底郭清し状況によっては血管合併切除再建が必要と思われた.
著者
神田 裕 蜂須賀 喜多男 山口 晃弘 磯谷 正敏 石橋 宏之 加藤 純爾 松下 昌裕 小田 高司 原川 伊寿
出版者
一般社団法人日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.19, no.10, pp.2121-2124, 1986-10-01
被引用文献数
13

1970年から1984年までに経験した大腸癌834例のうち手術直接死亡率に差がみられた75歳以上の高齢者大腸癌144例(17.3%)の臨床的特徴,手術に対するrisk factorを検討した.高齢者群は対照群に較べて全身性疾患やイレウス,穿孔などの腫瘍による合併症を有するものや緊急手術例が多いために切除率は低く,遠隔成績も不良であった.イレウス,穿孔などの腫瘍による合併症を伴ったものの手術死亡率は19.3%(11/57)と高率でもっとも大きなrisk factorと考えられた.しかし,手術侵襲の大きさと手術死亡に相関がなく,イレウス,穿孔例の二期切除例に手術死亡がないことを考慮すると高齢者といえども全身状態を把握して積極的に手術すべきと思われた.