著者
石田 和人 浅井 友詞 水口 静子 堀場 充哉 野々垣 嘉男 吉田 行雄 大藪 直子 和田 郁雄
出版者
公益社団法人日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.21, no.5, pp.340-346, 1994-09-30
被引用文献数
4

変股症でTHRを施行し長期経過した症例が, 生活の場において実際にしているADLの実態をとらえる目的で, 短期群(THR術後経過年数が1〜3年)10例, 中期群(5〜8年)9例, 長期群(10〜20年)9例の3群に分類し, ADLにおける諸動作の特徴を撮影したVTRより分析し検討した。結果, 術後のADL能力は比較的良好に保たれており, 高い満足が得られているが, 長期群では加齢に伴う活動性の低下から立位歩行能力等に問題が生じる例もあった。また, 術後経過の期間と無関係に, ADL上問題となる内容は, 立位歩行, 靴下着脱, 腰を床に降ろすの3点に集約された。変股症患者のADL能力は長期にわたり, その時点での股関節機能(特に可動性)に影響されるが, 加えて, 加齢にともなう活動性の低下なども影響しうる。よって, THR後の長期経過はX線学的問題のみならず, 生活の場で行っているADLの実態把握が重要である。
著者
濱川 みちる 高良 翔太 阿嘉 太志 濱崎 直人 宮里 好一 西野 仁雄 石田 和人 白木 基之 辺土名 まゆみ 安里 克己 仲程 真吾 山城 貴大 平山 陽介 秋月 亮二
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2015, 2016

【はじめに】中枢神経疾患由来の手指拘縮は,関節可動域拡大運動やストレッチなどを継続しても改善困難な症例が多く,進行すると手指の衛生不良や介護負担増などの負の連鎖を招く。今回,拘縮手改善のために開発された高反発クッショングリップ「ミラクルグリップ」(ホワイトサンズ社製)を回復期病棟入院患者・進行性疾患患者に試用し,良好な成績が得られたので報告する。【方法】脳血管疾患あるいは進行性神経疾患にて当院に入院または通院している者のうち,手指拘縮を認める4例を対象とした。グリップ着用前の状態として,症例Aは脳出血で入院(発症後6カ月),右上肢の拘縮と他動運動時痛,手指不衛生を認めた。症例Bは脳塞栓症で入院(発症後4カ月),左上肢の拘縮・他動運動時痛を認めた。症例Cは脳出血で入院(発症後4カ月),右上肢の痙性麻痺,手指炎症,他動運動時痛,白癬による悪臭・蒸れを認めた。症例Dは多系統萎縮症で通院(発症後16年),定期的なボトックス治療とPT・OTを継続していたが,両手指・手関節を中心に拘縮とかぶれを認めた。対象者には,通常の治療と併用して,ミラクルグリップのモニターとして拘縮手に1カ月間,24時間継続して着用していただいた。評価には,着用期間中の表情や手指衛生に加え,着用前・着用2週間後・1カ月後の拘縮側上肢の関節可動域(以下,ROM)を記録した。【結果】症例Aは着用前,痛みのため離床や理学療法も長期間拒否していたが,着用2日後より他動運動時の抵抗が軽減し理学療法も受け入れるようになった。6日後には爪切りや離床も可能となった。症例Bは着用2週間後に手・肘関節のROM拡大,1カ月後には肩関節のROM拡大が得られ,苦痛様表情も軽減した。症例Cは内服治療との併用にて,着用7日後には右上肢の筋緊張が全体的に軽減し,1カ月後には熱感や疼痛,悪臭の消失が得られた。症例Dは着用7日後より他動運動時の抵抗軽減,1カ月後にはかぶれ消失,ROM拡大が得られた。【結論】今回,手指拘縮患者に対しミラクルグリップを1カ月間使用し,拘縮の軽減,表情や手指衛生の改善が得られた。西野らはミラクルグリップの効果として,クッションの強い反発力と圧力のランダム性が,上肢全体・顔面の血流を増加させ,脳血流も増加することを示している。また筋電図では,上肢屈筋群だけでなく伸筋群の筋活動量も増加すると報告している。今回のROMや表情の改善も同様の作用によるものと考える。また手指衛生の改善は,グリップのもつ高い通気性・抗菌消臭作用が拘縮改善と相まってもたらした効果と考えられる。本研究により,回復期病棟入院患者や進行性疾患患者という,病期により症状が変化する患者においても良好な成績が得られることが分かった。しかしモニター試用という条件上,シングルケースデザインを導入できなかったため,効果の持続性についてはさらなる検証が必要である。今後,ミラクルグリップが治療手段の一つとして病期にかかわらず広く利用され,効果を発揮することが大きく期待される。
著者
浅井 友詞 野々垣 嘉男 谷田 武喜 水口 静子 石田 和人 堀場 充哉 和田 郁雄 水谷 武彦 水谷 陽子
出版者
公益社団法人日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.23, no.4, pp.191-195, 1996-05-31
被引用文献数
2

大腿四頭筋部における超音波断層法(以下US法)の最適測定部位および有用性について検討した。方法は,患肢,健肢に対してコンピュータ制御式筋力測定装置により等速性膝伸展最大筋力,超音波断層装置により膝蓋骨上縁5,10,15,20,25cm位の筋肉厚およびコンピュータトモグラフィーにより筋断面積を求めた。結果,筋力と筋肉厚の間には10,15cm位で有意な相関がみられ,筋断面積と筋肉厚の間には10cm位に有意な相関がみられた。したがって,US法の最適測定部位は10,15cm位と思われた。また,臨床の場において筋力の発生には,心理的要因,神経的要因が関与するため,筋の絶対筋力を計測することは困難である。そこでUS法は,筋力,筋断面積を反映し,筋の萎縮あるいは筋の回復を推察するために有用であると考えられた。