著者
石黒 宗秀 岩田 進午
出版者
社団法人 農業農村工学会
雑誌
農業土木学会誌 (ISSN:03695123)
巻号頁・発行日
vol.56, no.10, pp.1017-1024,a2, 1988-10-01 (Released:2011-08-11)
参考文献数
17
被引用文献数
1

土は, 種々のイオンを吸着するため, それらのイオンの流出を妨げたり遅らせたりする。肥料成分や有害な重金属も, イオンのかたちで土に吸着されるため, 施肥効率をよくしたり, 環境保全を図るためには, 土中でのイオン交換吸着現象の知識が重要となる。ここでは, 土のイオン吸着メカニズムを, ミクロな立場から土粒子の特性を探ることによって明らかにする。また, イオン移動に及ぼす影響について述べ, 吸着力の強弱によるイオン移動の差異について触れる。
著者
赤江 剛夫 後藤 光喜 石黒 宗秀
出版者
社団法人 農業農村工学会
雑誌
農業土木学会論文集 (ISSN:03872335)
巻号頁・発行日
vol.2002, no.219, pp.357-364, 2002-06-25 (Released:2011-08-11)
参考文献数
17

農地土壌の濁水発生防止は, 農地整備事業の実施に当たり極めて重要な問題である.本論文では, 農地土壌の分散性を規定する支配的な基礎的物理化学特性を明らかにするため, 中国四国地方の代表的な土壌型の農地土壌の粘土分散率を評価して基礎的特性との関係を検討した.その結果, 比表面積と陽イオン交換容量と粘土分散率の相関が高いことを見いだし, その原因を分散凝集理論に基づく表面電位の変化, および沈降に対する安定性の観点から考察した.表面電位の計算では, 塩・電位差滴定法により求めた永久荷電量を面荷電とした.また, 比表面積が大きく粒径の小さい土壌ほど沈降に対する動的安定性が高いことが推定された.農地土壌に石膏を添加すると凝集が促進され, 粘土分散率が低下したが, 石膏添加が表面の荷電特性にどのような影響を与えるかを検討した.石膏添加による凝集効果が大きい土壌では, 面電位の変化量およびpHで決まる粒子端電位の変化が大きいことが認められた.
著者
石黒 宗秀 コパル ルーク
出版者
農業農村工学会
雑誌
農業土木学会誌 = Journal of the Agricultural Engineering Society, Japan (ISSN:03695123)
巻号頁・発行日
vol.68, no.1, pp.75-82, 2000-01-01
参考文献数
13
被引用文献数
6

固体表面に対する液体のなじみやすさを,"ぬれ" といい, 土の保水性・浸潤は, ぬれと関連する。土は, 一般に水を良く吸収するが, 水をはじく土も確認されている。ここでは, 土のぬれに関連する諸現象の理解を深める目的で, ぬれを熱力学的に解釈した。固液界面の接触角がぬれの程度を表し, 毛細管中の液体の毛管上昇高を決定すること, 接触角や毛管上昇高は, 表面張力の大きさで決まること, 表面張力が分子間引力に密接に関連するものであることを示した。また, 固体表面への水蒸気吸着と接触角の関係をギブスの吸着式を用いて解釈した。土への水の浸潤が, 接触角に影響されること, 浸潤速度から土の接触角が測定できることを示した。
著者
石黒 宗秀 大島 広行 小林 幹佳 森崎 久雄 田中 俊逸
出版者
日本土壌肥料学会
雑誌
日本土壌肥料学雑誌 (ISSN:00290610)
巻号頁・発行日
vol.85, no.3, pp.274-278, 2014

土壌は,多量の電荷を持っており,多い場合は, 1m3あたり1 億クーロンに達する.これは, 1kW の電気ストーブを120 目問つけっぱなしにして流れる電気量に相当する.これに起因する特性は,土壌に様々な現象を引き起こす.アロフェン質火山灰土下層土にイオン溶液を種々pH で浸透させると,pH が高くなるほどカチオンは流出が遅れ,アニオンは流出が速くなる.これは,pH が高くなるほどアロフェン質火山灰土の負電荷量が増え,正電荷量が減ることにより,静電吸着量が変化するためである.アロフェン質火山灰土(B 層)をカラムに均一に充填し,種々のpH の1mM 塩化ナトリウム溶液を飽和浸透させて,その飽和透水係数を測定した.図1 に示すようにpHが高くなったり,低くなったりすると,飽和透水係数が小さくなる.これらの原因を検討するため,土壌の分散凝集実験を行った.1mM 塩化ナトリウム溶液中に土壌を加え,種々pH に平衡させて良く振とうし,振とう直後の濁りと,振とう静置12 時間後の濁りを濁度計で測定したところ,pH4 以下およびpH 10 以上で良く分散し,その間のpHでは凝集した.土壌が分散するのは,電気的反発力が発生するためである.分散しやすい条件では,土粒子表面近傍に形成される拡散電気二重層が厚くなり,そのため,土粒子同士が接近した状態では,拡散電気二重層が重なる.その状態においては,粒子間の濃度が外液中の濃度より高まるため,浸透圧差により土粒子間に反発力が働く.この電気的反発力の大きさを評価するため,ゼータ電位(土粒子近傍の電位)を用いて電気的反発ポテンシャルエネルギーを計算した.分散条件では,大きな値となり,凝集条件では小さな値を示し,飽和透水係数の変化と良く対応した.飽和透水係数が低下するのは,その溶液条件で電気的反発力が大きくなり土粒子が分散して,粗間隙を目づまりさせたためである.土壌の電荷特性とイオンの吸着状態は,イオン移動の遅速,土壌構造の変化,透水性の変化をもたらすため,養分移動,汚染物質移動,土壌侵食,農地の水利用,流域の水・物質循環等の農業や環境問題と密接に関係する.また,有機物で覆われた土粒子や微生物は,柔らかいコロイド粒子として,その界面電気特性を捉える重要性が指摘されるようになり,関連する現象の理解と応用が進展している.2013 年名古屋大会でのシンポジウムでは,界面電気現象の基礎理論を平易に解説した.そして,測定法と現状における課題,微生物の固体表面への付着,汚染土壌の修復技術についての研究の講演へと繋げた.難解なイメージがあり敬遠されがちな界面電気現象の基礎を理解し,今後の基礎及び応用研究の展開をもたらす機会となればと考える.
著者
赤江 剛夫 諸泉 利嗣 守田 秀則 石黒 宗秀 濱田 浩正 濱田 浩正
出版者
岡山大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

(1)インド洋津波による農地海水被曝事例を調査した。衛星画像と地形情報を用いて被害域を推定する方法を提案した。(2)現地除塩枠試験により、海水被曝地の除塩方法として湛水リーチング法が最も効果的であることを見出した。(3)湛水リーチングによる除塩用水量を評価する除塩特性指標を提案し、その有用性をカラム実験と数値シミュレーションで確認した。(4)除塩特性指標を対象地域にマッピングし、人為的な除塩必要性を判定した。(5)沿岸低平農地の除塩のための最適用水配分の策定法を開発した。