著者
野村 和孝 嶋田 洋徳 神村 栄一
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
認知行動療法研究 (ISSN:24339075)
巻号頁・発行日
vol.46, no.2, pp.121-131, 2020-05-31 (Released:2020-10-23)
参考文献数
30

わが国の司法・犯罪分野・嗜癖問題の認知行動療法(CBT)の実践として、2017年に創設された公認心理師がその職責を果たすためには、CBTの実践を精査し今後の課題を明らかにすることが必要である。本稿ではわが国における司法・犯罪分野の心理に関する支援を要する者の特徴と支援の枠組みを網羅的に概観し、CBTの実践における課題を検討した。そこで、プロセス指標の評価、グループワークの展開方法、抵抗や否認への対応、認知的介入、レスポンデント条件づけ、および施設内処遇と社会内処遇との連携に基づく介入の六つについて、知見を蓄積していくことが提案された。いずれの課題についても、司法・犯罪分野・嗜癖問題における支援効果を高めるために、個人と環境の相互作用の観点を持つCBTの理解の枠組みで取り組み知見を蓄積していくことが期待される。
著者
田中 圭介 神村 栄一 杉浦 義典
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.22, no.2, pp.108-116, 2013-11-30 (Released:2013-12-04)
参考文献数
36
被引用文献数
4

近年,マインドフルネス・トレーニング(MT)は,全般性不安障害や心配への介入法として注目されている。MTは,マインドフルネス傾向や脱中心化,注意の制御を媒介して,不安や抑うつに作用することが示唆されている。しかし,これらの媒介変数が,心配に作用する過程については,いまだ検討されていない。本研究では大学生を対象に質問紙調査(N=376)を行い,心配に対する注意の制御,マインドフルネス傾向,脱中心化の影響について検討を行った。共分散構造分析の結果,注意の制御を外生変数とした場合に最もモデル適合度が高いことが示された。さらに,注意の制御は,マインドフルネス傾向と脱中心化を媒介して,心配の緩和に繫がることが明らかとなった。これらの結果から,MTが心配に作用する際には,注意の制御の増加が体験との関わり方(マインドフルネス傾向,脱中心化)を改善し,心配を低減させる作用プロセスが想定される。
著者
坂野 雄二 久保 義郎 神村 栄一
出版者
早稲田大学
雑誌
早稲田大学人間科学研究 (ISSN:09160396)
巻号頁・発行日
vol.6, no.1, pp.11-18, 1993-03-25

The purpose of this study was to examine the effects of individual differences in an imaginal ability and presentation of prompting film on self-regulation of peripheral skin temperature and heart rate. Two hundred and fifty students completed Sophian Scale of Imagery (SSI), and 32 students who had extremely high or low imaginal ability participated in an experiment, in which they were asked to regulate their peripheral skin temperature and heart rate using mental imagery. Ss were assigned to one of the following four groups: high imaginal ability with warm film presentation (HW), high imaginal ability with neutral film (HN), low imaginal ability with warm film (LW), and low imaginal ability with neutral film (LN). The major findings were as follows; (a) warm film had significant effects on the increase of skin temperature, (b) the difference of imaginal ability had no effect on both temperature and heart rate regulation. These results indicate the response-specificity of regulation-prompting imagery.
著者
松岡 紘史 神村 栄一
出版者
一般社団法人 日本認知・行動療法学会
雑誌
行動療法研究 (ISSN:09106529)
巻号頁・発行日
vol.31, no.2, pp.147-157, 2005-09-30 (Released:2019-04-06)

本研究の目的は、ディストラクションが痛みに及ぼす効果を、注意の限界容量モデルと反応予期仮説の観点から検討することであった。実験参加者30名は、High-Distraction(HD)群、 Low-Distraction(LD)群、統制群の3群に無作為に分けられ、10℃の冷水に48秒間手を浸す課題を合計3回行った。第2、3試行で、HD群には、3秒に1題のペースで3つの1桁の数値の加算が要求される課題、 LD群には6秒に1題のペースで偶数・奇数の判断を行う課題にそれぞれ取り組むことが要求された。統制群は、課題を要求されなかった。ディストラクションが痛みの体験に及ぼす効果を検討したところ、ディストラクション課題への集中度が主観的痛みと主観的不快感に影響を与え、不快感の予期得点が主観的不快感に影響を与えていた。しかし、課題の難易度についての評価は、主観的痛み、および主観的不快感いずれに対しても影響していなかった。