- 著者
-
神谷 哲司
- 出版者
- 一般社団法人 日本教育心理学会
- 雑誌
- 教育心理学研究 (ISSN:00215015)
- 巻号頁・発行日
- vol.68, no.2, pp.160-173, 2020-06-30 (Released:2020-11-03)
- 参考文献数
- 59
- 被引用文献数
-
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本研究では,世界的に自立した消費者であることが求められるようになっている中,ファイナンス効力感尺度の開発を目的とした。インターネット調査によって収集された20代から60代の男女689名を分析対象とした。因子分析の結果,ファイナンス理解,日常的計画性,適切なローン・クレジットの取引,ライフプラン設計,金融商品・高額商品の検討の5次元から構成される29項目が抽出され,各次元の内的整合性,ファイナンスに関する知識,満足感,行動ならびに,特性的自己効力感およびLocus of Controlによる併存的妥当性,再検査法による信頼性の検討で十分な値が得られた。ただし,再調査時のデータによる探索的因子分析結果では,5因子に収束せず,3因子が示された。また,年代,性別,婚姻状況による検討では,すべての尺度で年長世代の方がより得点が高いこと,また,ファイナンス理解,日常的計画性,金融商品・高額商品の検討で性差が見られ,適切なローン・クレジットの取引,ライフプラン設計,金融商品・高額商品の検討については非婚者よりも既婚者の方が高いことが示された。以上より,因子構造の安定性に課題は残るものの,一定程度の妥当性と信頼性が確認された。