著者
橋本 佳延 栃本 大介 黒田 有寿茂 田村 和也 福井 聡
出版者
日本緑化工学会
雑誌
日本緑化工学会誌 (ISSN:09167439)
巻号頁・発行日
vol.39, no.3, pp.395-399, 2013 (Released:2014-12-11)
参考文献数
25
被引用文献数
1

良好に管理されているススキ草原の種多様性がシカの採食によって受ける影響を明らかにするために,シカ高密度化が進む兵庫県神河町の砥峰高原ススキ草原にて防鹿柵を設置し,柵内外の出現種の出現頻度・平均被度を調査した。結果,ススキ以外の草本種種数は防鹿柵区の方が約4 種多かった(p<0.05)。ススキ以外の草本植物被度は防鹿柵区で4.0 ポイント高く(p<0.05),広葉草本被度は防鹿柵区の方が4.9 ポイント高かった(p<0.001)。防鹿柵区での平均被度が有意に高い種(種群A)は2 種,防鹿柵のみに出現した種(種群B)は8 種確認された。防鹿柵と無柵区との間に生じる広葉草本の被度の差違への寄与率は種群A が27%,種群B が11 %だった。このことから,シカの採食はススキ草原の種多様性に対して負の影響をもたらし,その影響は特定の種に対して顕著に及ぶ可能性があると考えられた。シカの高密度生息地域では,管理により良好に維持されているススキ草原であっても,シカの採食により植物の種多様性が低下する恐れがある事が示唆された。
著者
塚本 修巳 雨宮 尚之 福井 聡 小川 純
出版者
横浜国立大学
雑誌
基盤研究(S)
巻号頁・発行日
2002

交流損失を現状より1桁低減できれば高温超伝導の応用分野が大きく広がる.本研究はこのような観点に立ち,超伝導の微細構造における電磁現象の研究に基づき,線材,集合導体,巻線の各構造を互いに関連付けて統合的に交流損失の大幅低減を図る手法を研究し,高温超伝導を交流電気機器に応用するための要素技術を体系化することを目的とした.具体的な研究課題は,1.機器における磁気環境下での交流損失の評価法を確立すること,2.機器における電磁環境下での交流損失の大幅な低減手法を明らかにすること,3.ロバストかつ高い超伝導性能を発揮する巻線構成手法を明らかにすること,である.本研究の主な成果を下記に要約する.1.線材全交流損測定法:交流磁界下で交流通電したとき線材に生じる全損失の電気的測定法を開発した.熱的方法と同時に測定することにより,本方法の妥当性検証を行った.これにより,線材の交流損失測定法の確立をした.2.擬似ツイスト導体による磁化損失低減:斜にYBCO層を分割した2枚のテープ線材を張り合わせ,実質的に撚りの効果を得る方法,擬似ツイスト導体を提案した.これにより,分割数を増やすことにより交流損失を1桁以上減らすことが可能であることが示された.3.集合導体の損失測定法開発:我々の開発した集合導体の損失測定法により,非磁性基板Y系線材の場合,隣接線材の作る磁界により損失が単独通電時の値より1桁程度小さくなっていることがわかった.これにより,線材の並べ方により損失が大幅に減少することが示された.4.巻線の交流損失低減最適構造:高温超伝導テープ線材の損失データより交流損失を近似的に解析する手法を開発し,巻線の断面形状の最適設計方法を示した.5.Y系線材のクエンチ保護:Y系線材を用いたコイルのクエンチ保護のための導体の安定化設計法が明らかにした.以上により,上述の研究の目的はほぼ達成できた.