著者
近藤 諒平 田安 義昌 佐々木 奈美 福原 隆志
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.36, no.5, pp.711-716, 2021 (Released:2021-10-20)
参考文献数
18
被引用文献数
1

〔目的〕回復期リハビリテーション病棟入院患者の入院3週間以内の初回評価情報から,退院時の歩行自立を予測するための予測チャートを作成すること.〔対象と方法〕当院回復期リハビリテーション病棟に入院した患者163例を対象として,初回評価時の身体機能,認知機能,バランス能力,日常生活自立度から退院時の歩行自立を予測するための決定木を求めた.〔結果〕初回評価時の最大歩行速度,Hasegawa Dementia Rating Scale-Revised(HDS-R),Berg Balance Scale(BBS)が有意な予測因子として抽出され,退院時の歩行自立を予測するための決定木が得られた.〔結語〕認知機能が低下した患者を含めた回復期リハビリテーション病棟入院患者の退院時歩行能力は,初回評価時の最大歩行速度,HDS-R,BBSを組み合わせることで予測できることが示唆された.
著者
宇賀 大祐 遠藤 康裕 森本 晃司 福原 隆志 中澤 理恵 坂本 雅昭
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2012, pp.48101342, 2013

【はじめに、目的】 野球選手において,肩関節障害はパフォーマンス低下や選手生命を左右する問題であり,その予防が重要となる.障害発生要因の一つとして,肩関節内外旋筋力バランスの不良があり,特に肩関節外旋筋力低下が問題になる.また,回旋筋腱板の付着部位である肩甲骨の安定化が重要視されているが,肩甲骨周囲筋の筋活動を報告したものは上肢挙上運動時のものがほとんどであり,外旋運動時の筋活動を報告したものは少ない.さらには,異なる上肢挙上角度における肩関節外旋運動時の肩甲骨周囲筋や棘下筋の筋活動特性を報告したものはほとんどないため,本研究では,表面筋電図を用いて,それらを明確にすることを目的とした.【方法】 肩関節に整形外科的疾患を有さない健常男性20名(年齢22.4±1.5歳,身長172.9±4.4cm,体重67.1±5.8kg)40肩を対象とした.表面筋電図の記録および解析は,能動電極(DL-141, S&ME Inc.),データ収録システム(Powerlab 16/35, AD Instruments),解析ソフトウェア(LabChart7,AD Instruments)を使用し,サンプリング周波数1,000Hz,デジタルフィルタは10-500Hzの帯域通過とした.被検筋は棘下筋,僧帽筋上部線維,僧帽筋中部線維,僧帽筋下部線維,前鋸筋の5筋とした.測定課題は,肩関節最大等尺性外旋運動とし,上肢下垂位,肩甲骨面45度,90度,135度挙上位の4肢位で実施した.体幹部をベルトで固定した椅座位にて,肘関節90度屈曲位,肩関節内外旋中間位とし,上腕遠位部は安定した台の上に設置させた.測定は5秒間実施し,中3秒間の各筋の波形の実効値を算出し,肩関節外旋運動時の筋活動量を求めた.筋活動量は,最大等尺性随意収縮(Maximum Voluntary Contraction:MVC)時の筋活動量で正規化し,%MVCとした.各肢位3回ずつ測定し,その平均値を算出した.算出項目は,各肢位における5筋の筋活動量および棘下筋の筋活動量に対する各肩甲骨周囲筋の筋活動量(以下,筋活動比)とした.統計学的処理は,IBM SPSS Statistics 21.0を使用し,各肢位における同筋の筋活動量および筋活動比の比較を,Friedman検定を行った後, Bonferroniの方法に基づいて有意確率を調節したWilcoxonの符号付き順位検定を用いて多重比較を行った.有意水準は5%とした.【倫理的配慮、説明と同意】 対象者には本研究の目的および内容, 対象者の有する権利について十分な説明を行い, 参加の同意を得た上で測定を実施した.【結果】 各肢位における筋活動量の比較では,棘下筋は97.3~64.8%MVCと挙上角度増加に伴い有意に筋活動が減少した.僧帽筋上部線維は,いずれの肢位においても有意差は認められなかった.僧帽筋中部線維および僧帽筋下部線維は,それぞれ59.1~41.0%MVC,70.9~54.7%MVCと,挙上角度増加に伴い筋活動が緩やかな減少傾向を示した.前鋸筋は,22.7~59.4%MVCと挙上角度増加に伴い筋活動が増加傾向を示した.各肢位における筋活動比の比較では,僧帽筋中部線維および僧帽筋下部線維は,それぞれ0.63~0.78,0.81~0.93と全挙上角度においてほぼ一定した筋活動比を示したが,僧帽筋上部線維および前鋸筋はそれぞれ0.31~0.65,0.24~0.99と挙上角度増加に伴い筋活動比が増加した.【考察】 肩関節外旋筋である棘下筋の効率的な外旋トルク発生のためには,付着部位である肩甲骨の安定化が重要であり,肩甲骨周囲筋の協調的な作用が重要となる.今回の結果から,僧帽筋中部線維および下部線維は,全挙上角度において,棘下筋に対し中等度以上の一定した活動をすることが分かった.また,挙上角度増加に伴い前鋸筋の貢献度が大きくなった.僧帽筋中部線維および下部線維は,棘下筋や前鋸筋による肩甲骨外側偏位力に抗して常に内側に引きつける作用として重要と考える.今回の測定方法では,挙上角度増加に伴いゼロポジションに近似した肢位となる.ゼロポジション肢位は,筋線維の配列から,本来上腕骨の回旋が生じないとされているため,外旋トルク発生には肩甲骨の後傾運動も必要となる.前鋸筋は肩甲骨後傾作用を有する唯一の筋であるため,挙上角度増大に伴い筋活動が増加したと考えられ,肩甲骨安定化,外旋トルク発生の両方の働きを担ったと考えられる.肩関節は可動範囲が大きく,特に野球などのオーバーヘッドスポーツにおいては,挙上位での動作が要求される.このような対象者のより動作を想定した評価およびトレーニングを実施するためには,一定の角度のみでなく,様々な挙上角度で実施することが重要であると考えられる.【理学療法学研究としての意義】 肩甲骨安定化には多数の筋が貢献するが,上肢挙上角度の変化に伴いそれらの筋の貢献度が異なり,また回旋トルクの力源にもなりうるため,様々な上肢挙上角度での評価の重要性や,目的動作に応じた挙上角度を設定してトレーニングすることの重要性が示された.
著者
福原 隆志 坂本 雅昭 中澤 理恵 川越 誠 加藤 和夫(MD)
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.40 Suppl. No.2 (第48回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.48101862, 2013 (Released:2013-06-20)

【はじめに、目的】足関節底背屈運動時には,腓骨の回旋運動が伴うとされている.しかしながら,回旋方向についての報告は一定の見解を得ていない.また,先行研究は屍体下肢を用いての報告がほとんどであり,生体を対象にした報告はほとんど行われていない.本研究の目的は,Bモード超音波画像を用い,足関節底背屈運動時の腓骨外果の回旋運動について検討するものである.【方法】対象は,足関節に既往のない健常成人男女5名(24.6±2.5歳)の足関節10肢とした.測定姿位は,長坐位にて膝30°屈曲位とした.超音波画像診断装置(LOGIQ e,GEヘルスケア,リニア型プローブ)を用い,腓骨外果最下端より3cm近位部にて足関節前外方よりプローブを当て,短軸像にて脛腓関節を観察した.被験者は自動運動にて足関節背屈及び底屈運動を行った.足関節最大背屈時及び足関節最大底屈時において,脛骨及び腓骨の運動方向を画像上にて確認した.また脛骨及び腓骨間の距離を画像上にて0.01cm単位で測定した.さらに脛骨及び腓骨の接線を描画し,両者の成す角を0.1°単位で測定した.なお,測定は1肢につき3回行い平均値を測定値とした.なお,測定はすべて同一検者1名で行った.統計学的解析方法として,足関節背屈時と底屈時に得られた測定値についてWilcoxonの符号付順位和検定を用い検討した.解析にはSPSS ver.17を使用し,有意水準を5%とした.【倫理的配慮、説明と同意】対象者全員に対し,研究の趣旨について十分に説明し,書面にて同意を得た.【結果】全ての被験者において,関節背屈時に腓骨の外旋が観察された.また,足関節底屈時には腓骨の内旋が確認された.脛骨及び脛骨間の距離は,底屈時では0.27±0.08cm,背屈時では0.36±0.13cmであり,底屈時と比べ背屈時では有意に距離は開大していた(p<0.01).脛骨及び腓骨の接線の成す角は,底屈時では4.8±5.8°,背屈時では10.0±6.42°であり,底屈時と比べ背屈時では有意に角度は増加していた(p<0.01).【考察】足関節の運動学は理学療法実施上,注目すべき重要なポイントであると考えられる.しかしながら足関節底背屈運動時における腓骨の運動方向について,これまで一定の見解を得ていなかった.今回の結果から足関節の自動運動時において,背屈時には腓骨は脛骨に対し外旋し,底屈時には内旋することが明らかとなった.今回の知見を活かすことで,足関節に対する理学療法実施の際,より適切なアプローチを実施することが可能となると思われる.【理学療法学研究としての意義】本研究は足関節底背屈運動に伴う脛腓関節の運動について明らかにし,適切な理学療法実施のための一助となる研究である.
著者
福原 隆志 坂本 雅昭 中澤 理恵 川越 誠 加藤 和夫(MD)
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2012, pp.48101862, 2013

【はじめに、目的】足関節底背屈運動時には,腓骨の回旋運動が伴うとされている.しかしながら,回旋方向についての報告は一定の見解を得ていない.また,先行研究は屍体下肢を用いての報告がほとんどであり,生体を対象にした報告はほとんど行われていない.本研究の目的は,Bモード超音波画像を用い,足関節底背屈運動時の腓骨外果の回旋運動について検討するものである.【方法】対象は,足関節に既往のない健常成人男女5名(24.6±2.5歳)の足関節10肢とした.測定姿位は,長坐位にて膝30°屈曲位とした.超音波画像診断装置(LOGIQ e,GEヘルスケア,リニア型プローブ)を用い,腓骨外果最下端より3cm近位部にて足関節前外方よりプローブを当て,短軸像にて脛腓関節を観察した.被験者は自動運動にて足関節背屈及び底屈運動を行った.足関節最大背屈時及び足関節最大底屈時において,脛骨及び腓骨の運動方向を画像上にて確認した.また脛骨及び腓骨間の距離を画像上にて0.01cm単位で測定した.さらに脛骨及び腓骨の接線を描画し,両者の成す角を0.1°単位で測定した.なお,測定は1肢につき3回行い平均値を測定値とした.なお,測定はすべて同一検者1名で行った.統計学的解析方法として,足関節背屈時と底屈時に得られた測定値についてWilcoxonの符号付順位和検定を用い検討した.解析にはSPSS ver.17を使用し,有意水準を5%とした.【倫理的配慮、説明と同意】対象者全員に対し,研究の趣旨について十分に説明し,書面にて同意を得た.【結果】全ての被験者において,関節背屈時に腓骨の外旋が観察された.また,足関節底屈時には腓骨の内旋が確認された.脛骨及び脛骨間の距離は,底屈時では0.27±0.08cm,背屈時では0.36±0.13cmであり,底屈時と比べ背屈時では有意に距離は開大していた(p<0.01).脛骨及び腓骨の接線の成す角は,底屈時では4.8±5.8°,背屈時では10.0±6.42°であり,底屈時と比べ背屈時では有意に角度は増加していた(p<0.01).【考察】足関節の運動学は理学療法実施上,注目すべき重要なポイントであると考えられる.しかしながら足関節底背屈運動時における腓骨の運動方向について,これまで一定の見解を得ていなかった.今回の結果から足関節の自動運動時において,背屈時には腓骨は脛骨に対し外旋し,底屈時には内旋することが明らかとなった.今回の知見を活かすことで,足関節に対する理学療法実施の際,より適切なアプローチを実施することが可能となると思われる.【理学療法学研究としての意義】本研究は足関節底背屈運動に伴う脛腓関節の運動について明らかにし,適切な理学療法実施のための一助となる研究である.
著者
佐々木 沙織 小保方 祐貴 菅谷 知明 河内 淳介 福原 隆志 中澤 理恵 坂本 雅昭 中島 信樹
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2013, 2014

【はじめに,目的】我々は,2004年度より高校サッカーメディカルサポートを開始し,2013年度で10年目を迎えた。県大会の全試合を対象に,会場本部における試合前・中・後のサポートを行ってきたが,近年はマンパワー不足により全会場にスタッフを配置することが困難となってきている。今後,継続してメディカルサポートを行っていくうえで,本研究会のメディカルサポートに対して需要の高い試合にスタッフを配置し,効率かつ効果的な運営を行う必要があると考える。そこで,群馬県高等学校体育連盟サッカー競技大会における準々決勝~決勝戦及び1~3回戦に対するサポート対応件数を調査し,試合レベルの違いとメディカルサポート対応件数との関係について検討した。【方法】対象は,2010年~2013年度に開催された群馬県高等学校体育連盟サッカー競技15大会881試合のうち,2010年度・2011年度に準々決勝~決勝戦でサポートを実施した8大会53試合(以下,準々決勝~決勝戦群)と,2012年度・2013年度に1~3回戦でサポートを実施した7大会315試合(以下,1~3回戦群)とした。調査項目はメディカルサポート対応件数とし,各群における1試合当たりの対応件数を求めた。メディカルサポートスタッフの募集は,群馬スポーツリハビリテーション研究会を通じてボランティア参加を集い,各会場1名以上の理学療法士を配置した。メディカルサポートの内容は,傷害に対するテーピング,アイシング,ストレッチング,止血処置,傷害確認,今後の指導とした。【倫理的配慮,説明と同意】本報告の目的及びデータ処理に関する個人情報保護について群馬県高等学校体育連盟サッカー専門部に十分説明し,同意を得たうえで実施した。【結果】準々決勝~決勝戦群の対応件数は50件であり,1試合当たりの対応件数は0.94件であった。1~3回戦群の対応件数は521件であり,1試合当たりの対応件数は1.65件であった。【考察】準々決勝~決勝戦群と比較して,1~3回戦群での1試合当たりの対応件数が多かった。その理由として,1~3回戦群はトレーナー不在のチームが多いことが予想され,会場に配置されたメディカルサポートへの要請が多かったのではないかと考える。今回の結果より,メディカルサポートへの需要は,準々決勝~決勝戦と比較して1~3回戦で高いということが確認された。過去の報告から,メディカルサポートを行っていくうえでスタッフのマンパワー不足が問題とされており,本研究会においても同様の問題が生じている。今回の結果から,1~3回戦におけるメディカルサポートへの要請が多く,それらの試合にサポートを集中させることで,より選手や監督のニーズに応えることが可能となると考える。また,スポーツ現場で理学療法士が活躍する機会が増えることで,メディカルサポート活動の普及につながるものと考える。メディカルサポートスタッフに対する勉強会や技術指導などの教育体制を確立し,メディカルサポートに興味のある理学療法士が参加しやすい環境を整えることで,スタッフの増員を図り,マンパワー不足を改善することが今後の課題である。【理学療法学研究としての意義】群馬県高校サッカーメディカルサポートにおける,試合レベルの違いと対応件数との関係性を調査した結果,準々決勝~準決勝と比較して1~3回戦においてメディカルサポートに対する需要が高いことが明らかとなった。本調査結果は,理学療法士によるメディカルサポート活動の普及のための有益な資料となると考える。