著者
佐藤 秀樹 前田 正治 小林 智之 竹林 唯
出版者
一般社団法人 日本健康心理学会
雑誌
Journal of Health Psychology Research (ISSN:21898790)
巻号頁・発行日
vol.35, no.2, pp.111-120, 2023-02-01 (Released:2023-02-17)
参考文献数
29

This study used text mining and examined workers’ psychosocial burdens caused by the COVID-19 pandemic. Employees in the Fukushima Branch of the Japanese Trade Union Confederation (RENGO Fukushima) and related workplaces responded to a web-based questionnaire survey. The survey inquired about psychosocial burdens caused by COVID-19, and the participants responded using a free-text format. We analyzed the responses of 215 respondents. Logistic regression analysis indicated a stronger association between female workers and severe psychological distress than male workers. In addition, correspondence analysis showed that workers with severe psychological distress used more words related to “income” and more first-personal pronouns such as “I” or “we.” In contrast, women with college-age children used more words related to “online college courses,” “burdens,” and “anxiety.” These results suggest that female workers with children experience significant stresses associated with their children, and workers with severe psychological distress experience psychosocial burdens related to their income.
著者
大類 真嗣 田中 英三郎 前田 正治 八木 淳子 近藤 克則 野村 恭子 伊藤 弘人 大平 哲也 井上 彰臣 堤 明純
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.67, no.2, pp.101-110, 2020-02-15 (Released:2020-02-22)
参考文献数
27

大震災の支援に当たった専門家による研究成果と経験に基づき,災害時のメンタルヘルスと自殺予防に資する留意点についてまとめた。支援の対象と支援方法の重点は,被災からの時期・段階によって変化する。とくに被災による避難時と避難指示解除時はともに留意が必要である。対象のセグメンテーションを行い,必要な支援を必要なタイミングで届ける必要がある。真に支援が必要な対象やテーマは表出されない場合があることに留意する。震災後に生まれた子どもや母親の被害,高齢者の認知症リスクも増えることが観察されている。被災者だけではなく,その支援を行う自治体職員や保健医療福祉職員のメンタルヘルスにも配慮する必要がある。避難地区だけでなく避難指示解除地区においても自殺率が高いという知見も得られている。教育や就労支援,社会的役割やサポートまで,総合的・長期的な支援が必要で,保健医療関係者だけではない分野横断的なネットワークの構築が平時から必要である。危機的な状況であるほど,なじんだ手段しか使えない。平時からの教育・訓練・ネットワーク化で被害の緩和を図っていく必要がある。
著者
大岡 由佳 辻丸 秀策 古里 百合子 鋤田 みすず 福山 裕夫 前田 正治
出版者
久留米大学
雑誌
久留米大学文学部紀要. 社会福祉学科編 (ISSN:13455842)
巻号頁・発行日
vol.4, pp.17-27, 2004-03

本論では,犯罪被害者に認められる心的外傷,なかんずく監禁被害者の心理的問題について,2000年に起こった西鉄バスジャック事件被害者の様子から考察した.マスコミ報道による資料のほか,実際の被害者の治療経過を提示し,Symonds Mによる4段階の心理反応期に基づいて,被害者の心理的変化を分析した.また,このような被害者に対する適切なケアや支援のあり方についても論じた.
著者
佐藤 秀樹 前田 正治 小林 智之 竹林 唯
出版者
一般社団法人 日本健康心理学会
雑誌
Journal of Health Psychology Research (ISSN:21898790)
巻号頁・発行日
pp.211104167, (Released:2022-08-30)
参考文献数
29

This study used text mining and examined workers’ psychosocial burdens caused by the COVID-19 pandemic. Employees in the Fukushima Branch of the Japanese Trade Union Confederation (RENGO Fukushima) and related workplaces responded to a web-based questionnaire survey. The survey inquired about psychosocial burdens caused by COVID-19, and the participants responded using a free-text format. We analyzed the responses of 215 respondents. Logistic regression analysis indicated a stronger association between female workers and severe psychological distress than male workers. In addition, correspondence analysis showed that workers with severe psychological distress used more words related to “income” and more first-personal pronouns such as “I” or “we.” In contrast, women with college-age children used more words related to “online college courses,” “burdens,” and “anxiety.” These results suggest that female workers with children experience significant stresses associated with their children, and workers with severe psychological distress experience psychosocial burdens related to their income.
著者
堀越 直子 大平 哲也 安村 誠司 矢部 博興 前田 正治 福島県県民健康調査「こころの健康度・生活習慣に関する調査」グループ
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.64, no.2, pp.70-77, 2017 (Released:2017-03-16)
参考文献数
21

目的 福島県立医科大学では,福島県からの委託を受け,東日本大震災による東京電力福島第一原子力発電所事故に伴う放射線の健康影響を踏まえ,将来にわたる県民の健康管理を目的とした「県民健康調査」を毎年実施している。そのうち,平成23年度「こころの健康度・生活習慣に関する調査」の生活習慣支援対象者(高血圧・糖尿病)に対し,看護師・保健師等が実施した電話支援の効果,特に次年度の調査票への回答および医療機関受診の勧奨効果を明らかにすることを目的とした。方法 平成23年度「こころの健康度・生活習慣に関する調査」の生活習慣支援対象者(高血圧・糖尿病)1,620人をベースラインデータとし,平成24年度「こころの健康度・生活習慣に関する調査」の結果との関連を縦断的に検討した。結果 平成23年度の生活習慣支援対象者で,電話支援を実施した者(以下,電話支援者)は1,078人,電話番号の未記載や留守等で電話支援を実施しなかった者(以下,電話未支援者)は542人であった。単変量解析の結果,電話支援実施の有無で,居住場所(P=0.001),教育歴(P<0.001),就業状況(P<0.001)に違いがみられた。 平成24年度調査票への回答者数は,電話支援者が616人(57.1%),電話未支援者が248人(45.8%)であり,電話未支援者に比べ電話支援者の平成24年度調査票回答率は高く,統計的に有意であった(P<0.001)。また,平成24年度調査票への回答の中で,医療機関に受診したと記載のあった者は,電話支援者が184人(29.9%),電話未支援者が68人(27.4%)であり,電話未支援者に比べ電話支援者の受診者の割合は高かったが,統計的に有意差はなかった。 多変量解析の結果,平成24年度調査票への回答には,電話支援を受けた者であることが有意に関連した(P=0.016)。結論 電話支援者は電話未支援者に比べ,次年度の調査票回答率が有意に高く,電話支援の取り組みは,調査票回答率の向上に有効であると考えられる。
著者
永井 雅人 大平 哲也 安村 誠司 高橋 秀人 結城 美智子 中野 裕紀 章 文 矢部 博興 大津留 前田 正治 高瀬 佳苗 福島県「県民健康調査」グループ
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.63, no.1, pp.3-10, 2016 (Released:2016-01-29)
参考文献数
24
被引用文献数
2

目的 東日本大震災による避難者において,生活習慣病が増加していることが報告されている。避難による生活環境の変化に伴い,身体活動量が減少したことが原因の一つとして考えられる。しかしながら,これまで避難状況と運動習慣との関連は検討されていない。そこで,福島県民を対象とした福島県「県民健康調査」より,避難状況と運動習慣の関連を検討した。方法 震災時に原発事故によって避難区域に指定された13市町村に居住していた,平成 7 年 4 月 1 日以前生まれの37,843人を解析対象者とした。避難状況は震災時の居住地(13市町村),避難先(県内避難・県外避難),現在の住居形態(避難所または仮設住宅,借家アパート,親戚宅または持ち家)とした。また,本研究では自記式質問票にて運動を「ほとんど毎日している」または「週に 2~4 回している」と回答した者を「運動習慣あり」と定義した。統計解析は,運動習慣がある者の割合を性・要因別(震災時の居住地,避難先,住居形態)に集計した。また,standard analysis of covariance methods を用いて,年齢,および震災時の居住地,避難先,住居形態を調整した割合も算出した。結果 運動習慣がある者の調整割合は,震災時の居住地別に男性:27.9~46.5%,女性:27.0~43.7%,と男女それぞれ18.6%ポイント,16.7%ポイントの差が観察された。避難先別では,男性で県外(37.7%),女性で県内(32.1%)においてより高かったが,その差は小さく男性:2.2%ポイント,女性:1.8%ポイントであった。住居形態別では,男女ともに借家アパート居住者が最も低く,避難所または仮設住宅居住者が最も高かった(男性:38.9%,女性:36.7%)。避難所または仮設住宅居住者に比し,借家アパート居住者で男性:5.4%ポイント,女性:7.1%ポイント,親戚宅または持ち家居住者で男性:2.0%ポイント,女性:4.2%ポイント,それぞれ低かった。結論 避難区域に指定された13市町村に居住していた者の運動習慣がある者の割合は,震災時の居住地および住居形態によって異なっていた一方,県内避難者と県外避難者との間では同程度であった。とくに借家アパートに居住している者における割合が低く,孤立した人々を対象とした新たな生活習慣病予防対策を立案・実行することが必要である。
著者
野村 恭子 松島 みどり 佐々木 那津 川上 憲人 前田 正治 伊藤 弘人 大平 哲也 堤 明純
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.69, no.9, pp.647-654, 2022-09-15 (Released:2022-09-10)
参考文献数
26

本稿では第80回日本公衆衛生学会総会において,「ウィズコロナ社会のメンタルヘルスの課題と対策」をテーマとしたシンポジウムに登壇した,大学生,妊産婦,一般労働者,医療従事者を対象にコロナ禍のメンタルヘルス対策の実践および研究を行っている公衆衛生専門家により,それぞれの分野における知見・課題・対策を報告する。コロナ禍におけるメンタルヘルスへの影響を各世代,各フィールドへの広がりを概観するとともに,ウィズコロナ時代でどのような対策が求められているのか,問題点を抽出,整理し,公衆衛生学的な対策につなげていくための基礎資料としたい。
著者
大岡 由佳 辻丸 秀策 大西 良 福山 裕夫 矢島 潤平 前田 正治
出版者
久留米大学
雑誌
久留米大学文学部紀要. 社会福祉学科編 (ISSN:13455842)
巻号頁・発行日
vol.6, pp.85-95, 2006-03

10年前の阪神淡路大震災を契機に,本邦においても消防隊員の惨事ストレスによるメンタルヘルスの悪化が論じられるようになってきた.実際,自然災害や火事などが頻発する中で,消防隊員の活躍は目覚ましいものがあるが,一方で,消防隊員の責任や負担は増大しており一般成人と比較して特異なストレス状況下にある.それにも関わらず,本邦では,消防隊員のメンタルヘルスに焦点を当てるようになったのは近年のことであり,消防隊員の全体像を把握し,対策を講じていくには確固とした調査報告が示されていない現状にある.本論文では,消防隊員のメンタルヘルスの全体像を把揺すべく,惨事ストレスを中心に調査を実施した.対象は,A市481名の現役消防隊員で,回答してもらった質問紙に関しては,多角的に統計処理し結果検討を加えた.その結果,消防隊員は,多くの者が職務に従事する中でストレスを感じており,35%の心身の不調と,12.2%のPTSD症状を呈する者が見受けられた.消防隊員の8割が精神的ケアを必要と考えていることからも,消防局はその地域に根ざした惨事ストレス対策を講じていく必要があることが明らかとなった.
著者
前田 正治
出版者
関西学院大学
雑誌
法と政治 (ISSN:02880709)
巻号頁・発行日
vol.25, no.3, pp.347-386, 1975-03-25

From some time ago, the writer has been aware the term "kenri(権理)" was used in some juridical books published in early Meiji Era. By chance, the difference between "kenri(権理)" and "kenri(権利)" was discussed at the Annual Meeting of Hoseishi Gakkai (Legal History Association), held in May, 1974,and it stimulated the writer to examine the problem in some detail. As a legal term, "kenri(権利)" had been used in China (then under the Chiang dynasty) in the Chinese translation of Wheaton's textbook on International Law. In 1869,this translation was introduced to Japan by the Maiji Government's Official Translator Mizukuri Rinsho(箕作麟祥), who first used the term "kenri(権利)" in Japan. Since then, this translation has been consistently used in Japanese laws and regulations as well as in other official documents. On the other hand, the term "kenri(権理)" was used, as far as this writer knows, in the books by Kato Hiroyuki(加藤弘之), Fukuzawa Yukichi(福沢諭吉), Furuzawa Shigeru(古沢滋), Ono Azusa(小野梓), Ozaki Yukio(尾崎行雄), Niwa Junichiro(丹羽純一郎) Suzuki Yoshimune(鈴木義宗) Fukumoto Tomoe(福本巴) Kamimura Tadanori(神村忠起) Kurimoto Teijiro(栗本貞次郎) and Kawashima Shozo(川島正三), which were published between 1870 and 1881. The authors of these books did not specify the difference between the two terms. Only Fukuzawa Yukichi used both of them in his book, giving us some clue to the precise meaning of each legal terms; by "kenri(権利)", Fukuzawa meant the general concept of right in modern law, and by "kenri(権理)", he intended to signify the conciousness of legal right held by the people since the feudal period. It should be noticed, furthermore, that those who used the term "kenri(権理)" belonged generally to the group that asserted "Jiyu Minken(自由民権democrtic rights)". It is well presumed that these enlightened authors, not following the official translation, "kenri(権利)", sought to find out the word which would be more logically satisfactory to them. Moreover, as most proponents of Jiyu Minken were of samurai class, they were influenced by the feudal-law consciousness, which had traditionally disliked "ri" (利secular profits) and respected "ri" (理reason), and even if they were staunch advocates of the democratic rights, they had an inevitable repugnance to the Western (Anglo-French) culture. It seems to the writer that these circumstances underlay their usage of the term "kenri(権理)".