著者
福田 ひとみ 香野 美佳 奥野 そのみ 勝川 路子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.25, 2013

【目的】食後血糖値の管理は糖尿病を始め生活習慣病の予防,治療に重要である。こんぶには旨味成分だけでなく,種々の機能成分を含む。先にラットに粉末こんぶを摂取させたところ,血糖上昇の抑制と糖・脂質代謝の改善が認められた。そこで,こんぶ粉末をケーキに用いて,人でも同様の効果がみられるかを調べるために,食べやすく,満足感のあるこんぶケーキを目指し試作した。そして,物性の測定と官能評価を行った。【方法】大学生(女性182人)に海藻類についてのアンケートを実施した。こんぶ粉末を使用したパウンドケーキを作り,加えないもの(対照)と物性を比較し,官能評価(26人,評点法)を行った。【結果】アンケートより,こんぶを毎日食べている人は1.8%と大変少なく,わかめの半分であった。週1回以上食べる人は44%であった。こんぶは,だし35%,昆布おにぎり22%,とろろ昆布18%,などに使われていたが,わかめと比べると料理の種類が少なかった。パウンドケーキは粉末こんぶの量を生地材料5〜10%と変化させて試作した。10%では塩味が強く,5%の方が評価は高かった。添加量5%のケーキでは,膨化率はこんぶの方がやや低く,水分量は多かった。密度に有意な差は無かった。評点法による官能評価では,色,きめ,甘さについてはいずれも高い評価であったが,対照の評価より低かった。しっとり感と歯触りはむしろこんぶの方が高く,総合的には同じ評価であり,対照ケーキと同程度のケーキを作ることができた。さらに,パウンドケーキを食べたときの血糖値の変化を測定(健常者5人)したところ,こんぶ添加ケーキで上昇が緩やかで,血糖上昇を抑制した。
著者
福田 ひとみ 勝川 路子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.30, 2018

【目的「あん」は和菓子に広く使用されているが、若者世代では和菓子離れが進み、それに伴い「あん」の消費が減少し続けている。「あん」には食物繊維が含まれており、便秘を含む健康問題にも有効な食品である。新しい「あん」の利用法を提案するために「あん」の市場調査と若者世代を対象にした「あん」に関する嗜好調査を行った。<br>【方法】2017年6月にコンビニエンスストア3社の市場調査を行った。販売されているスナック菓子、チョコレート菓子、和菓子コーナーの商品の原材料名を調査した。さらに、本学食物栄養学科学生373名を対象とし、「あん」に関する嗜好調査を自己記入方式で行った。回収率は100%であった。<br>【結果】コンビニエンスストアで販売されていた商品(総数1080)の原材料表示から「あん」が含まれていることがわかった商品は、29品目で全体の2.4%であった。「あん」に関する嗜好調査では、「あん」が好きと答えた学生は98%であった。好まれた「あん」は、こしあん(全体の74%)、白こしあん(65%)、さつまいもあん(65%)が挙げられ、粒あん(34%)は好まれなかった。「あん」が好きな理由は「甘さ」、「味」、「舌触り」と答えた学生が多く、嫌いな理由は「舌触り」、「味」であった。この結果から、若者は均一でなめらかな舌触りをより好むことがわかった。また、「あん」を食べる頻度は月に1回が最も多く、午後の間食として食べていた。好んで食べる「あん」商品は大福、たい焼き、フルーツ大福であり、もちもちとした食感が好まれる傾向が見られた。これらの結果は、健康問題にも有効な食品である「あん」を若者世代により効果的に提案する条件が示唆された。
著者
福田 ひとみ 小宮 ますみ 安田 弘子 入谷 信子
出版者
Japan Society of Nutrition and Food Science
雑誌
日本栄養・食糧学会誌 : Nippon eiyo shokuryo gakkaishi = Journal of Japanese Society of Nutrition and Food Science (ISSN:02873516)
巻号頁・発行日
vol.50, no.1, pp.69-72, 1997-02-10

合成飼料の基本食にキャベツ, ニンジン, ダイコンを"生", "ゆで", "おろし"として添加し, ラットに2週間投与した。その結果, キャベツやニンジンなどの野菜の摂取により血漿, 肝臓中のChol低下作用は認められなかったが, キャベツやニンジンの投与で一連の脂肪酸合成系酵素の活性が低下し, 肝臓TGもまた低下した。そして, これらの低下作用は"生"で効果的であった。ダイコンではその低下作用が認められなかった。その機構は未解決であるが, 野菜の摂取と同時にその調理方法もまた脂質低下作用に影響することが示唆された。
著者
福田 ひとみ 木村 智恵 杉本 智美 入谷 信子
出版者
一般社団法人日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.35, no.2, pp.172-179, 2002-05-20
参考文献数
20
被引用文献数
3

トリアシルグリセロール(TG)とジアシルグリセロール(DG)を主成分とする油を用いて調理し,官能検査を行なった。さらに揚げ油の化学的性状変化を測定した。(1) 天ぷら,フライ,鶏の唐揚げ,フレンチドレッシング,クッキーにおいてはTG油の方がDG油より評価が高かった。(2) DG油の酸価は,加熱前TG油よりかなり高かったが,揚げ物による加熱でさらに大きく上昇した。カルボニル価,動粘度は加熱時間と共に上昇したが,いずれもDG油の値が高かった。過酸化物価,ヨウ素価は両油で差がなかった。着色はTG油よりDG油の方が速く,強く着色した。(3) DG油にはトコフェロールが添加されているため総トコフェロール値が高かったが,加熱により大きく低下した。以上の結果より,TG油とDG油を使用した調理の官能検査はTG油の方が好まれた。また,揚げ油に用いたとき,化学的性状の変化はTG油の方が小さく,劣化は小さかった。