著者
福田 央 韓 錦順
出版者
日本醸造協会
巻号頁・発行日
vol.112, no.6, pp.423-431, 2017 (Released:2017-10-02)

日本産ラム酒(n=18)とカリブ海諸国及びインド洋諸国のラム酒(n=32)の低沸点香気成分及び中高沸点香気成分84成分を分析・比較し,日本産ラム酒と当該ラム酒では34成分に有意差が認められた。これらの成分の内6成分(1-ヘキサノール,グアイアコール,コハク酸ジエチル,活性酢酸アミル,アセトアルデヒド及びフルフラール)を用いた日本産ラム酒及びカリブ海諸国及びインド洋諸国のラム酒の判別分析では50点の内50点が正しく判別され,更に,判別精度を検証したところ100%の精度であった。得られた判別係数の頑強性を調べるため,上記試料と異なる海外産ラム酒(n=40)と日本産ラム酒で判別分析したところ,92.5%が適切に分類された。以上の結果から,日本産ラム酒は揮発性成分を用いた判別分析により比較的高い精度で,海外産ラム酒と判別されると考えられた。この他,成分から推定される日本産ラムの製造工程についても考察した。
著者
福田 央 韓 錦順 水谷 治 金井 宗良 山田 修
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.112, no.4, pp.273-314, 2017 (Released:2022-12-05)
参考文献数
12

焼酎の84種類の揮発性成分をSPME法とヘッドスペース法を用いて分析した。泡盛及び甘藷焼酎の揮発性成分間の相関解析を行った。その結果,中鎖脂肪酸エステル類間及び高級脂肪酸エチルエステル類間で相関性は全体的に高く,生合成系や化学構造の類似性が寄与していると推定された。モノテルペンアルコール類間及び低沸点エステル類間では高い相関性を示す成分について生成経路を推定した。フルフラールは意外にもアルデヒド類と相関性を示した。この他,泡盛及び甘藷焼酎において,個別に高い相関性を示す成分について考察を加えた。
著者
福田 央 韓 錦順
出版者
日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.113, no.2, pp.105-114, 2018-02

輸入されているカシャーサとラム酒の低沸点香気成分及び中高沸点香気成分84成分を分析・比較した。カシャーサとカリブ海諸国及びインド洋諸国のラム酒では34成分に有意差が認められた。ステップワイズ法によりカシャーサ及びカリブ海諸国及びインド洋諸国のラム酒の判別分析を試みたところ,β-フェネチルアルコール,コハク酸ジエチル及びチオ酢酸S-メチルにより分類され,33点中31点が適切に判別された。判別精度を検証したところ90.9%の精度であった。また,カシャーサと日本産のラム酒では19成分に有意差が認められ,ステップワイズ法により判別分析を試みたところ,シトロネロール及びフルフラールにより適切に分類され,判別精度を検証したところ100%の精度であった。
著者
福田 央 韓 錦順
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.110, no.10, pp.715-727, 2015

テキーラの低沸点香気成分及び中高沸点香気成分85成分を分析・比較しブランコとレポサドでは11成分(イソ吉草酸エチル,イソ酪酸エチル,バニリン,コハク酸ジエチル,ウイスキーラクトン,酢酸エチル,安息香酸エチル,カプリル酸エチル,4-ビニルグアイヤコール,2-メチル酪酸エチル及びDMS)に有意差が認められた。ブランコ及びレポサドを10成分(ウイスキーラクトン,カプロン酸イソブチル,カプリン酸プロピル,シトロネロール,イソ吉草酸エチル,バニリン,ウンデカン酸エチル,オレイン酸エチル,イソ酪酸エチル及びコハク酸ジエチル)により判別分析を検討したところ,42点の内40点が正しく判別され,判別精度は95%であった。レポサドとアネホでは9成分(フェニルアセトアルデヒド,2-ペンチルフラン,フルフラール,安息香酸エチル,ノナナール,クロトン酸エチル,バニリン,ジアセチル及びウイスキーラクトン)に有意差が認められた。レポサドとアネホを8成分(カプリン酸イソブチル,フェニルアセトアルデヒド,2-ペンチルフラン,セドロール,アセトアルデヒド,フルフラール,2-エチル-5(6)-メチルピラジン及びβ-フェネチルアルコール)により判別分析したところ36点の内32点が正しく判別され,判別精度は89%であった。ブランコとアネホでは17成分(ウイスキーラクトン,安息香酸エチル,カプリル酸エチル,及びフェニルアセトアルデヒドの他13成分)に有意差が認められた。また,4成分(ウイスキーラクトン,安息香酸エチル,カプリル酸エチル,及びフェニルアセトアルデヒド)による判別分析では42点の内40点が正しく判別され,精度は88%であった。ラム酒とテキーラでは38成分(α-テルピネオール,5-メチル-2-フルアルデヒド,ドデカノール,カプリン酸イソアミル,安息香酸エチル及びその他29成分)に有意差が認められ,5成分(α-テルピネオール,5-メチル-2-フルアルデヒド,ドデカノール,安息香酸エチル及びカプリン酸イソアミル)による判別分析では114点中111点が適切に判別され,精度は97%であった。なお,テキーラの揮発性成分の特徴であるリナロール及びα-テルピネオールは,原料処理後の発酵工程で生成すると推定された。
著者
福田 央 日吉 智 砂川 英之 田中 健太郎 藤田 仁 山根 雄一 若林 三郎
出版者
公益社団法人日本生物工学会
雑誌
生物工学会誌 : seibutsu-kogaku kaishi (ISSN:09193758)
巻号頁・発行日
vol.79, no.8, pp.299-302, 2001-08-25
被引用文献数
3

清酒もろみの原料利用率の向上を目的とし, セルロース, キシラン, およびペクチン溶解酵素といった, いわゆる植物細胞壁溶解酵素が, 清酒もろみの並行複発酵に及ぼす影響を検討した.セルロース, キシラン, およびペクチン溶解酵素を有する市販酵素剤の添加により, 蒸米の溶解およびアルコール発酵は顕著に促進され, またアルコール収得量も増加し, 原料利用率の向上が得られた.さらに, 麹菌を小麦フスマを基質とした液体振盪培養に供して得られた培養上清液よりアミラーゼ・プロテアーゼを除いた粗酵素液を調製し, もろみ発酵試験に供した.この結果, もろみ発酵・原料利用率ともに顕著に向上し, 酵素剤添加区の最高値に匹敵する結果を得た.調製した粗酵素液は著量のセルロース, キシラン, およびペクチン溶解活性を有することから, これらの植物細胞壁溶解酵素が, 清酒もろみでの蒸米の溶解・糖化に対する促進効果を有することが強く示唆された.