1 0 0 0 OA 真空と表面

著者
福谷 克之
出版者
一般社団法人 日本真空学会
雑誌
Journal of the Vacuum Society of Japan (ISSN:18822398)
巻号頁・発行日
vol.56, no.6, pp.204-209, 2013 (Released:2013-06-28)
参考文献数
2
被引用文献数
1 4

Any vacuum chamber has interior surfaces of the chamber facing toward the vacuum. Interaction of gas molecules with the chamber surface including scattering, adsorption and desorption is thus of particular importance for vacuum technology. The present article describes fundamental concepts of gas-surface interaction, which encompass the thermal accommodation coefficient, cosine law, adsorption potential, mean time of sojourn and adsorption isotherm.
著者
杉本 敏樹 福谷 克之
出版者
一般社団法人 日本物理学会
雑誌
日本物理学会誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.71, no.10, pp.668-678, 2016-10-05 (Released:2017-04-21)
参考文献数
63
被引用文献数
1

核スピンの存在は,量子力学創成期,電子スピン発見から2年後の1925年に証明された.その画期的な発見は,コペンハーゲンのBohr研究室に留学中の堀健夫(朝永振一郎の義兄)による水素分子の分光研究に端を発する.堀は,電子励起スペクトルにおいて,回転量子数が偶数を起点とするスペクトル強度と奇数を起点とする強度に違いがあり,その比が1対3となることを発見した.この実験事実に基づき,Dennisonは陽子が大きさ1/2のスピンを持つフェルミ粒子であることを明らかにし,水素分子には核スピン量子状態が異なるオルト・パラ異性体が存在することを証明した.このように,水素分子は量子力学の発展に大きな貢献を果たす一方で,宇宙に最も豊富に存在する分子種として星間空間における物理・化学過程に重要な役割を果たしている.近年,遠赤外線天文観測技術の進歩によって星間分子雲中の水素分子の分光が行われ,オルト/パラ比から求まる核スピン温度が回転温度と一致しないという観測結果がしばしば報告されている.回転温度と核スピン温度は観測した分子雲環境の現在と過去の温度を反映していると考えられており,これらを解析することで星間分子雲の熱履歴や年齢,さらには星形成メカニズムの解明につながると期待されている.水素分子の核スピン温度を星間分子雲の過去の温度計として使用する場合,核スピン温度が「具体的にどの程度の時間スケールの過去の温度」を反映しているのかを知る必要がある.核スピン多重度の変化を伴う水素分子のオルト–パラ転換は気相の孤立系では非常に遅く実質的には起こらない.しかし,物質との相互作用によって転換が誘起されるため,種々の星間物質表面での転換確率を実験で明らかにする必要がある.応用上も,水素は燃焼時に温室効果ガスや有害ガスを発生しないクリーンな燃料として家庭用や自動車用の燃料電池で利用されるほか,ロケット燃料としても利用されてきた.水素を大量に貯蔵する方法として液化貯蔵があるが,オルト水素が混在する水素ガスを液化する際にはオルト–パラ転換に起因するボイルオフが問題となる.これを回避するため,オルト水素をあらかじめパラ水素に転換させてから低温貯蔵する必要があり,そのために古くから磁性体を利用したオルト–パラ転換触媒の開発が進められてきた.磁性体表面に吸着した水素分子は,表面電子スピンの磁気双極子に起因した不均一磁場でオルト–パラ転換が促進されることが1933年にWignerによって理論的に示されている.それ以来,電子磁性を持たない反磁性物質の表面ではオルト–パラ転換は誘起されないと信じられてきた.1980年代に入り真空技術が進歩するのに伴い,原子レベルで構造や電子状態を規定した清浄表面が得られるようになると,従来は転換を誘起しないと考えられてきた銀・銅等の反磁性金属表面や,極性を有する水分子が凝集したアモルファス氷等の反磁性絶縁体表面においてもオルト–パラ転換が促進されることが次々に明らかになってきた.近年の実験・理論研究によって表面の局所磁場のみならず電荷移動や表面の局所電場によってオルト–パラ転換が誘起されることが示され,固体表面と吸着子が織りなす多彩な磁気・電気的相互作用の全容が解明されつつある.
著者
村田 好正 福谷 克之 藤本 光一郎 小林 紘一 小牧 研一郎 寺倉 清之
出版者
東京大学
雑誌
試験研究(B)
巻号頁・発行日
1992

共鳴核反応を用いた水素の高分解能深さ分析法の開発を行った。6.385MeVの^<15>Nビームは東京大学原子力総合センターのタンデム型加速器により発生させた。N原子の電子親和力が負であるため入射する負イオンとしては分子イオンであるNH^<2->またはCN^-を用いた。高い深さ分解能を達成するためには共鳴幅程度の単色性の良いビームを作ることが必要である。これは分析電磁石の磁場を安定させることで達成する。プロトンのNMRのスペクトル変動を電磁石の電源へフィードバックすることで磁場の相対変動を10^<-5>に抑えた。分析電磁石の出口スリットにはスリットフィードバックシステムを準備し、加速用のターミナル電圧の安定をはかる。入り口と出口のスリットを0.5mm幅にすることでエネルギーの広がりを2keV以下に抑えらた。実験は超高真空中で処理した試料に、加速器で発生させた6.385MeVの^<15>Nビームは、同センター2Cコースにおいて2段の差動排気を介して解析用超高真空槽へと導いた。ビーム形状をモニターするビームプロファイルモニターと収束用マグネットを設置し、試料上でビーム径2mm、50nAのビームを得ることに成功した。水素との核反応に伴って放出される4.43MeVのγ線は直径4インチのBi_4Ge_3O_<12>シンチレーターを用い、真空槽の外、試料から20-40mm離れた所で測定した。宇宙線によるバックグランドは0.07cpsであり、1/100原子層程度の水素が測定可能となった。この手法を用いて、(a)a-Si/H/Si(001)、(b)Olivine/Aqueous Solution Interface、(c)H/Au(001)、(d)Ag,Cu,Pb/H/Si(111)の試料について深さ分解測定を行った。
著者
福谷 克之
出版者
東京大学
雑誌
新学術領域研究(研究領域提案型)
巻号頁・発行日
2014-04-01

ミュオンは質量が水素の1/9の粒子で,物質中で水素の同位体としてふるまう.本学術領域で開発される超低速ミュオンを利用し,入射ミュオンのエネルギーを変化させることにより,プローブする深さを表面からサブサーフェス領域で制御し,それぞれの深さでの水素の電子状態を解析するのが本研究の目的である.本年度は,これまでに確立したアモルファス氷作製法を利用して,軽水および重水の蒸気を30Kに冷却した基板に蒸着することで,J-Parcのビームラインでアモルファス氷試料を作製した.作製中の試料をカメラで観測し,さらにμSRの非対称度をその場測定した.非対称度が約50%のところで飽和する様子が見られ,十分な厚さの試料が作成できたと判断した.この50%の減衰は試料中でのミュオニウム形成によるものと考えられる.作製したこの試料について,20Gおよび2Gの横磁場μSR,ゼロ磁場μSR測定を行った.20G横磁場では,ミュオンの歳差運動に伴う振動が見られた.一方2Gでの横磁場μSR測定では,重水試料ではミュオニウムの回転に伴う振動が観測されるのに対して,軽水試料では同様の振動は観測されなかった.またゼロ磁場μSRでは,測定初期に急激な指数関数様の信号の減衰が観測された.これらのことから,入射ミュオンの1/2は試料中の電子とのスピン交換により緩和し,さらに反磁性ミュオンは隣接する陽子および重陽子による双極子磁場により緩和しているものと考えられる.さらに,同様の方法で作成した氷試料について,赤外吸収分光による評価を行った.測定条件ではアモルファス氷特有のスペクトルが得られことがわかった.これに対して不純物の水素が混入すると,3量体から6量体の氷クラスターが形成することがわかった.