著者
秋山 純子 稲葉 政満
出版者
MATERIALS LIFE SOCIETY, JAPAN
雑誌
マテリアルライフ学会誌 (ISSN:13460633)
巻号頁・発行日
vol.16, no.1, pp.22-27, 2004-01-31 (Released:2011-04-19)
参考文献数
12

スマルトはコバルトガラスを細かく砕いて作った青色の顔料である.スマルトは変色しやすい顔料と言われているが, 未だ変色のメカニズムは明らかにされていない.本研究では, カリウムとコバルトの含有成分比の異なるコバルトガラス (自作スマルト) を作成し, スマルト粒子中の成分が乾性油の酸化と変色に及ぼす影響の違いを検討した.作成した自作スマルト5種類を各々亜麻仁油に添加, 110℃ で336時間加熱し, 亜麻仁油の脂肪酸組成と可視吸収スペクトルを経時的に測定した.亜麻仁油中のリノレン酸量の減少を指標とした酸化反応はカリウムの含有量が多いほど抑制され, コバルトの含有量が多いほど促進された.分光分析の結果, カリウムの含有量が多いほど, そしてコバルトの含有量がないほど変色が大きかった.以上のことから, スマルト中のカリウムおよびコバルトの含有成分比の違いによって乾性油の酸化と変色の程度に違いが生じることが明らかとなった.
著者
鈴鴨 富士子 蔵品 真理 秋山 純子
出版者
東京藝術大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究は絵画に発生する劣化生成物の発生原因を解明し、材料の有する特性や保存環境の影響を明らかにすることを目的に行った。更に適切な修復処置を提示すると共に、発生の予防を提言することを目指した。本研究において絵画作品の調査・分析の他、湿熱劣化実験を実施した。また予防修復処置としてワニス塗布の効果を考察した。本研究から劣化生成物の予防処置や適切な保存環境を検討する際の指針を示すことができたと考える。
著者
秋山 純子 畑 靖紀 森實 久美子 鷲頭 桂
出版者
独立行政法人国立文化財機構九州国立博物館
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

彩色材料は当時の社会情勢や世界との交流の歴史を解明する上で重要な要素のひとつである。近年の分析装置の発展により非破壊で多くの情報が得られるようになったが、絵画の彩色材料の解明には、非破壊で簡便な「面」の広がりを持った総合的な判断要素となる科学分析が必要である。本研究では、赤外線撮影法が彩色材料の面的調査に有効な方法となりうるか検証した。その結果、赤外線画像の濃淡だけで顔料の種類を特定することは難しいが、同じ彩色材料の使用範囲や染料と顔料の組み合わせの様相など技法的な部分を面的に推察するのに有効であることが明らかとなった。