著者
原田 あゆみ 小泉 惠英 末兼 俊彦 藤田 励夫
出版者
独立行政法人国立文化財機構九州国立博物館
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究は、タイ内外地域間の結びつきを示すモノ、思想をできるだけ具体的にしていくことで、相互の関係をより明確に示すことを目指した。交易品の調査研究では、これまで見過ごされていた文化財の正しい評価を行い活用に寄与することができた。特にタイにおける日本刀の受容のあり方と展開について明らかにした。また仏教美術においては仏教説話の受容と展開に着目した。スリランカの蔵外仏典から影響を受け、タイで流布したプラ・マーライ説話は、他地域に比べ弥勒菩薩が重要な役割を果たしている。弥勒菩薩の図像の特徴と諸要素を明らかにし、弥勒信仰の背景を探った。
著者
今津 節生 森田 稔 河野 一隆 鳥越 俊行 市元 塁 樋口 隆康 廣川 守
出版者
独立行政法人国立文化財機構九州国立博物館
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009

本研究は、九州国立博物館に設置した文化財用の大型X線CTおよび精密三次元デジタイザを活用し、非接触非破壊で中国古代青銅器の構造を解析することによって、製作技法の研究を飛躍的に進めることを目的にしている。これを達成するために、世界有数の中国古代青銅器を保有する泉屋博古館(住友コレクション180点)と協力し、中国古代青銅器の内部構造データを系統的に集積した三次元デジタルアーカイブを構築した。研究成果として、国内外の学会で研究発表を行った。また、一般市民への研究成果公開として、アジアが誇る卓越した古代技術を分かり易く紹介する展示会を開催した。
著者
今津 節生 岩佐 光晴 丸山 士郎 浅見 龍介 楠井 隆志 神庭 伸幸 和田 浩 鳥越 俊行 金子 啓明 山崎 隆之 矢野 健一郎 成瀬 正和
出版者
独立行政法人国立文化財機構九州国立博物館
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究は興福寺の許可を得てX線CT調査で得た国宝 阿修羅像をはじめとする十大弟子像4躯、八部衆像5躯の高精細三次元デーを美術史・工芸史・修復技術・文化財科学・博物館学の専門知識を集めて解析した。私達はX線CTによって得られた三次元画像を観察して議論を進めた。その結果、1270年あまり前に製作された脱活乾漆像の構造や技法、過去の修復履歴などを明らかにした。本研究の結果、阿修羅像の心木は虫食が無い良好な状態であることを確認した。また、鎌倉時代と明治時代の修理の痕跡も把握した。さらに三次元データから阿修羅像の塑土原型像を復元することに成功した。また、最終年度に本研究の成果をまとめた報告書を製作した。
著者
伊藤 嘉章 小泉 恵英 木川 りか 原田 あゆみ 白井 克也 志賀 智史 楠井 隆志 河野 一隆 早川 典子 大橋 有佳 渡辺 祐基 川村 佳男 望月 規史 川畑 憲子 森實 久美子 酒井田 千明
出版者
独立行政法人国立文化財機構九州国立博物館
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2018-04-01

初年度である今年度は、情報収集を兼ねて多角的に調査を開始した。タイでは、国立の伝統文化財部で現在行われている王室の御座船の修理方法や伝統的人形劇の人形、漆工品、色ガラスを多用した木製品、布製品、石造彫刻等の製作・修理技法のほか、寺院の壁画の修理技法について調査を実施した。インドネシアでは伝統的な影絵であるワヤン・クリの製作技法や機織りによるイカットの製作技法、伝統的な青銅製品(ゴング)の製作技法についての聴き取り調査を実施した。ミャンマーではこの地域に特有な性質をもつ漆工品の調査を行い、ベトナムでは伝統的木製品の修理のための調査のほか、藕糸の製作技法に関する調査を行った。また国内に存在するアジア地域に関連する文化財についても積極的に調査を進めた。中国式寺院の独特な様式をもつ仏像や金工品や、国内で保有しているアジア地域と関連する染織品(藕糸を使用したと考えられる絵画やインド更紗)、韓国の伝統的絵画(綿布に書かれた絵画)の修理方法についての調査、響銅(佐波理)の製作痕の調査、インドネシアのガムランの音色にかかわる構造などについての詳細調査を実施したほか、出土した茶入などの陶器についても製作技法を解明するためにCTによる詳細な構造調査を行った。このほか、修理技法と係る基礎研究としては、アジア地域で伝統的技法に多用されてきた灰汁について文書の修理への利用を念頭に、成分分析と修理対象となる紙に対する影響調査を行った。
著者
秋山 純子 畑 靖紀 森實 久美子 鷲頭 桂
出版者
独立行政法人国立文化財機構九州国立博物館
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

彩色材料は当時の社会情勢や世界との交流の歴史を解明する上で重要な要素のひとつである。近年の分析装置の発展により非破壊で多くの情報が得られるようになったが、絵画の彩色材料の解明には、非破壊で簡便な「面」の広がりを持った総合的な判断要素となる科学分析が必要である。本研究では、赤外線撮影法が彩色材料の面的調査に有効な方法となりうるか検証した。その結果、赤外線画像の濃淡だけで顔料の種類を特定することは難しいが、同じ彩色材料の使用範囲や染料と顔料の組み合わせの様相など技法的な部分を面的に推察するのに有効であることが明らかとなった。