著者
豊島 清
出版者
MATERIALS LIFE SOCIETY, JAPAN
雑誌
マテリアルライフ (ISSN:09153594)
巻号頁・発行日
vol.8, no.1, pp.28-35, 1996-01-25
被引用文献数
3 1

漆塗膜の紫外線UV-Aによる照射実験を前報 のUV-C, UV-Bによる実験に引続いて実施した.これらの実験結果から, UV-C, -B, 及び一Aいずれの場合にも照射時間の経過に依存して塗膜の単調な重量減少が見出された.照射3861時間における重量減少比を同一放射照度に換算すると, 1 (UV-A): 8.1 (UV-B): 14.9 (UV-C) となった.地上における太陽の紫外放射照度の大きさとその分布は, 照射実験のUV-Bの2倍とUV-Aの3倍の和にほぼ等しい.この結果より地上太陽光による漆塗膜の劣化を推算した.一方で, 漆塗膜の厚さと紫外線の波長を変えて透過率を測定し, UV-C照射実験後の漆塗膜のFTIRによる成分分析を行ない, 漆塗膜は表層でほとんど全ての紫外線を吸収することがわかり, 表層でウルシオールとその重合物の成分が分解して重量減少すると推定した.
著者
大澤 敏 城殿 威生 小川 俊夫 附木 貴行
出版者
MATERIALS LIFE SOCIETY, JAPAN
雑誌
マテリアルライフ学会誌 (ISSN:13460633)
巻号頁・発行日
vol.13, no.2, pp.73-78, 2001-04-30 (Released:2011-04-19)
参考文献数
13
被引用文献数
1

生分解性プラスチックであるポリ乳酸は, 高い力学的性質と透明性を兼ね備えており, 近年農業用シートなど屋外での用途が期待されている.実用的な視点から見ると使用中の耐候性の評価や分解予測が必要である.本研究では, ポリ乳酸 (PLA) フィルムを屋外暴露試験し, 試料の破断強度に与える日照量 (光分解) と降水量 (加水分解) の影響を重回帰分析した.その結果, 破断強度は, 降水量Wと加水分解の反応速度定数kを掛け合わせた変数雁7と, 日照時間Uと光分解の反応速度定数k'を掛け合わせた変数k'Uの関数で表すことができた.また, PLAの分解に及ぼす影響を重回帰式の標準偏回帰係数で比較したところ加水分解と光分解で約2: 3であり, 光分解の影響がかなり大きいことが明らかになった.またこの結果は実験室内で加水分解速度と光分解速度を別々に測定した結果と一致した.
著者
吉武 紀道 久保 孝一 古川 睦久
出版者
MATERIALS LIFE SOCIETY, JAPAN
雑誌
マテリアルライフ学会誌 (ISSN:13460633)
巻号頁・発行日
vol.14, no.4, pp.185-190, 2002-10-31 (Released:2011-04-19)
参考文献数
10

ポリウレタン (PU) は耐熱性に劣るためポリイミド (PI) やポリアミド (PA) 等の耐熱性を有するポリマーとの共重合による耐熱性の改善が考えられる.ここでは種々の配合比で共重合させたPU-PA, PU-PIの熱分析 (TG-DTG) を行い, 小沢らの方法による解析ソフトを用いて熱分解特性を検討すると共に長期使用における耐熱性の評価を試みた.800℃まで10, 20, 40℃/minの昇温速度で昇温して得られたTG曲線について解析を行った.PA, PIの配合比の増加により共重合体の性状はエラストマーからプラスチックに移行し10%重量減少温度 (T-10) から見た耐熱性は増加し, 熱重量減少率と配合比の間に定量的な関係が見出された.PUにPAやPIを10~20%共重合することによりエラストマーとしての性質を保持しながら, 約10~50℃の耐熱性が向上した.さらに10%減量するのに100年間かかる上限の温度を寿命温度として寿命予測した.
著者
秋山 純子 稲葉 政満
出版者
MATERIALS LIFE SOCIETY, JAPAN
雑誌
マテリアルライフ学会誌 (ISSN:13460633)
巻号頁・発行日
vol.16, no.1, pp.22-27, 2004-01-31 (Released:2011-04-19)
参考文献数
12

スマルトはコバルトガラスを細かく砕いて作った青色の顔料である.スマルトは変色しやすい顔料と言われているが, 未だ変色のメカニズムは明らかにされていない.本研究では, カリウムとコバルトの含有成分比の異なるコバルトガラス (自作スマルト) を作成し, スマルト粒子中の成分が乾性油の酸化と変色に及ぼす影響の違いを検討した.作成した自作スマルト5種類を各々亜麻仁油に添加, 110℃ で336時間加熱し, 亜麻仁油の脂肪酸組成と可視吸収スペクトルを経時的に測定した.亜麻仁油中のリノレン酸量の減少を指標とした酸化反応はカリウムの含有量が多いほど抑制され, コバルトの含有量が多いほど促進された.分光分析の結果, カリウムの含有量が多いほど, そしてコバルトの含有量がないほど変色が大きかった.以上のことから, スマルト中のカリウムおよびコバルトの含有成分比の違いによって乾性油の酸化と変色の程度に違いが生じることが明らかとなった.
著者
伊藤 政幸 池島 義昭 白石 忠男 佐藤 隆一 田中 勲 市橋 芳徳
出版者
MATERIALS LIFE SOCIETY, JAPAN
雑誌
マテリアルライフ (ISSN:09153594)
巻号頁・発行日
vol.4, no.1, pp.37-43, 1992-01-25 (Released:2011-04-19)
参考文献数
8
被引用文献数
1

研究用原子炉圧力容器とその本体の上から下へ貫通している実験用の配管との間に3個のシリコーンゴム製のOリングが装着されて13年間使用された.この間にOリングに加えられた諸因子を計算によって求めた結果, 放射線は最も高い位置で3.46kGy, 熱は原子炉運転時には50℃であり, 摺動は比較的少ないことが明らかになった, 同じ使用状態での余寿命を推定するために, 70℃で50kGy/hの線量率で同じ材質のOリングを線量を変えて時間加速照射を行い, 試料の機械的性質の変化を実機試料と比較した.その結果, 実機試料と同程度の劣化を時間加速試験試料に与えるためには前者より一桁以上高い線量が必要なことが判明した.得られた物性値を総合的に検討し, 破断伸びが50%に低下するまで使用可能と判断し, 同じ使用環境での余寿命を26年と推定した.
著者
冨田 耕右
出版者
MATERIALS LIFE SOCIETY, JAPAN
雑誌
マテリアルライフ (ISSN:09153594)
巻号頁・発行日
vol.3, no.4, pp.187-191, 1991-10-25 (Released:2011-04-19)
参考文献数
27

従来, 合成高分子は微生物分解を受けないとされていたが, ある種の合成高分子は微生物分解を受けることがわかってきている.たとえば, オリゴマーのポリエチレンは微生物分解を受けやすいし, ポリビニルアルコールや脂肪族ポリエステルは高分子量のものでも微生物分解を受ける.ポリエチレングリコールも条件によっては微生物分解を受ける.これらの例に基づき, 合成高分子の化学構造と微生物分解性との関係について述べ, 環境問題からみた将来性について考察する.
著者
大澤 敏 西川 武志 小川 俊夫
出版者
MATERIALS LIFE SOCIETY, JAPAN
雑誌
マテリアルライフ (ISSN:09153594)
巻号頁・発行日
vol.11, no.3, pp.118-123, 1999-07-30
被引用文献数
1

生分解性プラスチックの分解速度はその構造とそれが置かれた微生物環境によって決まるが, 後者を制御することは微生物の多様性から困難であるとされている. しかしながら, プラスチックを含む有機廃棄物処理の観点から見ると使用後は速やかに分解する微生物環境を人為的に管理する必要性がある. そこで本研究では, 従来から有機農法において用いられている, 安定な循環サイクルを有する有用微生物 (EM) 群を生分解性プラスチック (L-ポリ乳酸) の置かれた有機廃棄物中に添加してその分解促進効果について調べた. その結果, 36℃でEM菌群をコンポスト中に添加した場合にL-ポリ乳酸の分解が約40%促進されることがわかった. また, コンポスト中での分解は非晶相から進行するが50℃でEM菌群を添加した場合には, 結晶相でも速やかな分解が起こることが明らかになった.
著者
大澤 敏 西川 武志 小川 俊夫
出版者
MATERIALS LIFE SOCIETY, JAPAN
雑誌
マテリアルライフ (ISSN:09153594)
巻号頁・発行日
vol.11, no.3, pp.118-123, 1999-07-30 (Released:2011-04-19)
参考文献数
17

生分解性プラスチックの分解速度はその構造とそれが置かれた微生物環境によって決まるが, 後者を制御することは微生物の多様性から困難であるとされている. しかしながら, プラスチックを含む有機廃棄物処理の観点から見ると使用後は速やかに分解する微生物環境を人為的に管理する必要性がある. そこで本研究では, 従来から有機農法において用いられている, 安定な循環サイクルを有する有用微生物 (EM) 群を生分解性プラスチック (L-ポリ乳酸) の置かれた有機廃棄物中に添加してその分解促進効果について調べた. その結果, 36℃でEM菌群をコンポスト中に添加した場合にL-ポリ乳酸の分解が約40%促進されることがわかった. また, コンポスト中での分解は非晶相から進行するが50℃でEM菌群を添加した場合には, 結晶相でも速やかな分解が起こることが明らかになった.