著者
秋庭 正人 佐伯 英治 石井 俊雄 山本 茂貴 上田 雄幹
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
日本獣医学雑誌 (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
vol.53, no.3, pp.371-377, 1991-06-15
被引用文献数
2

マウスの Babesia rodhaini 感染の免疫学的変化を追求できるモデル系を, まず, 薬腺 Diminazene diaceturate (DD)を使い確立した. R. rodhainiの腹腔内(i. p.)接種で有胸腺(nu/+)および無胸腺(nu/nu) BALB/cマウスは急死した. 感染早期にDD処置すると両マウスともに急性死から免れた. 耐過マウスの一部は虫血症を再発したが, 致死的再発は nu/nuマウスのみにみられた. 回復マウスを28日目に10^5感染赤血球(PE)でi. p.に再攻撃すると, nu/+マウスは抵抗したが, nu/nuマウスは防御しなかった. 以上から防御機序に胸腺が関与することが示唆された. 次にnu/+, nu/nuマウスに10^4PEをi. p.接種しDD治療を行い, 28日目に10^5PEをi. p.再攻撃して免疫学的変化を調べた. nu/+マウスは, B. rodhaini可溶性抗原足蹠注射による即時型反応および, 同抗原とプロテインAを用いたELISAによる血清抗体でみた抗体応答が, 10日以降から出現し, 再攻撃後は強い応答がみられた. 一方, nu/nuマウスの血清から抗体は検出されなかった. 遅延型足蹠反応はnu/+マウスに14日目以降に見られたが, 再攻撃後は抑制された. DD注射-再攻撃のnu/+マウスの脾細胞(再攻撃後8日)を, nu/nuマウスに移入し10^4PEでi. p.に攻撃すると, 5匹中3匹のnu/nuマウスは一時的な低い虫血症を示し耐過したが, 残り2匹は重篤な虫血症を伴い早期に死亡した. このモデル系はバベシア免疫に有効な細胞の解析を可能にするものと思われる.
著者
Tran Thi Phan LY Thi Lien Khai NGUYEN Thu Tan 秋庭 正人 小笠原 夏絵 篠田 ダビデ OKATANI Alexandre Tomomitsu 林谷 秀樹
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
The journal of veterinary medical science (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
vol.66, no.8, pp.1011-1014, 2004-08-25
被引用文献数
5 45

2000年7月から10月に,ベトナム・メコンデルタの豚,鶏およびアヒルにおけるサルモネラの保菌状況を調べた結果,豚,鶏およびアヒルから,それぞれ5.2%(23/439),7.9%(24/302)および8.7%(31/357)の割合でサルモネラが分離された.また,分離された80菌株は25血清型に型別され,S.Javiana,S.DerbyおよびS.Weltevredenの割合が高かった.また,S.JavianaとS.Weltevredenが3種の家畜から共通して分離された.これらの結果から,これらのサルモネラはこの地域の家畜に広く分布していることが明らかとなった.
著者
グルゲ キールティ・シリ 山下 信義 秋庭 正人
出版者
独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2012-04-01

2014年にチェンナイより採集した河川水・底質試料について医薬品及び有害化学物質の分析を行った。先進国では過去50年以上にわたって汚染が進行している有機過フッ素化合物や有機シロキサンについては、インドの汚染は始まったばかりであることが柱状底質試料を用いた歴史的復元により明らかとなった。医薬品ではイブプロフェンの濃度が最も高く、薬剤耐性菌への関与が疑われるキノロン剤のオフロキサシン濃度が次いで高濃度であった。また、同じ底質試料の変異原性強度の空間的と鉛直分布を、コメットアッセイを用いて、多環芳香族炭化水素(PAHs)、およびそのハロゲン化物を指標として判定した。チェンナイ市・クーム川の底質は石油起源のPAHsによる高度な汚染が検証された。底質の変異原性の強さは、PAHsの汚染度に関連していた。また、4種類の下水汚泥の抽出物を雄性マウスに摂取させ、肝臓の遺伝子発現の変化をマイクロアレイ解析した。200以上の遺伝子について、それぞれの下水処理施設に特有な異なる誘導が見いだされ、排水の性質は排出元に大きく影響されることが示唆された。さらに、これまでに分離した446株の大腸菌のうち、セフォタキシムやイミペネムといった人の治療に汎用されるβ-ラクタム剤に耐性を示す169株(38%)の薬剤耐性因子等を詳細に解析した。12の抗菌剤に対する薬剤感受性を調べたところ2剤を除いて50%以上の耐性菌分布率を示した。また、全ての菌は3剤以上に耐性を示し、最も分布率が高かったのは10剤耐性菌(25%)であった。β-ラクタマーゼ遺伝子型別のうち、CTX-M型の分布率が66%と最も高く、次いでTEM、OXA、CIT型の分布率がそれぞれ約40%であった。無作為に選んだ36の環境水サンプルに由来する49プラスミドの全塩基配列を解読し、β-ラクタマーゼ遺伝子を含む各プラスミドの系統と薬剤耐性遺伝子の分布を明らかにした。