著者
城戸 佐登子 林谷 秀樹 岩崎 浩司 Alexandre Tomomitsu OKATANI 金子 賢一 小川 益男
出版者
The Japan Society of Veterinary Epidemiology
雑誌
獣医疫学雑誌 (ISSN:13432583)
巻号頁・発行日
vol.5, no.2, pp.77-87, 2001-12-20 (Released:2010-05-31)
参考文献数
19
被引用文献数
2 1

1995年2月~1995年6月の5ヶ月間に, 関東地方1都6県の51動物病院で, ならびに1997年10月~1998年3月の6ケ月間に, 関西, 中国地方を中心にする1都2府10県の25動物病院で, カルテから選んだ15歳以上の犬および猫 (以下, 長寿犬または長寿猫とする) と, 1994年4月~1995年3月の1年間ならびに1997年12月~1998年10月の11ケ月間に, それぞれ上記の51と25動物病院に来院し, 5~9歳で死亡した犬および猫 (以下, 対照犬または対照猫) について, 性, 年齢などの宿主要因や食事や散歩などの飼育状況などについてアンケート調査を行い, 各項目についてオッズ比を算出し, 長寿に関連する要因の抽出を試み, 以下の成績を得た。1) 長寿群と対照群との間で, 犬では, 品種, 避妊の有無, 飼育の目的, 飼育場所, 散歩の頻度, 同居動物, 食事内容, 牛乳の給与および間食の項目で, 猫では, 性別, 避妊の有無, 飼育の目的, 飼育場所, 同居動物, 食事内容, 牛乳の給与および間食の項目で, 両群問に有意差が認められた。2) 各項目ごとに長寿に関与するオッズ比を算出すると, 犬では「雑種」, 「毎年予防接種をした」, 「毎日散歩をした」, 「同居動物がいた」, 「食事として手作り調理を与えた」および「牛乳を与えた」のオッズ比がそれぞれ3.36, 2.40, 3.21, 2.44, 2.46および3.75で有意に高く, 「室外で飼っていた」が0.25で有意に低かった。猫では「雌」, 「同居動物がいた」, 「食事として手作り調理を与えた」および「牛乳を与えた」のオッズ比がそれぞれ5.16, 2.32, 2.34および2.00で有意に高く, 「室内外で自由に飼っていた」が0.41で有意に低かった。3) 以上の結果より, 長寿に関与する項目として抽出されたものは, 犬猫ともに飼育者が飼育動物に対して行っている適切な健康管理や飼育管理の項目がほとんどであり, 長寿な動物は飼育者から飼育や健康管理に手をかけられたものであることが明らかとなった。得られた成績は, 今後のコンパニオンアニマルの飼育や健康管理を考える上で貴重な基礎知見になるものと考えられる。
著者
林谷 秀樹 近江 佳郎 小川 益男 福富 和夫
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
日本獸醫學雜誌(The Japanese Journal of Veterinary Science) (ISSN:00215295)
巻号頁・発行日
vol.50, no.5, pp.1003-1008, 1988
被引用文献数
2 29

1981年6月から1982年5月までの1年間に関東地方で死亡し, 1動物霊園に埋葬された犬4915頭の死亡データを用いて, Chiangの生命表作成法に従って, 犬の生命表を作成した. これは家庭飼育犬について作成された最初の生命表と思われる. 生命表作成の基礎となる犬の死亡確率の姿は人のものと基本的パターンがよく類似しており, 今回作成した犬の生命表は犬の集団の死亡秩序をかなり正確に表しているものと思われた. 生命表から算出された犬の平均余命は, 0才で8.3才, 1才で8.6才, 5才で6.1才, 10才で3.5才, 15才で1.6才であった. また, 犬の健康水準の指標としては飼い主の人為的な影響を受けやすい0才の平均余命(e<SUB>0</SUB>)より1才の平均余命(e<SUB>1</SUB>)のほうが望ましいと思われた. 犬種別(雑種, 純血種に大別), 地域別(人口密度1万人以上のA地域と1万人未満のB地域に大別)にも生命表を作成し, 得られたe<SUB>1</SUB>を比較した結果, 犬種間では雑種は純血種に比べ, また地域問ではA地域はB地域に比べe<SUB>1</SUB>は有意に長かった. 以上のことから, これらの犬種間, および地域間においては平均余命の長さを規制している要因になんらかの違いのあることがうかがわれた.
著者
林谷 秀樹
出版者
The Japan Society of Veterinary Epidemiology
雑誌
獣医情報科学雑誌 (ISSN:09128913)
巻号頁・発行日
vol.1995, no.34, pp.9-13, 1995-06-25 (Released:2010-05-31)
参考文献数
5
著者
林谷 秀樹
出版者
The Japan Society of Veterinary Epidemiology
雑誌
獣医疫学雑誌 (ISSN:13432583)
巻号頁・発行日
vol.14, no.1, pp.85-85, 2010

我が国における理想的な獣医学教育像を描くためには,(1) 学生の具体的な到達目標を明示すること,(2) 目標を達成するために必要なカリキュラムの内容(シラバス)を明らかにすること,(3) 教育手法を明示しておくことが不可欠であるとの認識のもと,文部科学省の先導的大学改革推進委託事業に「獣医学教育モデル・コア・カリキュラムに関する調査研究」が東京大学を代表者となって採択されたことを受けて,平成21年7月から獣医学教育のコア・カリキュラムの策定が開始された。本事業では獣医学の4分野(基礎,病態,応用ならびに臨床)の中から,取り上げるべき授業科目として50科目が選択され,それぞれの科目について学生が習得すべき基本的内容について検討されている。コア・カリキュラムとはそれぞれの分野で必ず学ぶべき必要最小限の共通カリキュラムであり,これまでに医学,薬学,歯学および法科大学院の4つの分野の教育で策定されている。獣医学教育でのコア・カリキュラムで策定される内容は,各科目で学ぶべき内容の2/3であり,残りの1/3については各大学が独自の理念や社会的要求に基づいた判断により実施することになっている。<BR>これまで,獣医学教育の中で,獣医疫学は公衆衛生学,獣医衛生学,獣医伝染病学などの科目の中で教育されていることが多く,近年,獣医疫学を独立した科目として教育する大学が増えつつあるものの,「獣医師国家試験ガイドライン」の中では独立した科目としては扱われていなかった。しかし,今回「獣医学教育モデル・コア・カリキュラムに関する調査研究」事業では,獣医疫学は応用獣医学の中の独立した一科目として選定され,そのコア・カリキュラムが検討されることとなった。獣医疫学のコア・カリキュラム策定に当たり,3名の委員(加藤行男,筒井俊之および林谷秀樹,いずれも獣医疫学会会員)が選出され,平成22年7月からそのコア・カリキュラムに関して検討を開始し,平成23年2月に案が完成した。獣医疫学に関するカリキュラムとして,獣医疫学会ではすでに2007年に獣医疫学に関するカリキュラムを学会から提言しているが,今回のコア・カリキュラム案もほぼそれに従った形になっている。コア・カリキュラムは,科目を通して全体で到達すべき目標と項目(20項目)ごとに一般目標と到達目標が設定されている。今回,委員で策定した獣医疫学のコア・カリキュラムについてその項目を下記に記した。このコア・カリキュラムは獣医学関係者や一般人からのパブリックコメントを得て修正し,平成23年3月に公表される予定となっている。<BR>いずれにしても,獣医疫学のコア・カリキュラムが策定されるということは,今後獣医系大学で獣医疫学が必須科目として講義されることになるということであり,獣医疫学の発展と普及を目指す本学会としては喜ばしい限りである。現在,獣医疫学会では,このコア・カリキュラムに準拠した形で獣医疫学の教科書の改訂を進めており,来春にはコア・カリキュラムに準拠した新しい獣医疫学の教科書が近代出版から発行される予定である。<BR><B>獣医疫学コア・カリキュラム(案)</B><BR>(1)疫学の概念 (16)スクリーニング<BR>(2)健康疾病事象の発生要因 (17)感染症の疫学<BR>(3)疫学で用いられる指標 (18)特定分野の疫学<BR>(4)疫学に必要な統計手法 (19)リスクアセスメント<BR>(5)標本抽出 (20)疾病の経済評価<BR>(6)疫学研究の信頼性と妥当性<BR>(7)疫学資料<BR>(8)記述疫学<BR>(9)生態学的研究<BR>(10)横断研究<BR>(11)症例対照研究<BR>(12)コホート研究<BR>(13)介入研究<BR>(14)因果関係<BR>(15)サーベイランス
著者
林谷 秀樹 近江 佳郎 小川 益男 福富 和夫
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
日本獣医学雑誌 (ISSN:00215295)
巻号頁・発行日
vol.51, no.5, pp.905-908, 1989-10-15

1981年6月から1982年5月までの1年間に関東地方で死亡し, 動物霊園に埋葬された猫3936頭の死亡データを用いて, Chiangの生命表作成法に従って, 猫の生命表を作成した. これは家庭飼育猫について作成された最初の生命表と思われる. 生命表から算出された猫の平均余命は, 0歳で4.2歳, 1歳で5.0歳, 4歳で5.4歳, 5歳で5.3歳, 10歳で3.5歳, 15歳で2.2歳で, 最高死亡年齢は22歳であった. 猫の死亡確率は犬に比べ, 0歳から5歳にわたる幅広い年齢で著しく高かったが, 6歳以上においてはほぼ等しく, 犬と同様にGomperzの法則に従うように思われた. このように調査時点では猫の死亡確率の基本パターンは犬のものと著しく異なっていたが, 今後0〜5歳の低年齢における死亡確率が減少した場合には, 両者のパターンは近似すると思われた. 1歳の平均余命(e_1)は, 品種間(雑種, 純血種に大別)では差が見られなかったが, 地域間ではA地域(人口密度1万人以上)はB地域(1万人未満)に比べ有意に長かった. このことから, 犬の場合と同様, B地域ではA地域に比べ猫の平均余命を短くするような要因がより強く作用していることがうかがわれた.
著者
池内 隼佑 Bui Thi Hien Nguyen Khanh Thuan Ly Thi 工藤 由起子 谷口 隆秀 林谷 秀樹
出版者
公益社団法人 日本食品衛生学会
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.62, no.3, pp.94-99, 2021-06-25 (Released:2021-07-02)
参考文献数
37
被引用文献数
1

2017年7月から2019年1月に,ベトナム・メコンデルタの市場やスーパーマーケット19か所から購入した計645検体の市販新鮮野菜における腸管出血性大腸菌 (EHEC) ならびに毒素原性大腸菌 (ETEC) の汚染状況を調べた.供試検体645検体中,EHECおよびETECがそれぞれ1検体の計2検体 (0.3%) から分離された.病原性大腸菌が分離された野菜はいずれもヘッドレタスであった.分離されたEHECの血清型は市販抗血清では型別されなかったが,ETECはO20であった.EHECとETECの2菌株は,用いた9種の抗生物質に対し,いずれも4と7薬剤に耐性を示す多剤耐性株であった.これらの結果から,ベトナム・メコンデルタにおいては,市販生鮮野菜はEHECとETECの感染源としては重要でない可能性が示された.
著者
久永 晃資 岩田 剛敏 池内 隆 五十嵐 章紀 足立 邦明 林谷 秀樹
出版者
公益社団法人 日本獣医師会
雑誌
日本獣医師会雑誌 (ISSN:04466454)
巻号頁・発行日
vol.57, no.1, pp.54-57, 2004-01-20 (Released:2011-06-17)
参考文献数
9

生活空間を共有する人と犬が快適に生活するために, どのくらいの頻度で犬を洗浄したらよいかを検討するために, 犬の被毛の脂質の成分や量を調べるとともに, これらが洗浄前後でどのように変化するかを経時的に観察した. その結果, 犬被毛の脂質は脂肪酸, コレステロールおよびステロールエステル, ワックスエステル, グリセロールエステルなどのエステル類で構成されており, 特にエステル類は脂質の80%以上を占めていた. また, 犬被毛の脂質量は洗浄直後に洗浄前の約60%にまで減少したが, 72時間後には洗浄前のレベルまで回復した. そして, 洗浄後72時間が過ぎる頃から動物臭が感じられるようになった. これらの結果から, 衛生的な観点からみると, 室内犬の洗浄は3~4日に1回くらいの割合で行うことが適当と考えられる.
著者
城戸 佐登子 林谷 秀樹 岩崎 浩司 OKATANI Alexandre Tomomitsu 金子 賢一 小川 益男
出版者
The Japan Society of Veterinary Epidemiology
雑誌
獣医疫学雑誌 (ISSN:13432583)
巻号頁・発行日
vol.5, no.2, pp.77-87, 2001
被引用文献数
1

1995年2月~1995年6月の5ヶ月間に, 関東地方1都6県の51動物病院で, ならびに1997年10月~1998年3月の6ケ月間に, 関西, 中国地方を中心にする1都2府10県の25動物病院で, カルテから選んだ15歳以上の犬および猫 (以下, 長寿犬または長寿猫とする) と, 1994年4月~1995年3月の1年間ならびに1997年12月~1998年10月の11ケ月間に, それぞれ上記の51と25動物病院に来院し, 5~9歳で死亡した犬および猫 (以下, 対照犬または対照猫) について, 性, 年齢などの宿主要因や食事や散歩などの飼育状況などについてアンケート調査を行い, 各項目についてオッズ比を算出し, 長寿に関連する要因の抽出を試み, 以下の成績を得た。<BR>1) 長寿群と対照群との間で, 犬では, 品種, 避妊の有無, 飼育の目的, 飼育場所, 散歩の頻度, 同居動物, 食事内容, 牛乳の給与および間食の項目で, 猫では, 性別, 避妊の有無, 飼育の目的, 飼育場所, 同居動物, 食事内容, 牛乳の給与および間食の項目で, 両群問に有意差が認められた。<BR>2) 各項目ごとに長寿に関与するオッズ比を算出すると, 犬では「雑種」, 「毎年予防接種をした」, 「毎日散歩をした」, 「同居動物がいた」, 「食事として手作り調理を与えた」および「牛乳を与えた」のオッズ比がそれぞれ3.36, 2.40, 3.21, 2.44, 2.46および3.75で有意に高く, 「室外で飼っていた」が0.25で有意に低かった。猫では「雌」, 「同居動物がいた」, 「食事として手作り調理を与えた」および「牛乳を与えた」のオッズ比がそれぞれ5.16, 2.32, 2.34および2.00で有意に高く, 「室内外で自由に飼っていた」が0.41で有意に低かった。<BR>3) 以上の結果より, 長寿に関与する項目として抽出されたものは, 犬猫ともに飼育者が飼育動物に対して行っている適切な健康管理や飼育管理の項目がほとんどであり, 長寿な動物は飼育者から飼育や健康管理に手をかけられたものであることが明らかとなった。得られた成績は, 今後のコンパニオンアニマルの飼育や健康管理を考える上で貴重な基礎知見になるものと考えられる。
著者
中臺 文 黒木 俊郎 加藤 行男 鈴木 理恵子 山井 志朗 柳沼 千春 塩谷 亮 山内 昭 林谷 秀樹
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
The journal of veterinary medical science (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
vol.67, no.1, pp.97-101, 2005-01-25
参考文献数
21
被引用文献数
2 54

2000年11月から2002年7月の間に,ペットショップの爬虫類112頭におけるサルモネラの保有状況を調査したところ,74.1%(83/112)と高率に本菌が分離された.分離された112株は5生物群に型別され,I群の割合(62.5%)が最も高かった.また,112株中54株は28血清型に型別可能であった.これらの成績から,ペットの爬虫類は人のサルモネラ症の感染源となる可能性が示唆された.
著者
Tran Thi Phan LY Thi Lien Khai NGUYEN Thu Tan 秋庭 正人 小笠原 夏絵 篠田 ダビデ OKATANI Alexandre Tomomitsu 林谷 秀樹
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
The journal of veterinary medical science (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
vol.66, no.8, pp.1011-1014, 2004-08-25
被引用文献数
5 45

2000年7月から10月に,ベトナム・メコンデルタの豚,鶏およびアヒルにおけるサルモネラの保菌状況を調べた結果,豚,鶏およびアヒルから,それぞれ5.2%(23/439),7.9%(24/302)および8.7%(31/357)の割合でサルモネラが分離された.また,分離された80菌株は25血清型に型別され,S.Javiana,S.DerbyおよびS.Weltevredenの割合が高かった.また,S.JavianaとS.Weltevredenが3種の家畜から共通して分離された.これらの結果から,これらのサルモネラはこの地域の家畜に広く分布していることが明らかとなった.
著者
李 謙一 中 臺文 岩田 剛敏 加藤 卓也 羽山 伸一 廣田 好和 林谷 秀樹
出版者
獣医疫学会
雑誌
獣医疫学雑誌 = The journal of veterinary epidemiology (ISSN:09128913)
巻号頁・発行日
vol.11, no.1, 2007-07-20

アライグマ(<I>Procyon lotor</I>)は北米を原産とするアライグマ科の中型哺乳類である。我が国では1960年代から持ち込まれた個体が野生化し,現在では全国各地で野生化が確認されている外来生物である。近年,野生化したアライグマは農作物の被害をもたらし,その分布の拡大に伴って社会問題化している。しかし,これら野生化したアライグマにおける人獣共通感染症原因菌の保有状況に関してはこれまでほとんど検討されていない。本研究では,我が国で野生化しているアライグマにおける人獣共通感染症原因菌の保有状況を検討するとともに,得られた結果からアライグマが生態系の中で占める位置や役割についても考察した。