著者
秋鹿 研一 小山 建次 山口 寿太郎 尾崎 萃
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌 (ISSN:03694577)
巻号頁・発行日
vol.1976, no.3, pp.394-398, 1976-03-10 (Released:2011-05-30)
参考文献数
10
被引用文献数
2

200~300℃,全圧600mmHgの条件でもっとも活性の高いアンモニア合成触媒であるRu-AC(活性炭)-Kと,それについで活性の高いOs-AC-Kの製法と活性の関係を検討した。Kは一定量(約1mmol/9-cat)添加後はじめて活性が現われ,KがACにほぼ飽和吸着すると考えられる量,約 1mmol/g-cat,まで活性は直線的に増加する。RuCl3-ACの還元のさい,水素は当量の6倍も消費する。過剰の消費水素はACとの反応およびACへのスピルオーバーによると考えられるが,その量は活性に影響しない。還元にさいしHClが発生するが,一部の壇化物イオンは触媒上に残る。Ru-AC-Kの活性は,Ruの露出表面積に対応すると考えられるRu-ACへのCO化学吸着量にほぼ比例する。Ru塩はRu/ACが約 3wt%まではACによく吸着する。CO化学吸着量も 3wt%まではRu量にほぼ直線的に増加する。しかし3wt%を越えるとRu塩は吸着しにくくなり,Ruの分散性も低下する。Ru(2,3価)またはOs(3,4,6,8価)について酸化数の異なる塩を出発原料とした触媒の間でRuまたはOsの活性は変わらなかった。また活性炭を硝酸,アンモニア水,あるいはその両者により処理した場合も得られるRu触媒のCO化学吸着量に影響なかった。
著者
秋鹿 研一
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.42, no.10, pp.680-684, 1994

アンモニア合成反応は平衡論(ルシャトリエの法則)の説明の実例として教科書になじみ深い。一方, 化学工業的大量生産の最初の例としても有名である。1913年ハーバー, ボッシュ等により開発されたこの高圧合成プロセスと(鉄)触媒は基本的にはそのまま今日まで用いられてきた。しかし1992年から, はじめて非鉄系のルテニウム触媒が商業生産に用いられはじめ, 新しい考えのプロセスも発表されている。アンモニア合成のブレークスルーとなったルテニウム触媒をはじめて本格的に研究したグループにいた著者が鉄とルテニウムの違いをできる限りやさしく解説した。
著者
秋鹿 研一 東 千秋 加藤 之貴 劉 醇一
出版者
放送大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010-10-20

アンモニアはCa,Mgなどのハロゲン化合物と安定な錯塩を作る。塩化カルシウムにアンモニアが近づくと、窒素のローンペアーの強い配位力と塩素イオン同士の排斥力により、アンモニアのほうがカルシウムイオン近くに取り込まれる。結晶は2配位、8配位へと変化し、膨潤する。これをアンモニアの吸蔵材料として使うために、これらの錯形成反応の速度論データを取る装置をくみ上げ、データ取得を始めた。これらのデータは全くないこと、材料実用化のためにはあらゆる種類のデータを多くの技術者にとって貰う必要があるため、簡便な装置として、食品の水分量を測定する自動天秤を利用することを企画した。CaCl2にアンモニアを吸蔵させる際、水蒸気が共存すると正確なデータがとれないため、天秤を窒素気流雰囲気下へ設置した。CaCl2などの潮解性試料に対し、水分の吸収条件を検討した。吸収、脱離の速度に影響する因子は、アンモニア圧、(塩素、臭素混合であれば)陰イオンの種類と割合、結晶子あるいはクラスターサイズ、温度などである。CaCl2-CaBr2系は、常温、常圧でアンモニアを分離、貯蔵、放出でき、実用化の可能性がある。CaCl2は高い圧で、CaBr2は低い圧でアンモニアを吸収する。Cl/Bn比,1:1,の混合系は中間的構造を取るため、両者の中間的圧力(常圧付近)でアンモニアを吸蔵放出できる。これらについて、速度論データを取るための予備的実験を重ねたが、出発物質の水分制御が思ったより難しく、比較検討できるデータが十分に得られたとはいえない。従って、平衡に近い挙動のデータはこれまでのデータに加えることが出来たが、速度論的データについては再現性を得るに至っていない。サンプル調製法、速度データ取得装置については更なる検討を必要とした。実験データの整理法については理論的考察をさらに推し進めた。
著者
秋鹿 研一 小山 建次 山口 寿太郎 尾崎 萃
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌 (ISSN:03694577)
巻号頁・発行日
vol.1976, no.3, pp.394-398, 1976
被引用文献数
2

200~300℃,全圧600mmHgの条件でもっとも活性の高いアンモニア合成触媒であるRu-AC(活性炭)-Kと,それについで活性の高いOs-AC-Kの製法と活性の関係を検討した。Kは一定量(約1mmol/9-cat)添加後はじめて活性が現われ,KがACにほぼ飽和吸着すると考えられる量,約 1mmol/g-cat,まで活性は直線的に増加する。RuCl<SUB>3</SUB>-ACの還元のさい,水素は当量の6倍も消費する。過剰の消費水素はACとの反応およびACへのスピルオーバーによると考えられるが,その量は活性に影響しない。還元にさいしHClが発生するが,一部の壇化物イオンは触媒上に残る。<BR>Ru-AC-Kの活性は,Ruの露出表面積に対応すると考えられるRu-ACへのCO化学吸着量にほぼ比例する。Ru塩はRu/ACが約 3wt%まではACによく吸着する。CO化学吸着量も 3wt%まではRu量にほぼ直線的に増加する。しかし3wt%を越えるとRu塩は吸着しにくくなり,Ruの分散性も低下する。Ru(2,3価)またはOs(3,4,6,8価)について酸化数の異なる塩を出発原料とした触媒の間でRuまたはOsの活性は変わらなかった。また活性炭を硝酸,アンモニア水,あるいはその両者により処理した場合も得られるRu触媒のCO化学吸着量に影響なかった。
著者
秋鹿 研一
出版者
公益社団法人 石油学会
雑誌
石油学会誌 (ISSN:05824664)
巻号頁・発行日
vol.37, no.2, pp.112-122, 1994
被引用文献数
1

メタンの酸化カップリング反応の反応機構の特徴を分かりやすく示し, 触媒設計に役立つ速度式を提案し, 他の研究と比較して論じた。<br>反応を(1)酸素分子の表面活性化, (2)表面酸素によるメタンの脱水素, (3)メチルラジカルの酸化, (4)メチルラジカルのカップリングによるエタン生成の4過程に分け, 定常状態法を用いた速度式を導いた。第3過程は, 本来は100以上のラジカル素反応からなるものを"Magic number <i>x</i>"を用いることにより一つの式で与えたものである。この取り扱いによりこの反応の特異な選択性支配 (高温, 低酸素濃度, また触媒の比表面積の小さいほどC<sub>2</sub>化合物選択率が高い等) を説明することができた。<br>この方法は転化率の低い条件で種々の触媒の反応結果を統一的に比較し, その特性を明らかにするのに役立つが, 触媒設計が終わり, 高転化率での反応操作設計のための速度式としては, むしろべき乗型の経験式の方が簡便で有用であることを指摘した。