著者
種子田 春彦 鈴木 牧 井上 みずき 森 英樹
出版者
一般社団法人 日本生態学会
雑誌
日本生態学会誌 (ISSN:00215007)
巻号頁・発行日
vol.69, no.2, pp.63-70, 2019 (Released:2019-08-08)
参考文献数
31

つる植物は、直立した植物に寄りかかって伸長成長を行う生活形を持つ。力学的支持のために茎や根への投資するエネルギーが少ないために、速い茎の伸長と旺盛な成長が可能となる。そして、マント群落として知られるように直立した植物に覆いかぶさるような勢いで繁茂する。このようなつる植物を、次の二つの理由から特集で取り上げた。一つ目の理由は、森林動態への重要性である。熱帯を中心とした研究から、つる植物の存在が森林の遷移や種組成にあきらかに負の影響があることが分かってきた。しかし、日本を含む温帯域での研究は少ない。もう一つの理由は、つる植物の生態の多様性にある。旺盛な成長を可能にした「つる性」は、一方で植物の生態にさまざまな制約を課す。これを克服するために発達させた生態学的または生理学的な性質が、つる植物にみられる多様な生態を作り出したと言えるだろう。本稿では、つる植物について簡単に説明した後、特集に掲載された4報の論文について概説する。
著者
長田敏行 長谷部光泰 鳥羽太陽 種子田春彦 P. R. Crane
出版者
植物研究雑誌編集委員会
雑誌
植物研究雑誌 (ISSN:00222062)
巻号頁・発行日
vol.91, no.suppl, pp.120-127, 2016-12-23 (Released:2022-10-20)

山梨県身延町上八木沢の雄のオハツキイチョウの一枝にギンナンがなり,そのギンナンから実生が得られた.この木は多くは正常な花粉嚢をつけるが,葉の上に花粉嚢をつけることで,オハツキイチョウとして発見されている.上八木沢のオハツキイチョウで見られた局所的な性転換は,これまで考えられていたより,もっと多く起こっていると思われる.また,現生イチョウの雌雄異株性は,同一植物の別な位置に花粉と胚珠を付ける雌雄同株から進化してきたと思われる.このような雌雄同株から雌雄異株への転換は,性染色体のZW型の分化を伴って起こった可能性があるが,この場合Z 型染色体の方が若干大きくなっている.なお,ZWの組み合わせで雌性を発現し,ZZ の組み合わせで雄性を発現する.イチョウにおいての性転換の分子機構は,未だ分かっていないが,ある種の被子植物においては雌性の発現は特定の転写因子により制御されていることが知られている.その転写因子が,雄性由来のマイクロRNA により負に制御されて雌性を抑制し,雄性の発現をもたらすことが報告されている.同様なシステムがイチョウで起こっているのかどうか,あるいはまったく別の機構であるかどうかは今後の研究に待たねばならないが,雄性特異的マイクロRNA の局所的破壊によりこの雄のオハツキイチョウにおいて胚珠の形成された可能性は検討に値する.
著者
種子田 春彦 大條 弘貴 大塚 晃弘
出版者
一般社団法人 日本生態学会
雑誌
日本生態学会誌 (ISSN:00215007)
巻号頁・発行日
vol.66, no.2, pp.447-464, 2016 (Released:2016-08-24)
参考文献数
126
被引用文献数
3

植物体内の水輸送は、個体が適切な水分含量を保ちながら光合成生産を行うために重要な現象である。通水コンダクタンスはこうした水輸送の速度を決める要素のひとつであり、植物種間や環境によって大きく変化する。そこで、通水コンダクタンスを調べることは、植物の水利用戦略を考えるうえで重要な情報を与える。本稿は、根、茎、葉の3つの組織における通水コンダクタンスの測定手法について、それぞれの組織の水の流れ方と手法の利点と欠点を中心に解説した。