著者
種田 博之
出版者
学校法人 産業医科大学
雑誌
Journal of UOEH (ISSN:0387821X)
巻号頁・発行日
vol.22, no.4, pp.351-362, 2000-12-01 (Released:2017-04-11)
被引用文献数
1 2

私たちは, 自明的に占いを女性のもの一占いの需要・受要者(客)および占いの供給者(占い師)を女性とみなしがちである. しかし, 占いに関しての歴史的資料などを概観すると, 必ずしも女性だけが需要(受容)者でもなければ供給者でもないことがわかる. すなわち, 占いと女性の関係を自明視してしまうと見落とてしまう社会学的な問題群がある. そうした問題群の一つとして「占いの女性化」という問題がある. 「占いの女性化」とは, 占いの担い手一占いの供給者(占い師)と需要・受容者(客)が女性へと特化, 方向づけられていく過程である. 本稿は, 「占いは女性のもの」とする自明視を崩していくために, 「占いの女性化」という問題を浮かび上がらせることを目的とする. また, 近代以降の日本社会における女性像に関する視点を提起する.
著者
種田 博之
出版者
学校法人 関西学院大学先端社会研究所
雑誌
関西学院大学先端社会研究所紀要 (ISSN:18837042)
巻号頁・発行日
vol.19, pp.1-16, 2022 (Released:2022-04-01)

子宮頸がんはHPV(ヒトパピローマウィルス)の持続感染が主要な原因とされる。そこから、HPVに対する感染予防ワクチンが作られた。2013年4月、予防接種法の改正にともない、HPVは定期予防接種のA類疾病(1類疾病)に指定された。これにより、被接種者においてはHPVワクチン接種を受けることが努力義務となり、ワクチン接種事業者側(=市町村長ないし知事)には予防接種の勧奨が課せられた。この予防接種法2013年改正に寄与したのが、厚生科学審議会感染症分科会予防接種部会(審議会)である。本稿は、審議会において、HPVワクチン(ないし当該ワクチン接種)がどのように語られて、HPVが定期予防接種のA類疾病に指定されたのかを、「境界作業(boundary work)」の視点から明らかにする。境界作業とは、科学と行政といった制度とのあいだなどで、ある知識の正しさや妥当性にかんして線引き(評価)をおこなうことである。厚生労働省は、審議会にHPVのB類疾病(2類疾病)への分類を諮った。しかし、審議会において、ワクチン接種による健康被害に対する補償という点から、異論が出た。そこで、厚生労働省は1類疾病概念自体の変更をおこなって、HPVを1類疾病に該当させた。これは、審議会において望ましいHPVワクチン接種のあり方をめぐって境界作業が発生し、調整された結果である。
著者
種田 博之
出版者
産業医科大学学会
雑誌
産業医科大学雑誌 (ISSN:0387821X)
巻号頁・発行日
vol.23, no.3, pp.263-276, 2001-09-01

今日の日本社会において, 占いは日常生活のいたるところで見ることができるほど, ひとつの「社会的事実」となっている.このような状況ではあるが, 占いは社会学的にはいまだに未知の現象のままである.占いに関しての分析を行っていく上で, 占い師は占いの技法を管理する職能者であるということから, 重要な要素の一つをなしている.したがって, 占いについての十分な考察を進めていく上で, なによりもまず占い師の特徴を明確にする必要がある.この論文の目的は, 占いに正当性を付与する「根拠」と占い師を占いへと方向づけた「契機」を明確にすることで, 占い師の特徴を示すことにある.「根拠」としては, 「直感=インスピレーション」か, もしくは経験を通して形作られた「体系的知識」かのどちらかをとられる.「契機」は, 「自発」か, もしくは「強制」かのどちらかがとられる.こうした類型を用いて今日の占い師を捉えるならば, 「知識」と「自発」の両方の特徴をもつ占い師が顕著であることがわかる.では, なぜ, この類型の占い師が、今日, 顕著なのであろうか.この問題を, 本稿では社会構造の関係で分析する.
著者
種田 博之
出版者
学校法人 関西学院大学先端社会研究所
雑誌
関西学院大学先端社会研究所紀要 (ISSN:18837042)
巻号頁・発行日
vol.18, pp.1-16, 2021 (Released:2021-05-15)

2013 年、HPV ワクチン接種後の有害事象ないし健康被害(HPVワクチン接種問題)が表面化した。そして、それは現在も「薬害」として係争状態にある。本論文はこのHPVワクチン接種問題の係争化をスティグマの視点を糸口にして明らかにする。スティグマは「関係概念」である。それは、ある他者がある属性をスティグマ=汚点と評しても、別の他者は真逆の評価をしうる、ということである。また、自己との関係においても、ある属性に対して意味づけをおこなう。HPVワクチン接種問題の場合、被接種者の身に起こった事象は、当初、「詐病」であった。「HPVワクチン関連神経免疫異常症 候群」説などによって、副反応による健康被害=「被害者」に変わった。まさに、その時々の「関係性」から意味づけられてきた。HPVワクチン接種問題に巻き込まれた被接種者は、詐病扱いされ、ひどく傷ついた。その後、HPVワクチン接種問題が副反応による健康被害として捉えられるようになり、巻き込まれた被接種者は被害者になった。医薬品副作用被害救済制度を使って補償の請求をおこなった。しかし、その要件を満たしていなかったために、不支給の判定をうけた。そこで、救済を求めて、副反応による健康被害であることを認めさせるために、訴えざるを得なくなった。この副反応を事由とした健康被害の認定は、補償を得るための根拠だけでなく、詐病ではないことの証も含意している。係争に水路づけたのは救済制度の制約と詐病扱いだったのである。

1 0 0 0 OA 占い師の特徴

著者
種田 博之
出版者
学校法人 産業医科大学
雑誌
Journal of UOEH (ISSN:0387821X)
巻号頁・発行日
vol.23, no.3, pp.263-276, 2001-09-01 (Released:2017-04-11)

今日の日本社会において, 占いは日常生活のいたるところで見ることができるほど, ひとつの「社会的事実」となっている. このような状況ではあるが, 占いは社会学的にはいまだに未知の現象のままである. 占いに関しての分析を行っていく上で, 占い師は占いの技法を管理する職能者であるということから, 重要な要素の一つをなしている. したがって, 占いについての十分な考察を進めていく上で, なによりもまず占い師の特徴を明確にする必要がある. この論文の目的は, 占いに正当性を付与する「根拠」と占い師を占いへと方向づけた「契機」を明確にすることで, 占い師の特徴を示すことにある. 「根拠」としては, 「直感=インスピレーション」か, もしくは経験を通して形作られた「体系的知識」かのどちらかをとられる. 「契機」は, 「自発」か, もしくは「強制」かのどちらかがとられる. こうした類型を用いて今日の占い師を捉えるならば, 「知識」と「自発」の両方の特徴をもつ占い師が顕著であることがわかる. では, なぜ, この類型の占い師が、今日, 顕著なのであろうか. この問題を, 本稿では社会構造の関係で分析する.