著者
竹内 倫子 澤田 ななみ 鷲尾 憲文 澤田 弘一 江國 大輔 森田 学
出版者
一般社団法人 日本老年歯科医学会
雑誌
老年歯科医学 (ISSN:09143866)
巻号頁・発行日
vol.37, no.2, pp.64-75, 2022-09-30 (Released:2022-10-26)
参考文献数
48

わが国では認知症高齢者が急増しているが,認知症に対する有効な治療法はまだ確立されていない。そのため,認知症の発症を予防する手段を模索することが望まれる。本研究の目的は,地域在住高齢者を対象に口腔機能およびソーシャル・キャピタル(SC)と認知機能低下の関係を調査することである。2018年5月~8月に,農村地域在住の高齢者を対象に,世帯,学歴,基本チェックリスト,農村SC,舌圧,オーラルディアドコキネシス(ODK),現在歯数,主観的口腔機能を調査した。認知機能は基本チェックリストの項目より評価した。主観的認知機能低下を従属変数とした二項ロジスティック回帰分析を行った。また,主観的認知機能の低下に与える要因間の関係を検討するために共分散構造分析を行った。分析対象者は73人(男性24人,女性49人,平均年齢80.0±10.6歳)であった。二項ロジスティック回帰分析の結果,主観的認知機能低下と有意な関連がみられたのは,うつ病の可能性(オッズ比6.392,95%信頼区間 1.208~33.821),ODK/ta/(オッズ比0.663,95%信頼区間 0.457~0.962),農村SC(オッズ比0.927,95%信頼区間 0.859~0.999)であった。共分散構造分析の結果,「年齢が高いほどODK/ta/値が低く,うつ病の可能性がある」「ODK/ta/値が高く,うつ病の可能性がなく,農村SC値が高いほど,主観的認知機能低下がない」という関係がみられた。 結論として,農村地域の高齢者を対象に主観的認知機能低下に関連する要因を調査した結果,SC,うつ病の可能性および舌の巧緻性が関連していた。
著者
森田 学 山本 龍生 竹内 倫子
出版者
岡山大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2010

口腔関連の疾患と気象条件との関係を明らかにすることを目的とした。岡山大学病院予防歯科診療室の外来患者で、歯周病に起因する症状を急遽訴え、予約時間外で来院した患者(217名)を対象に、来院時の気象条件との関連を分析した。各月を3等分(上旬、中旬、及び下旬)したところ、その間に来院した患者数が、その期間中の平均気圧(r=0. 310、p<0. 05)、平均日照時間(r=0. 369、p<0. 05)と有意な相関を示した。以上のことから、気象条件と口腔の炎症性疾患との間には何らかの関係がある可能性が示唆された。
著者
森田 学 丸山 貴之 竹内 倫子 江國 大輔 友藤 孝明
出版者
岡山大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2017-04-01

高齢者をターゲットとした研究は、日本をはじめとする先進国の喫緊の課題である。これまでの歯科領域における研究対象としての“高齢者”は、主に“要介護高齢者”あるいは“要支援高齢者”である。これに対して近年、“オーラルフレイル(口腔機能の虚弱)”という口腔機能の軽微な衰えを表す概念が注目されている。現実には、日常生活で口腔機能に不自由を感じていない高齢者(前オーラルフレイル期高齢者)は多数存在する。しかし、このような高齢者を対象に歯・口の機能の継時的変化(機能の衰え)を追跡した研究は少ない。本研究では、オーラルフレイルに関連する要因とオーラルフレイルに至るまでのプロセス(パス)を解明することとした。岡山大学医療系部局研究倫理審査専門委員会で承認を得たのちに大学病院外来患者を対象に、オーラルフレイルと関連する身体的、精神的、社会的指標を調査した。オーラルフレイルの判定には、オーラルディアドコキネシス、舌圧、口腔乾燥、咀嚼能力、咬合接触面積、細菌検査、質問票の結果から総合的に判定した。オーラルフレイルと関連している可能性のある指標として、全身の老化指標(BMI、栄養状態、日常生活動作)、生活のひろがり(活き活きとした地域生活を送っているか否か)、精神・心理状態(WHO Five Well-Being Index)など調査した。総計150名の患者が調査に参加した。現在35名(平均年齢74.3±5.0歳、男性10名、女性25名)について入力し、分析を開始している。舌圧、口腔乾燥、咀嚼能力、質問票については正常の者が多かった。しかし、細菌検査、咬合接触面積、オーラルディアドコキネシスについては、正常以下の者が多かった。総合的に判断した口腔機能低下症が認められる群(6名)と認められない群(29名)との間で、全身の老化指標、生活のひろがり、精神・心理状態を比較したところ、2群間で有意に異なる指標はみられなかった。
著者
丸山 貴之 森田 学 友藤 孝明 江國 大輔 山中 玲子 竹内 倫子
出版者
岡山大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

近年、生活習慣病の対策として、成人に対する食育の重要性が注目されている。本研究では、食育活動の実践頻度と生活習慣病に関する検査値との関連性、早食いの主観的評価と客観的評価の関連性について調査し、食育活動が低い(早食いを自覚している)と判断された者を対象に、早食い防止啓発パンフレットの配布や食行動記録を行うことで、食育活動の改善がみられるかについて検討した。さらに、食育の知識とう蝕との関係について、歯科保健の立場から調査した。