著者
田中 勲 小林 麻子 冨田 桂 竹内 善信 山岸 真澄 矢野 昌裕 佐々木 卓治 堀内 久満
出版者
日本育種学会
雑誌
育種学研究 = Breeding research (ISSN:13447629)
巻号頁・発行日
vol.8, no.2, pp.39-47, 2006-06-01
参考文献数
31
被引用文献数
18

イネ日本型品種コシヒカリとアキヒカリの交雑F<sub>1</sub>の葯培養に由来する半数体倍加系統群を用いて,食味に関与する量的形質遺伝子座(quantitative trait loci: QTLs)の検出を試みた.食味は食味官能試験による「外観」と「粘り」,アミロース含量およびビーカー法による炊飯光沢によって評価した.その結果,第2染色体のDNAマーカーC370近傍,OPAJ13および第6染色体のR2171近傍に,コシヒカリの対立遺伝子が食味官能試験の「粘り」を増加させるQTLが検出された.また,第2染色体のOPAJ13近傍にコシヒカリの対立遺伝子がアミロース含量を低下させるQTL,第2染色体のC1137近傍にコシヒカリの対立遺伝子が炊飯光沢を増加させるQTLが検出され,「粘り」を増加させるQTLとの関連が示唆された.以上の結果から,コシヒカリの良食味には,第2染色体に見いだされる一連のQTLが大きく影響していると推察された.<br>
著者
河野 いつみ 竹内 善信 島野 公利 佐々木 卓治 矢野 昌裕
出版者
日本育種学会
雑誌
育種学研究 (ISSN:13447629)
巻号頁・発行日
vol.2, no.4, pp.197-203, 2000-12-01 (Released:2012-01-20)
参考文献数
32
被引用文献数
15 21

DNAマーカーによる連鎖地図作成は有用形質に関与する遺伝子のマッピングに不可欠である. 本研究では連鎖地図作成に有効なDNAマーカーを明らかにするために, 遺伝的多様性の低い日本型品種間におけるDNAマーカーの多型検出頻度を比較した. 多型検出には制限酵素断片長多型 (RFLP), 任意増幅断片長多型 (RAPD), 増幅断片長多型 (AFLP) および単純反復配列 (SSR) マーカーを用いた. 日本型15品種間の多型検出頻度は, RFLPマーカーで7.5~17.6%(プローブあたり), RAPDでは4.1~9.4 (増幅断片あたり), AFLPでは1.2~3.9%(増幅断片あたり), SSRでは11.4~34.3%(プライマー組み合わせあたり) となり, マーカーの種類により大きな差が認められた. 多型検出頻度はSSRおよびRFLPマーカーで高く, AFLPでは著しく低かった-RFLPとSSRマーカーにおいては複数の対立遺伝子を検出することができた. 検出される対立遺伝子数を比較すると, RFLPマーカーでは3個以下であったのに対して, SSRでは5~6個の対立遺伝子を識別できるマーカーが存在した. 以上の結果から, 多型検出頻度が比較的高く, 染色体上の位置情報が明らかなRFLPマーカーとSSRマーカーを組み合わせた利用が, 日本型品種間の連鎖解析に有効であると示唆された.