著者
木下 雅文 沼尾 吉則 木内 均
出版者
北海道立農業試験場
雑誌
北海道立農業試験場集報 (ISSN:04410807)
巻号頁・発行日
no.90, pp.1-11[含 英語文要旨], 2006-10

水稲新品種「大地の星」は、1994年に北海道立上川農業試験場(農林水産省水稲育種指定試験地)で交配した「空育151号」と「上育418号(ほしのゆめ)」との雑種後代から育成され、2003年2月、北海道の奨励品種に認定された(系統名:上育438号)。同年、農林水産省に「水稲農林391号」として登録され、「大地の星」と命名された。出穂期は「あきほ」、「きらら397」より早い"早生の中"であるが、成熟期は「あきほ」よりやや遅く「きらら397」に近い"中生の早"である。稈長は「あきほ」、「きらら397」よりやや長く、穂長は「あきほ」より短く「きらら397」並である。穂数は「あきほ」、「きらら397」より少なく、草型は"偏穂数型"である。穂ばらみ期の障害型耐冷性は"極強"である。いもち病の圃場抵抗性は、葉いもちが"強"、穂いもちは "やや強"でいずれも「あきほ」、「きらら397」に優る。耐倒伏性は「きらら397」並である。玄米収量は「きらら397」に優り多収である。玄米品質は「あきほ」、「きらら397」に劣る。炊飯時の米飯表面の粘りや付着性が少なく、冷凍後のダマ化率が低く、適度な食味を有しているため、ピラフ等の冷凍米飯への加工に適している。以上の特性から、本品種を「あきほ」の一部に置き換えて作付けすることにより、加工適性が高く栽培特性に優れた品種として北海道米の安定生産、販路拡大に寄与すると考えられる。
著者
丹野 久 木下 雅文 木内 均 平山 裕治 菊地 治己
出版者
日本作物学会
雑誌
日本作物學會紀事 (ISSN:00111848)
巻号頁・発行日
vol.69, no.4, pp.493-499, 2000-12-05
参考文献数
13
被引用文献数
3

1998, 1999年の2ヵ年に北海道の水稲新旧52品種について開花期耐冷性の評価を行った.縦15×横5×高さ10cmの方形ポットに主稈8本栽培したものを材料に, 1品種3〜4ポットを50%遮光幕付人工気象室で出穂日より17.5℃で15日間処理を行い, 最少で10穂の稔実歩合により判定する簡易な方法で検定した.その結果, 「はやゆき」, 「はやこがね」が最も強く強〜極強, 「赤毛」, 「ふくゆき」, 「うりゅう」, 「ほしのゆめ」, 「初雫」の5品種が強, 「富国」, 「早生錦」, 「しまひかり」が最も弱く弱〜極弱であった.開花期耐冷性(冷温処理区の不稔歩合)と穂ばらみ期耐冷性(従来の評価.以下, 耐冷性評価には極強:2〜極弱:8を当てはめ相関係数を算出した)との間にはr=0.541(n=52, 以下同じ)の有意な正の相関関係が認められた.また, 育成年次が新しい品種ほど穂ばらみ期耐冷性が強い傾向が認められたが(育成年次と従来の穂ばらみ期耐冷性評価の間にr=-0.366), 開花期耐冷性とは一定の関係がみられず(育成年次と開花期耐冷性評価との間にr=-0.055^ns), 育成品種の開花期耐冷性を向上させるためには育種の場で直接選抜することが必要であると考えられた.さらに, 穂ばらみ期耐冷性が極強か極強に近いと評価されている北海道の耐冷中間母本7系統と耐冷育成系統の30系統, 計37系統の開花期耐冷性を検定したところ「永系88223」と「北育糯87号」の2系統が2ヵ年とも極強と判定された.これらの2系統は系譜の上から穂ばらみ期だけでなく開花期においても「はやゆき」に由来する耐冷性を持つことが推察された.