著者
鈴木 雄大 山岸 真澄
出版者
The Japanese Society for Horticultural Science
雑誌
The Horticulture Journal (ISSN:21890102)
巻号頁・発行日
vol.85, no.3, pp.224-231, 2016 (Released:2016-07-23)
参考文献数
31
被引用文献数
14 16

日本で主に生産されている食用ユリはコオニユリ(Lilium leichtlinii, 2n = 2x = 24)であるが,ウイルス病やボトリチス病が問題となっている.三倍体オニユリ(L. lancifolium, 2n = 3x = 36)の鱗茎も食用に利用できる.後者は道端や農地の周辺で野生化していることより日本の気候に適応していると考えられ,食用ユリの遺伝資源として重要である.しかしオニユリは葉腋にムカゴを発生させるため(ムカゴは鱗茎と栄養を競合し,鱗茎の肥大を妨げる),経済栽培には用いられていない.種間交雑は遺伝的な多様性を増加させるので観賞用ユリの品種育成には積極的に用いられているが,食用ユリの育種にはあまり使われていない.本研究では三倍体オニユリとコオニユリを交雑し,その F1 の形質を調査した.結果,得られた F1 はすべて,染色体数 26 本から 34 本の異数体であった.ムカゴ発生能力は F1 集団で連続分布し,量的形質として認められた.F1 57 個体のうち 49 個体(86%)でムカゴが発生しなかった.このことはこの交雑組み合わせから,ムカゴをつけない異数体が得られることを示している.葯の形態に異常が認められる個体が分離した.また F1 における花粉の発芽率は20% を超えるものはなく,85% の個体で発芽しなかった.しかし,食用ユリの収穫対象は鱗茎なので,花器官の形態異常や低い花粉稔性は食用ユリにおいては大きな問題にはならないと考えた.以上の結果より三倍体オニユリとコオニユリの種間雑種によってすぐれた食用ユリ品種を育成できる可能性が示された.
著者
田中 勲 小林 麻子 冨田 桂 竹内 善信 山岸 真澄 矢野 昌裕 佐々木 卓治 堀内 久満
出版者
日本育種学会
雑誌
育種学研究 = Breeding research (ISSN:13447629)
巻号頁・発行日
vol.8, no.2, pp.39-47, 2006-06-01
参考文献数
31
被引用文献数
18

イネ日本型品種コシヒカリとアキヒカリの交雑F<sub>1</sub>の葯培養に由来する半数体倍加系統群を用いて,食味に関与する量的形質遺伝子座(quantitative trait loci: QTLs)の検出を試みた.食味は食味官能試験による「外観」と「粘り」,アミロース含量およびビーカー法による炊飯光沢によって評価した.その結果,第2染色体のDNAマーカーC370近傍,OPAJ13および第6染色体のR2171近傍に,コシヒカリの対立遺伝子が食味官能試験の「粘り」を増加させるQTLが検出された.また,第2染色体のOPAJ13近傍にコシヒカリの対立遺伝子がアミロース含量を低下させるQTL,第2染色体のC1137近傍にコシヒカリの対立遺伝子が炊飯光沢を増加させるQTLが検出され,「粘り」を増加させるQTLとの関連が示唆された.以上の結果から,コシヒカリの良食味には,第2染色体に見いだされる一連のQTLが大きく影響していると推察された.<br>